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米iPassのChairman & CEOのKen Denman氏
米iPassのChairman & CEOのKen Denman氏
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 公衆無線LANアクセス機能を利用して社内LANにアクセスする---。社内LANへの接続をネットワーク・サービス事業ではなくモバイル端末用ソフトで実現する企業が,米iPassである。「どのネットワークからでも所望のネットワークにアクセスできる」とする同社会長兼最高経営責任者(Chairman & CEO)のKen Denman氏が2006年4月20日に来日,企業ユーザーから見た公衆ネットワーク・サービスの意味を語った。

---iPassは何を提供するのか。

 企業ユーザーの生産性を上げる手段として,現在ではモビリティ(移動可能性)が重要になっている。企業内で体験しているオフィス環境をいつでもどこでも利用できるようになれば,生産性が一気に向上するからだ。このモビリティを可能にする材料が,モバイル端末とネットワークというわけだ。

 iPassは,モバイル端末などユーザーが利用するデバイス用に,ネットワークへの接続性を確保するためのクライアント・ソフトを提供している。社内ネットワークに自営の無線LAN経由でアクセスできるのはもちろんのこと,通信事業者やISPが提供する公衆ネットワーク・サービスを経由して社内ネットワークに容易にアクセスできる。自分がどこにいようとも,アクセス途中にあるネットワーク・サービスの存在を意識せずに,自分が使いたいネットワークに接続できる。

 いつでもどこからでも所望のネットワークにアクセスできるようにするため,iPassでは,ネットワーク・サービスを提供する通信事業者やISP(インターネット接続事業者)と業務提携を進めている。クライアント・ソフトが稼働するデバイスの種類も増やしている。例えば,日本の第3世代携帯電話機でもiPassのクライアント・ソフトが稼働する。

---iPassのクライアント・ソフトはどのように動作するのか。

 iPassはソフトウエア・ベンダーである。ソフトウエアの層でISP(インターネット接続事業者)の機能を提供する。このためのソフトがiPassのクライアント・ソフトだ。例えば無線LANアクセスでは,社内LANのアクセス・ポイントに直接接続することもできるし,公衆ネットワーク・サービスを経由して社内LANに接続することもできる。

 RADIUSサーバー用のユーザー認証プロトコルを他のプロトコルに変換して送り届ける機能など,アクセス手段を増やすための機能の多くを提供している。また,あらかじめ設定は必要だが,ユーザー認証を経てネットワーク接続に成功したらVPNクライアント・ソフトを起動して社内LANに接続するといった処理の流れの順番を管理できるため,ユーザーは特に意識することなく社内LANを利用できる。

---iPassのクライアント・ソフトの価格は。

 クライアント・ソフトは売り切りのライセンスではない。従来であればネットワーク・サービス事業として提供していたサービス・プロバイダ機能を,iPassではクライアント・ソフトという形で実装している。このため,実態がクライアント・ソフトであっても,月額ベースのサービス利用料金を課金する。クライアント・ソフトを購入するのではなく,サービス・プロバイダ事業と契約するという意味だ。

 クライアントの台数によってボリューム・ディスカウントがあるが,企業向けでは,クライアント100台までの最小構成で,1クライアントあたり日本円で月額固定料金が500~600円から。通信事業者が提供するネットワーク・サービスを利用する場合は,別途,ローミングにかかる費用を従量課金するといった具合だ。

---競合するサービスはあるか。iPassの優位性はどこにあるのか。

 “ローミング”機能を提供するコンペティタとしては,従来であれば,iPassのようなソフトウエア・ベンダーではなく,大手の通信事業者が競合していた。通信事業者は,自社のネットワーク・サービスの利用量を増やすために,公衆ネットワーク・サービスやローミング・サービスを提供していた。現在では,通信事業者はコンペティタでもあるが,パートナ企業として位置付けられる。

 通信事業者が提供するサービスは,特定の通信事業者のネットワーク・サービスに依存している。これに対して,iPassのようなソフトウエア・ベンダーは,特定の通信事業者のサービスに依存していない。ローミング機能を提供するサービス・ベンダーとして,通信事業者の色の付いたメーカー系サービスではなく,通信事業者の色の付いていない独立系サービスであるという点が,iPassの優位性だ。

 ソフトウエア・ベンダーのコンペティターは,米Fiberlink Communicationsと米GoRemote Internet Communicationsの2社だ。このうちGoRemoteは米iPassが2006年2月に買収を完了した。一方のFiberlinkとiPassの一番の差異は,通信事業者など提携しているパートナ企業の規模だ。iPassが提携しているパートナ企業は数百に上るのに対して,Fiberlinkのパートナは数十に過ぎない。

【訂正】
 8段落目に表記した価格が事実と異なっていました。「クライアント100台までの最小構成で,1クライアントあたり日本円で月額固定料金が5~6万円から」は誤りで,正しくは「クライアント100台までの最小構成で,1クライアントあたり日本円で月額固定料金が500~600円から」です。[2006/04/25 12:56]