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スウェーデンの通信機器メーカー大手のエリクソンは,携帯電話インフラ設備では世界シェア・トップ。2006年1月には英マルコーニの買収を完了し,固定通信向けのエッジ・ノードや光伝送装置などのラインナップをそろえた。北東アジア地域を統括する日本エリクソンの藤岡雅宣 取締役チーフ・テクノロジー・オフィサーに,NGN(next generation network)に向けた戦略を聞いた。(聞き手は白井 良=日経コミュニケーション

--NGNが登場すると,エンドユーザーが使う通信サービスも大きく変わるのか

 それは分からない。ただ,NGNでしか実現できないアプリケーションがあったとしても,すぐには登場しないだろう。現在の通信事業者の動きは,NGN特有のアプリケーションを作ろうという方向にはない。既存のサービスをIP網に置き換えることと,インターネットに奪われていたアプリケーションを通信事業者側に取り戻すことから始めている。

 電話など既存のサービスをIP網に置き換えると,通信事業者は全体のコストを下げられる。現在は別々に運用している電話,データ通信など用途別のネットワークを,一つのIP網にまとめられるからだ。

 エンドユーザーから見ると,通信だけに払うお金は下がると思う。その通信料金が下がる分を,通信事業者はコンテンツからの収入で補う形になるだろう。通信事業者自身がコンテンツを提供する場合もあれば,何らかの形でコンテンツ事業者と収益を分け合うこともあるだろう。

--通信事業者がサービスで収益を上げる構造にシフトするほど,通信機器への投資は減るのでは。

 その通りだ。それに対応して,エリクソンもビジネス・モデルを変えつつある。具体的には,通信事業者向けのサービスをどんどん増やす。

 一つは,「IPX」と呼ぶ通信事業者向けソリューション。我々のデータ・センターで,アプリケーション・サーバーをホスティングするサービスだ。

 さらに,このサービスでは,エリクソンが一元的にコンテンツ事業者と交渉してコンテンツを集めてくる。通信事業者は,エリクソンのデータ・センターと一本の回線をつなぐだけで,世界中の様々なコンテンツをエンドユーザーに提供できるようになる。

 コンテンツ・プロバイダからはエリクソンが回線アグリゲータに見え,通信事業者からはコンテンツ・アグリゲータに見える。エリクソンは,コンテンツ事業者と携帯電話事業者から手数料をいただく。

 ほかにも,音楽配信では米ナップスターと提携し,「Napster Mobile」を欧米で提供している。楽曲を集めてくるのはナップスター。エリクソンは,その楽曲を着信メロディなどに変換して,通信事業者向けに販売する。

--アプリケーション以外のサービスも提供するのか。

 海外では,通信事業者網の保守・運用のアウトソーシングを請け負っている。英ハチソン3Gなど数社に対し,既にこうしたサービスを提供中だ。全体のコスト効率を考えると,運用は機器の知識が豊富なメーカーに任せた方が有利と判断されたようだ。

 例えばハチソン3Gは「年に何分止まっていい」と要求条件を出すだけ。それさえ守っていたら,ネットワークの中はどうなっていてもいいという契約だ。エリクソンが「ゼロ種事業者」のような立場で,通信事業者はサービス・プロバイダに徹底するスタイルだ。ある種,通信事業者がMVNO(mobile virtual network operator)のようになってきたとも言える。

 世界中で,このようなネットワークを自社で運用しない通信事業者が増え始めている。携帯電話事業者は,通話エリアの広さや通話品質では差異化できなくなってきた。銀行やコンテンツ事業者などの他業種と連携した新サービスなど,高いレイヤーで通信事業者間が競争する構図になっている。そのため,「インフラで競争するわけではないから,メーカーに任せとけばいい」という流れになっている。

 NGNでは,こうした動きがさらに加速すると見ている。NGNは標準規格が決められたIP網で,インフラでは通信事業者間の差が出にくいからだ。