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 5月4日午後にNHKラジオの「商店街再生」に関する特集番組にゲスト出演した。3時間にわたり全国10カ所の再生事例を紹介しながら再生策を探る企画だ。全国の先端事例と問題の本質がかなりカバーできた。そこで改めて僕の意見をまとめてみたい。

(1)全国各地で再生に取り組む事例が増えている。共通するのは「何もせずにお客が来る時代は終わった」という時代認識と危機感。いずれも「とにかく何でもいいから、まず人に来てもらう」という原則を徹底。中には年間200日ものイベントを行う例(佐世保)、NPOと連携して住宅街からミニバスを走らせる例(土浦)、子供の遊び場を作る例(岡山)なども。

(2)商店街の衰退もさることながら、大手スーパー・百貨店など中核大規模店が撤退し跡地開発が課題となる地区も多い。大崎(宮城県)や諫早(長崎)などでは商店街自らが跡地問題に取り組み、核店舗の誘致や再開発プロジェクトに乗り出し行政が資金援助している。

(3)全体としては大規模店舗や不況のせいにし特段の努力をしない商店街が圧倒的多数。空き店舗がどんどん広がり寂れつつある。最大の理由は人為的なもので例えば、

  • そもそもビジネスと捉えない高齢店主が多い。業種転換も投資も工夫もしない。
  • 商店街組織が合議制を死守し、何も決まらない。一部店主がイベントや空き店舗対策に賛成せず、時間だけが経つ
  • やる気のある店主はロードサイドやショッピングセンターに流出
といったケースが目立つ。

(4)自分の代限りで廃業という店主の多くが投資をしない。あるいは閉店し、シャッターを下す。隣は迷惑するがこれを規制・抑止する仕組みもない。シャッターを下ろすなら安く人に貸すべきだし、単なる住居にするなら移転すべき。何らかの形での私権制限をすべきではないか。狸小路(札幌)では学生に店舗を貸して後継者育成をしている。丸亀町商店街(高松)では土日にシャッターが下りる銀行の前にワゴンでの出店を促しそれで成功した人に店舗をもたせる仕組みを支援している。

(5)小売全体の売り上げが減っている。しかも大規模店が面積でも売り上げでも3~4割を占める。そしてその大規模店ですら過当競争で閉店が相次ぐ。日用品を普通の値段で売っていたのでは絶対に集客できない。業種転換や店主入れ替えなどの本格的な「テナントマネジメント」が必要。例えば、金沢の竪町商店街。20年かけてファッションの街に転換し、周辺他県からも集客に成功。年間1割程度の店が新陳代謝で入れ替わる。

(6)大型店・スーパーのせいでだめになったというのは言い訳にすぎない。確かに大規模店同士の戦いにまきこまれ、さらには核店舗の撤退のあおりをうけ、運命を翻弄された商店街もある。しかし、集客の工夫や業種転換、核店舗の誘致などの基本動作をやっていないまま衰退しつつある例がほとんど。

(7)まちづくり3法の見直しはコンパクトシティの構築につながる。だが法改正で商店街が再生する保障はない。大規模店は資本主義の権化、怪獣のようなものであり、かつて「コンビニ」に転換して街中に入ってきたようにあの手この手で工夫してくる。法改正は、やる気のある商店街にとってはプラスだがやる気のないところにとってはあまり役にもたたないだろう。

(8)そもそも「商店街」単位での問題解決だけでは無理がある。個店が魅力的であればそれだけで成り立つはずで立地・経済環境はあまり関係ない。逆に個々の店がつまらないと商店街の繁栄はありえない。やはり店主の新陳代謝や業種・業態の転換が必要。前提として「健全な競争」と「退出促進」が大事。政府の振興策とシャッターを下ろした店主に退出を迫らない税制の手直しも必須。

(9)インターネット販売などの“サイレント・コマース”の到来で、かえってコストの安い中小商店が競争力を持つ場合もある。年商数億を誇りながら、店舗は昔ながらで生の消費者の情報収集を主眼にというのはひとつの理想系ではないか。

(10)商店街の価値はビジネスモデルだけで捉えにくい。公園や広場などの公共施設と同じ役割も果たしており、単に日用品を安く売る場ではない。だからといって補助金を払って維持するのもおかしい。要するに人々に、また店主側にも“MY商店街”という自覚が必要なのではないか。その上に各種制度や補助金なども生きてくる。

上山氏写真

上山信一(うえやま・しんいち)

慶應義塾大学教授(大学院 政策・メディア研究科)。運輸省、マッキンゼー(共同経 営者)、ジョージタウン大学研究教授を経て現職。専門は行政経営。行政経営フォー ラム代表。『だから、改革は成功する』『新・行財政構 造改革工程表』ほか編著書多数。