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ビフォー・ アフター

 建設機械メーカー大手の日立建機は足で稼ぐ泥臭い営業からの脱却を狙い、営業支援システムを導入し進ちょく管理を進めてきた。営業のステップを実に500以上にまで分解し、きめ細かく把握する。営業担当者は顧客との付き合いがどの段階にあるかを自覚できることで、毎回の訪問や電話などでの接触の際に目的意識を高く持てる。東日本事業部では3年間で1人当たりの売り上げを32%向上させた。

 さらに営業支援システムを発展させて「プロジェクトプラス」を開発、新車販売、修理・点検サービス、レンタルという3種類の営業部隊の融合を図っている。同システムにより地域の拠点ごとの売り上げと粗利益を毎月公表するようにして、異なる営業部隊間の相乗効果につなげている。生産性を高めるだけではなく、企業風土の改革すら促す営業システムが生まれた。


営業支援システム「プロジェクトプラス」の画面をのぞき込む大平淳史横浜営業所所長(左)。背後にはRSSを推進するポスター
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●プロジェクトプラスには従来の進ちょく管理だけでなく2つの機能が加わった

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 1つのシステム導入をきっかけにして縦割りの組織体制に風穴を開け、フレキシブルな営業体制を構築できた—。建設機械メーカー大手の日立建機はそんな理想的なシステム導入を実現した。

 同社はもともとIT(情報技術)導入に積極的な企業だ。その1つが営業支援システムSPM(STAR Process Management)である。STARとはSTAR21(Strategic Action Revolution for 21)という1995年に始めた営業改革運動のことだ。SPMは営業担当者の進ちょく管理を目的に99年に導入された。

御用聞きから脱却

 建機メーカーの営業とは、ゼネコンや中小の土木業者、建機レンタル業者に、新車か修理・点検サービスを提供するのが主な仕事だ。SPM導入以前の営業スタイルは、地域の営業所に所属する営業担当者が足繁く顧客の下に通い、信頼関係を築いて、製品やサービスの販売に結びつけるといったものだった。いわば「御用聞き型」の営業だ。マネジャーは部下の訪問先と日時、回数ぐらいしか管理していなかった。しかし、大切なのは訪問回数ではなく、適切なタイミングで、適切な製品を提案することだ。

 SPMでは、顧客の選定から販売後のフォローまで8つの商談ステップについて、それぞれを5つの活動手順に切り分ける。さらにその活動手順をより具体的な行動内容にまで定義づけしている。その結果、営業の中身は実に507のステップにまで細分化できるという。

 マネジャーは部下の営業担当者の進ちょく状況をパソコン上で把握できるためアドバイスしやすい。営業担当者自身も訪問ごとの目的を意識しながら顧客と向き合うことができる。つまり、営業プロセスの「見える化」に取り組んだのがSPMだった。

 「受け身の営業から、積極的な提案営業へと変わる成果があった」と話すのは東日本事業部の新井満RSS推進部長だ。新井部長はSTAR21の活動初期からシステム開発に携わってきた。

 しかし、SPMの効果は次第に表れなくなっていった。経営環境が激変してしまったのだ。