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 今シーズンから東北楽天ゴールデンイーグルスの監督を務める野村克也氏。かつての選手時代も監督としても,その力量には定評がある。1990年~98年のヤクルトスワローズ(現東京ヤクルトスワローズ)監督時代は,4回のリーグ優勝と3回の日本シリーズ制覇と,指導力を存分に発揮した。

 その野村氏が“宿敵”である読売ジャイアンツについて論じた本を出版したことを,Webサイトの書評欄で知った。昔のジャイアンツ・ファンとしてはちょっと気になり手にしてみた。「巨人軍論」(角川書店,角川oneテーマ21)である。

 名将にして知将の野村氏だけに,選手から兼任監督時代の南海ホークスとジャイアンツの対比,ヤクルトスワローズや阪神タイガースの監督時代を通した対戦相手としての分析など,なかなかに面白く読み進んだ。「へえっ」と思ったのは,あの野村氏がV9時代の川上・巨人を目標にしていたというくだりである。

 川上・巨人は確かにV9という偉業を成し遂げた。ただ,それは長島・王といった逸材に頼ったチーム作りではなく,チームプレーする組織として優れた方策を取り入れていたからだと言う。その一つが「適材適所」。4番打者とエースだけでは野球は勝ち続けられない。打順ごとに役割を認識させ,チームとしての勝利を目指す人材配置が,川上・巨人では徹底していたというのだ。

 そのほかにも,選手の人間的な教育を推し進めたことや,戦法に新手法を取り入れることで勝利の確率を高めるだけでなく「進んだ野球をやっている優越感」を持たせたことなど,強かったジャイアンツのチーム操縦術を解説する。野村氏が「目標」とした野球・チームの原点がここに見えてくる。

 本書のサブタイトルには,「---組織とは,人間とは,伝統とは」の文字が並び,野球論を説いただけではないことが分かる。強いチームを作り維持することは,企業で組織をコントロールするトップやマネージャーの仕事に通じる部分が多い。IT企業であれプロ野球チームであれ,持てるリソースを生かして最大の利益を目指す点では何ら違いはない。

 もちろん本書には,直接的に企業の経営や人材育成に役立つ“金言”が並んでいるわけではない。ただ,プロ野球チームの監督という企業ビジネスとは異なる視点で書かれた中にも,ビジネス・パーソンが学ぶところはあると感じたわけだ。組織を運営する人にはそれぞれ,信念や独自の手法がある。野村氏の監督業もしかり,企業のCEOもしかり,である。

 ところで大きく話題が変わるが,ITproの「業績・業界動向」フォーカス・サイトでは,国外IT企業のCEOへのインタビュー記事【クリフ・ミラーが聞く「CEOの経営術」】の連載を始めた。聞き手はソフト開発・販売会社であるマウンテンビューデータの代表取締役であり,自身の経営者としての視点を交えて経営のツボを探り出す。第1回は,中国移動通信(China Mobile Communications)のCEO 王 建宙氏である。

 野村氏のチーム作り,王 建宙氏の企業経営---。それぞれ人や組織をいかに動かしていくのか,フィールドは違えども学ぶところは大いにあると感じた。