マンダリン オリエンタル 東京は、全179の客室を含む全館にIP電話を導入した。全室、1泊6万円以上という高級ホテルであるため、顧客満足度の向上は重要な課題である。そのため、IP電話システムと客室管理システムを連携させ、さまざまなサービスを提供していく予定である。
2005年12月に東京・日本橋にオープンした高級ホテル「マンダリン オリエンタル 東京」は、全179の客室を含む全館にIP電話を導入したことを明らかにした。今後、客室管理システムと連携させるという構想を持っている。目的は顧客へのサービス内容を充実させ、リピータを獲得することだ。
客室管理システムとIP電話を連携
マンダリン オリエンタル 東京は、宿泊料が全室とも1泊6万円以上する高級ホテル。料金に見合ったサービスを提供し、さらに競合ホテルに打ち勝つためには、「顧客の満足感を高められる、きめ細やかなサービスが不可欠」(早川 千恵コミュニケーションズ部長)である。そのための基盤としてIP電話を導入した。「多様なサービスを開発できる拡張性に期待した」(早川部長)。
IP電話を活用して実現するサービスの一つは、IP電話と客室管理システムとの連携である。顧客がフロントでチェックイン手続きを済ませた時点から、客室にあるIP電話機の液晶ディスプレイに、顧客の名前を表示させる。ホテル側が顧客一人ひとりをVIP(重要人物)待遇している姿勢を示す狙いである。
この機能を実現するために、客室管理システムとIP電話サーバーを連携させる専用ソフトを開発する。チェックインすると、客室管理システムが顧客名などのデータを自動的にIP電話サーバーに転送。サーバーから、SIP(session initiation protocol)を使ってIP電話機にXML(extensible markup language)形式でデータを受け渡す(図1)。
![]() |
|
|
XMLを利用するのは、「IP電話と多機能テレビの連携を視野に入れているため」(新地 幸太郎IT&Tマネージャー)。例えば、ボイス・メッセージの内容をテレビ画面にテキスト・メッセージで表示するといった具合だ。
マンダリン オリエンタル 東京では、すべての客室に、インターネット接続やオンデマンド型のビデオ配信サービスなどに対応した多機能テレビを設置した。この多機能テレビは、各種アプリケーションを利用するインタフェースにXMLを利用するようになっている。このため、同じ仕組みを使って、IP電話と連携させることにした。
臨時で電話を設置する要望に即応
IP電話は、宿泊客以外へのサービスでも威力を発揮している。「宴会場などに臨時で電話を設置する要望にも、機動的に応じられる」(新地マネージャー)という。
マンダリン オリエンタル 東京は日本橋にあるため、隣接する兜町地区の証券会社が、顧客向けの商品説明セミナーなどで頻繁に宴会場を利用する。こうしたイベントでは、会場に商談ブースを設置することが多く、宴会場に多数の電話を用意してほしいという要望を受けやすい。
IP電話の場合、必要な台数のIP電話機を会場に用意してLANのポートに接続すれば、IP電話サーバーが電話番号とIPアドレスの対応付けを自動的に更新する。このため、煩雑な設定変更作業を伴う従来型のPBXよりも大幅に手間を減らせる。