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キャリア・グレードのサーバー・アーキテクチャとして標準化されているAdvancedTCA(ATCA)。これはPICMG(PCI Industrial Computer Manufacturers Group) で決められた規格で,PICMG3.0とも呼ばれる。電話網をIP化するNGNに向け,キャリア向けの通信装置を手がけるベンダーはATCAをどう捉えているのか。NGNプロダクト群を開発している沖電気工業 ネットワークシステムカンパニー ネットワークシステム本部プロダクトマーケティング部の尾崎裕二部長と高田実雄担当課長に,3月に発表したキャリア向けコミュニケーション・サーバーのATCA対応など,今後の方針を聞いた。
---3月に発表した「CenterStage NX5000」について,今後はATCAに対応させると表明している。キャリアのニーズはどのようなものか?
ATCA対応のものは,2006年度の早いうちに出したいと考えている。ただ,すべてのキャリアがATCAを要求しているわけではない。ATCAのような統一されたアーキテクチャを採用する装置であれば,キャリアは保守しやすいだろう。ただATCAを必要としているのは,自ら保守をしたいと考えているキャリアだ。自分で保守をしないなら(ベンダーに保守を依頼するのなら)「ATCAでなければダメ」という注文は出て来ない。
---NGNになると通信装置はどう変わるのか。
レガシーからソフトスイッチへとIP化のマイグレーションが始まろうとしている。ソフトスイッチは信頼性で足りていない時代があったが,今は信頼性を担保できている。だが,標準がきちんとなければ複数ベンダーの装置をうまくまとめられなくなるので,「何のためにIP化したのか?」ということになってしまう。NGN時代になると,これまでベンダーごとにばらばらだった装置の仕様についても統一規格が生まれるので,アーキテクチャが大きく変わってくる。また,IP化によって導入コストも下がっていくだろう。ベンダーとしては,付加価値で競争することになる。
---では,どの部分を強化していくのか。
サービスそのものの付加価値についてはキャリアが企画するものであり,ベンダーが決めるものではない。キャリアは低コストでカスタマイズできる製品を求めるようになるだろう。ベンダーには,このキャリアのニーズに答えることが求められている。こう考えると,沖電気としては基本性能や信頼性に注目して,キャリアが安心してカスタマイズできる土台を作らなければならない。実際,うちの製品は信頼性が高く,素早くカスタマイズできる仕様になっている。
現時点で「NGNならではの新しいサービスは何か」と問われると,どのベンダーもなかなかうまい答えをいえない状態にあるだろう。ベンダーは今,キャリアが新しいサービスを提供するために必要となるコンポーネント(認証,インスタント・メッセージ,プレゼンスなど)を用意しているところだ。
---ATCAは今後広まっていくと思うか。
ATCAに移行しようという動きがあるのは明らかだ。今後は出荷数が増えていくだろう。ただし,既存のシステムがあるから簡単には移行できない。既存の非ATCAシステムにパッケージを追加する形でNGN対応にしてほしいという声もある。したがって,当面は現行設備のアップグレードが中心となる。ATCAの本格採用はその次の新規採用フェーズからになるだろう。ただ,数量という点では,現在規格化中のmicroTCAという小型機器向け規格の方が多く出荷されることになるだろう。規格化はATCAの方が早かったが,広まるのはmicroTCAの方が早いと予測する。microTCAはPICMGのなかで,1500ドルという価格目標を掲げて規格化されつつある。期待されている市場はWiMAXの基地局などだ。こちらの規格はエンタープライズ向け機器でも使われることが見込まれるので,市場は広がりやすい。
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