「ワークスタイルを変革、そして業務効率を向上しよう」。これが、このところのIP電話の“合言葉”である。
IP電話は、基本は電話。それだけではワークスタイルの変革も生産性の向上もない。IP電話システムに付加されている機能やほかのアプリケーションとの連携によって、業務効率を向上させられる可能性がある、ということである。つまりIP電話には、電話(コミュニケーション)を便利にする側面と、アプリケーションを便利にする側面がある。
いまさらながら「IP電話が先かアプリケーションが先か」を考えさせられることがあった。「名刺管理ソフト」に関連してのことである。名刺管理ソフトとは、名刺をスキャナーで読み取り、社名や所属、氏名などを認識してテキスト情報として記録、管理するツールのことだ。
名刺管理ソフトのなかには、IP電話システムと連携可能な製品があり,名刺管理ソフト上の電話番号を使って、ワンタッチで電話をかけられる。これまで何回か、IP電話の取材などでこのソフトを目にし、説明を聞く機会があった。インテグレータは「便利でしょ」と言うが、私は「そうですね」と生返事。名刺管理ソフトに対して、間違った認識を持っていたからである。
数年前に名刺管理ソフトを使ったことがある。認識率は8割前後だったが、名刺のレイアウトは多様であるため、氏名と社名を取り違えたりした。まあそんなものかと思いつつ、認識結果を名刺と見比べながらチェック、修正していた。しばらく続けていくうちに、「こんなのやってられない」と、その名刺管理ソフトを使うのをあきらめた。
以来、“名刺管理ソフトは使えない”という認識でいた。したがって「名刺管理ソフトと連携できる」と聞いても、「使えない名刺管理ソフトから電話をかけられたって・・・」としか思えなかった。
それが先日、ひょんなことから名刺管理ソフトの実力を知った。日ごろ名刺管理ソフトを使っているK氏 を取材で訪ねたとき,話題が名刺管理ソフトに及び、ノートPCで“実演”をしてもらうことになった。
ソフトとセットで販売されているハンディ・スキャナーで名刺を読み込む。すると数秒で認識結果が。企業名や氏名などの辞書を持っているそうで、なかなかの認識率だという。
それよりも感心したのは、読み取った名刺画像を保存・管理する機能が装備されていることだ(写真)。これなら、誤認識されたとしても、あとでチェックできる。今後、連絡するかどうか分からない人まで正しく認識されたかをチェックしなくて済む。名刺も捨てられる。「これなら使える」。
当然、名刺管理ソフト上のメール・アドレスを使って、簡単にメールを送れる。住所からMapFan Webなどの地図サイトを検索できる。早速、同じ製品を購入し、使ってみたが,なかなか便利である。
筆者はこれまで「名刺管理ソフトで電話をかけられる」という部分しか見ていなかった。“IP電話ならでは”の部分を探すことに注力し、そのうえ前述の先入観があるため、名刺管理ソフト自体の利便性を知ろうとはしなかった。IP電話ベンダーも、名刺管理ソフトとの連携は、扱うIP電話システムの一部分に過ぎないため、詳しくは説明しない。
今回、「IP電話システムと名刺管理ソフトの連携」の利便性を認識した。それは、名刺管理ソフト自体がいいと思ったからである。その名刺管理ソフトが、IP電話と連携することによってさらに便利になるという考えである。今後は、IP電話とアプリケーションの連携製品を見る場合、アプリケーションのほうにもっと注意を払わなければと肝に銘じている。
最後に,こうした連携の利便性を実感できる場をご紹介したい。IP電話およびケータイのアプリケーション連携やソリューションが一堂に会する「IPテレフォニー&ケータイ ソリューション2006」「ビジュアル・コミュニケーション2006」である。5月18~19日に東京・池袋で開催する。