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図3 Windows XP Home EditionはProfessionalのいくつかの機能が使えないほか,Active Directoryドメインに参加できない。ドメイン・コントローラによるシングル・サインオンやサービス/リソースの一元管理,グループ・ポリシーを使ったユーザー設定など,企業クライアントとして便利な機能がHome Editionでは利用できない。
図3 Windows XP Home EditionはProfessionalのいくつかの機能が使えないほか,Active Directoryドメインに参加できない。ドメイン・コントローラによるシングル・サインオンやサービス/リソースの一元管理,グループ・ポリシーを使ったユーザー設定など,企業クライアントとして便利な機能がHome Editionでは利用できない。
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 Windows XPには,Home Edition(ホームエディション,以下Home)とProfessional(プロフェッショナル,以下Pro)があります。これ以外に,Professionalを拡張したMedia Center Edition(メディアセンターエディション)とTablet PC Edition(タブレットピーシーエディション)というOEM*主体のエディションもありますが,パソコンを購入すると通常はHomeかProのいずれかがプレインストールされているでしょう。

 Windows XPを企業内で使う場合に,これらのエディションによるライセンス上の違いはありません。このため,Homeを企業ネットワークで使用してもかまいません。ただし,実際にはある程度以上の規模の企業はProを利用しているケースがほとんどです。これは,Proの方が機能が充実しており,特に強力な管理機能を使うと運用コストを大幅に削減できることが多いためです(図3[拡大表示])。Homeを企業ネットワークで使う場合には,これらの違いを意識しておいた方がよいでしょう。

セキュリティ面でProに劣る

 まずOS単体でみると,残念ながらHomeはProほど高いセキュリティを確保できません。

 Proではファイルやアプリケーションなどのリソースに対してアクセス権を設定できます。例えば,ユーザーやグループごとに「変更」「読み取り」「フォルダ内容の一覧表示」「書き込み」「読み取りと実行」の許可・禁止が設定できます。不特定多数のユーザーが利用するパソコンの場合は,これらの機能が使えた方が安心でしょう。

 また,Proでは暗号化ファイル・システムが使えます。暗号化ファイル・システムとは,フォルダやファイルの内容を暗号化し,ほかの人から読み出せないようにする機能です。ハードディスク全体を暗号化しておくと,たとえパソコン本体やハードディスクが盗まれても解読されにくくなります。このため,ノートPCを電車内へ置き忘れても暗号化しておけば比較的安心です。しかしHomeには,この機能がありません。

 セキュリティ以外でも,ほかのパソコンから遠隔操作を受け付けるリモート・デスクトップ*や,一部の企業ではまだまだ活躍しているファイル・サーバー・ソフトのNetWare(ネットウエア)*へアクセスする機能が,Homeには付属していません。

ドメインへも参加できない

 企業ネットワークで使うことを考えた場合,ProとHomeの最も大きな違いはActive Directory(アクティブディレクトリ)ドメインに参加できるかどうかでしょう。Active DirectoryはWindowsネットワークを統合的に管理するしくみです。ドメイン・コントローラと呼ばれるサーバーが,ドメインに参加しているWindowsマシンを集中管理します。

 Active DirectoryにWindowsマシンを参加させるメリットはいくつもあります。例えばユーザーやコンピュータはドメイン・コントローラが一元管理します。これにより,ユーザーは1度ログオンするだけで,許可されている範囲内ならばドメイン内のリソースへ自由にアクセスできます。いわゆる「シングル・サインオン」が実現できるのです。

 管理者にとっては,「グループ・ポリシー」と呼ばれる機能が使える点が大きいでしょう。グループ・ポリシーはドメインに参加しているWindowsマシンのさまざまな初期設定や機能制限を管理者が一括して定義するしくみです。Active Directoryと連携してユーザーやグループごとに設定することができますので,ドメインで統一した設定をユーザーに強制することができます。

 例えば,「コントロール・パネルを無効にする」と設定してしまえば,一般ユーザーが勝手にコンピュータの設定を変えてしまうといった問題を防ぐことができます。それ以外に,ネットワークの設定をいっせいに変更したり,ログオン時に特定のプログラムを実行するといった幅広い処理が,グループ・ポリシーを使うことで可能になります。

 Homeを使ったパソコンでは,Active Directoryに参加できないため,これらのメリットが享受できない点に留意してください。

アップグレードは追加費用が必要

 Proならではの機能を利用するには,Homeからアップグレードする必要があります。Homeからアップグレードするには,Windows 9x/Me/NT/2000からバージョンアップする場合と同様に改めてアップグレード版を2万~2万3000円程度で購入します。2004年秋にWindows XPサービスパック2適用パッケージが登場したのに併せて「ステップアップグレード」版というHomeからProへのアップグレード専用パッケージが約半額で提供されましたが,残念ながら2005年1月末でマイクロソフトからの出荷は終了しています。


●筆者:山内 徹(やまうち とおる)
NECソフト
ICTシステム事業部