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 つい先日,無料のインターネット放送「GyaO」を展開するUSENが2006年度2月中間期連結決算を発表した(関連記事1)。注目のGyaOなどを提供する映像・コンテンツ事業部門は,49億300万円の赤字を計上した。

 この業績を見て改めて思うのは,コンテンツの作成には相応のカネがかかり,広告収入モデルでは回収に時間がかかるということ。決算発表の席上でUSENの宇野康秀社長は,コンテンツ制作費がかさんだことや,広告獲得の遅れなどを赤字の要因として挙げた。

 もっともコンテンツ制作費の増大は,番組の自社制作の本格化を受けてのこと。それは芸能プロダクションや番組制作会社の理解が浸透し,権利処理が予想よりもスムーズに進んだとするから,うれしい誤算に違いない。インターネット放送は,通信と放送が融合した典型例としてよく取り上げられ,それも「IPマルチキャストの著作権法上の取り扱い」に議論が集中している(関連記事2関連記事3)。そのようなトップダウンの決定を待つことなく,現場では着実に通信と放送の融合が進んでいることを実感した。

 しかも,インターネットへの番組提供の進展はGyaOに限った話ではなさそうだ。USENの決算発表と同日,総務省は「通信関連業実態調査」(2005年10月実施)の結果として,放送番組制作業の実態を発表した(報道発表資料1)。これによると今後の新規事業展開としては,「インターネット番組(画面)制作」が40.4%でトップだった注1)。放送番組の制作側の意識も着実に変わろうとしている。

注1)「1年以内に取組を計画している」,「2~3年後には取り組みたい」と回答した事業者の合計。

 こうしたことから,インターネット放送は「協調・共存で市場拡大にまい進」という初期のフェーズを終えつつあると言えるだろう。これからは競争のフェーズだ。その競争を勝ち抜いた者が,通信と放送の融合がもたらす大きな果実を手にできる。競争軸はいくつもある。「視聴料は無料か有料か」,「目玉は新作コンテンツか過去の人気番組か」,「視聴形態はストリームかオンデマンドか」・・・。今こそ熱い議論を戦わす時だ。