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◆今回の注目NEWS◆

◎地方自治体は3年をメドに貸借対照表など4文書の整備を--総務省「新地方公会計制度研究会」が提言(日経BPガバメントテクノロジー、5月19日)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060519/238448/

【ニュースの概要】総務省「新地方公会計制度研究会」が19日に報告書をまとめた。「地方分権の進展に伴い、これまで以上に自由でかつ責任ある地域経営が地方公共団体に求められている」と指摘した上で、3年をメドに貸借対照表など4文書の整備することを提言した。


◆このNEWSのツボ◆

 本稿でも、財政状況の逼迫を背景とした、国や地方自治体の財務会計制度の見直し(公会計制度改革)の話題を何度か取り上げてきたが、今回、2005年度に1年を掛けて総務省で実施していた「新地方公会計制度研究会」の報告書がまとまった。

 今回の作業は、昨年末に取りまとめられた、内閣の「行政改革の重要方針」とも歩調を合わせたものだが、従来から進められてきた公会計改革(発生主義・複式簿記の会計指標の導入)と比べて何点か、新に加わった部分、強調されている項目がある。

 報告書は、公会計4表の詳細な構成項目に関して、精緻な解説、指針を含むが、大きなポイントで注目すべき点は、

  • 自治体の貸借対照表、行政コスト計算書、資金収支計算書、純資産変動計算書(新規)の4表の作成・公開を今後3年の間に進める
  • 資産評価方法など専門的知識が必要な課題については、公認会計士等からなる検討の場を設置し、作業の円滑化を図る。
  • 新たな公会計制度導入に必要となるプログラムを含む情報公開や詳細な説明は総務省が責任をもって行うべき
  • 財務諸表の正確性に関する監査制度の導入を検討すべき

といった点であろう。

 純資産変動計算書は、過去1年の間に、住民の税金や公債等を費消して公共団体が行った政策によって、資産(純資産)がどれだけ増減したか…を示す指標であり、世代間の衡平を確保する観点から導入すべきとされている(「借金は増えたのに、将来の世代が使える資産が増えていない」といった事態を簡易にチェックできるようになる)。

 全自治体がこれらの4表を作成・公表するようになれば、「行政経営」の効率分析に、かなり精緻なツールが与えられることになり、「効率的な行政」実現に貢献することが期待される。

 ただ、筆者の読み方が間違えてなければ、この報告書の措置が実行されても、依然として大きな課題も残る。それは、これら4表が、基本的に「決算統計」から作られるという点である。

 今の財政制度の下では、決算統計の完成までには、1年を超える長い期間を要する。その後から、これら4表が作られたのでは、せっかく「発生主義」を導入しても、その効果は、かなり減じられると言わざるを得ない。一方で発生主義を導入するのであれば、概算値でも良いから、入力データを工夫し、早期公開が実現されるようになれば、日本の自治体の予算作成過程も、革新的な変化を遂げると思われるのだが……。

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

東京大学経済学部卒。通商産業省(現 経済産業省)に22年間勤務した後、2000年7月に同省を退職。同年8月にコンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はウッドランド社長、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営コンサルティング、IT戦略コンサルティングまで幅広い領域で活動する。