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 前回はタスクのサインアップについて解説した。今回はタスクのサインアップと深い関係がある「タスクかんばん」を紹介する。

 タスクかんばんは,チーム全体のタスク・カードをタスクの状態ごとに分類して壁に張り付けることで,プロジェクトの進行状況を見える化する手法である。タスクの状態は,「To Do(未着手)」「Doing(着手)」「Done(完了)」の3つに分けるのが一般的だ。図1では,壁をこれら3つの領域(レーンと呼ぶ)に分け,それぞれ該当するタスク・カードを張り付けている。


図1 タスクかんばんの例
左から順に「To Do(未着手)」「Doing(着手)」「Done(完了)」の3つのレーンに分けている。

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 タスク・カードは最初To Doレーンに張っておき,着手(サインアップ)する際に取り外して自分の席に持っていく。TRICHORDチームでは,これを「タスクを取る」と呼んでいる。タスク・カードを付せんで代用するような場合には,タスクを書いた付せんを自分の席に持っていく代わりに,Doingレーンに移動してもよい。そうすれば「誰が何に着手しているか」についても一目で分かるようになる。

 作業が終わったら,Doneレーンにタスク・カードを移動して完了とし,次のタスクにサインアップしてタスクを取る。一日の作業終了時に完了していないタスクがあれば,作業中としてDoingに張っておき,次の日の開始点とする。

 タスクの状態を分類する際には,今挙げたTo Do,Doing,Doneの3つ以外に新たな状態を定義してもかまわない。例えば終了後に誰かのレビューを受けるという状態を定義したい場合は,To Do,Doing,Doneに加えて,「レビュー待ち」といった状態を追加すればよい。または何らかの理由で「予定していたが今は作業しない」という状態を定義したければ,「ペンディング」といった状態を追加することもできる。

 タスクかんばんのメリットは,ある期間における全体の作業量と,現時点で完了済みの量を視覚的に把握できる点だ。今現在の作業状態のスナップショットを「見える化」するのである。図1のように作業中のタスクをDoingレーンに並べておく場合は,どのタスクが作業中であるかも一目で分かる。タスク・カードを自分の席に持っていった場合はカードがかんばん上に存在しなくなるが,誰が何を作業中かを知りたければ各開発者の机を見ればよい。

 このようにタスクかんばんによってチーム全員が現在のプロジェクトの状況を的確に認識できることは,様々な利点をもたらす。どこかで問題が発生した場合に,チーム・メンバーが自律的なアクションをとりやすい,というのがその例だ。タスクかんばんがないと,チームの中で互いに誰が何をしているかを把握することさえ難しいだろう。

 またタスクかんばんによって,開発者だけでなくマネージャまで「見える化」の恩恵を受けられる点も重要だ。ここで強調しておきたいのは,開発者が自分たちのために実施していることが,マネージャに対してもメリットをもたらす点である。もしタスクかんばんが,マネージャが進ちょくを見るためだけのものならば,開発者にとっては負担になるだけだ。開発者とマネージャがWin-Winの関係で「見える化」することが大切なのだ。

 筆者は以前,新入社員研修の開発実習を担当した際に,進行管理として新入社員にタスクかんばんを使わせたことがある。この研修は,新入社員が数名ずつのチームに分かれ,課題として渡された仕様からシステムを作り上げていくという研修だった。通常は,講師が各チームを回って逐次状況をヒアリングしたり,リーダーに報告させたりすることで各チームの状態を把握していた。

 筆者が講師をしていたクラスでは,彼らに「やることを洗い出して付せんに書き出し,壁に張り出す」,「やること全部をTo Doに,やっていることはDoingに,終ったことはDoneに付せんを張っておくように」とだけ指示しておいた。講師が複数のチームの状態を把握する手間を削減するために試してみたのだが,予想以上の効果があったと思う。

 タスクかんばんは,現時点の状況を「見える化」する一方,「このまま行けば終わりそうなのか」といった先を見通すような視点は持ち合せていない。こうした時間軸を含めた先の見通しを「見える化」するには,バーンダウン・チャートを描く必要がある。次回はこのバーンダウン・チャートについて解説する予定だ。

懸田 剛

チェンジビジョンでプロジェクトの見える化ツール「TRICHORD(トライコード)」の開発を担当。デジタルなハックと,アナログなハックの両方を好む。新しいやり方やツールを考えるのが好きである。個人サイトは http://log.giantech.jp/