参加者全員で画面を編集可能
ここまでは,テレビ会議システムとWeb会議システムに共通する特徴を紹介してきた。続いて,Web会議システムならではの特徴を見て行こう。
Web会議システムは,テレビ会議システムに比べデータ共有機能が充実している。これにより,会議の参加者がお互いにデータをやりとりしたり,連携して作業をしたりできる。例えばアプリケーション共有という機能では,参加者の一人のパソコンに入っているファイルを,単に参加者全員に見せるだけでなく共同で編集するといったことが可能になる(図6[拡大表示])。
ユーザーAがアプリケーションを起動すると,その画面のデータがWeb会議サーバーにアップロードされる(図6の(1))。このデータは,会議の参加者であるユーザーBやCのパソコンにダウンロードされ,画面に表示される(同(2))。この後,例えばCがこの画面に文字や図を書き込むと(同(3)),そのときのマウスの動きやキーボードからの入力などのイベント情報がサーバー経由でAのパソコンに送られる(同(4))。
受け取ったAのパソコンは編集内容をアプリケーションの画面に反映し(同(5)),反映前と後で変化した部分の差分データのみをWebサーバーに送信する(同(6))。BとCのパソコンはこの差分データをダウンロードして反映前のデータと併せて画面に表示する(同(7))。こうして,だれが操作しても全員が同じ画面を共有できるしくみだ。
パソコン同士でやりとりするのは,差分データだけなので,ネットワークの負荷を抑えられる。また,ユーザーBとCのパソコンにはアプリケーションが入っていなくてもよい。
こういったアプリケーション共有以外にも,Web会議システムには共用のホワイトボードに文字や図を書き込むホワイトボード機能,文字で会話するテキスト・チャット機能,相手の在席情報を確認するプレゼンス機能などがある。
用途に合わせて二つを連携
最初に説明したように,高画質,高音質を重視したテレビ会議システムと,システム面,価格面での導入のしやすさを重視したWeb会議システムでは強みや想定される用途が異なる。社内では導入済みのテレビ会議システムを使い,社外との会議用にはWeb会議システムを導入するといったように併用したい場合もあるだろう。
通常,テレビ会議システムはH.323,Web会議システムは独自というように映像や音声データの配信プロトコルが違う。そのため,そのままでは直接つないで通信することはできない。そこで,トーメンサイバービジネスの「Visual Nexus(ビジュアルネクサス)」,ネットワンシステムズの「CLICK TO MEET(クリックトゥーミート)」,ブイキューブブロードコミュニケーションの「nice to meet you」などはWeb会議サーバーにゲートウエイを接続し,H.323と独自プロトコルを変換する方法を採用(図7[拡大表示])。相互接続を実現している。
同様にゲートウエイを使う方法で,テレビ会議システムやWeb会議システムとFOMAなどのテレビ電話付き携帯電話との連携も可能だ。ゲートウエイで,H.323やWeb会議システムの独自プロトコルと携帯電話の映像配信プロトコルを相互変換することで,携帯電話でもテレビ会議やWeb会議に参加できるようになる。
今後はSIPやHDへの対応が進む
テレビ会議システムに加えて,Web会議システムが登場し,相互連携も可能になったことで,用途に合わせて製品を選べる環境が整った。今後は,新たな技術の取り込みが進みそうだ。
例えば,SIP(シップ)*機器との連携がある。対応している製品は増えている。このタイプの製品では,テレビ会議システムからIP電話を呼び出して,音声でテレビ会議に参加できるようにする。
専用端末を使うテレビ会議システムではさらなる高音質化,高画質化も進みそうだ。2006年1月には日立ハイテクノロジーズやプリンストンテクノロジーが高精細(HD*)に対応した米ライフサイズのテレビ会議システム「LifeSize Room」を発売した。価格は1台248万円で,既存のテレビ会議システムの最上位機種と比べてさほど高くない。ソニーやポリコムなども2006年春にはHD対応端末を発売する見込みだ。
今後,HD対応の製品が増えてくると,選択の幅はさらに広がる。何のためにテレビ会議システムやWeb会議システムを導入するのか,どの程度の画質や音質を求めるか,データ共有は必要かなど,用途を絞り込んだ製品選択が必要になるだろう。