■イメージ・バックアップは,ディスクの情報をファイルではなく,記録しているビット列のまま転送・保存する手法である。OS,アプリケーション,ユーザー・データ込みですべて正確にコピーしているので,ディスクの状態を確実に復元できる。最新のイメージ・バックアップの凄いところは,バックアップをとったマシンとは異なるマシンに対してリストアが実行できる点だ。仮想マシンなどにもリストアできる。最新のイメージ・バックアップ製品の利点などを紹介しよう。
イメージ・バックアップでかなう夢
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イメージ・バックアップでかなう夢は,システムやアプリケーションの簡単なリストア,高速なバックアップ,異機種への復元などである。小規模であっても止められない業務アプリケーション・サーバーのバックアップなどに適している。
イメージ・バックアップは,ディスクの情報をファイルではなく,記録しているビット列のまま転送・保存する。OS,アプリケーション,ユーザー・データ込みですべて正確にコピーしているので,ディスクの状態を確実に復元できる。また,ファイル単位でデータを読み書きするよりも,データ転送が高速である。
かつての「Norton Ghost」や「Drive Image」といったDOSベースの製品は,バックアップ時にOSを終了する必要があった。しかし,2003年2月に発売された「V2i Protector」(現在は「LiveState Recovery」)以降の製品は,OSやアプリケーションの稼働中にバックアップできる。
しかもリストアする際は,「Windows PE」や「Linux」が入った製品CD-ROMでマシンを起動して,データを書き戻す。USB接続の外付けハードディスクやNASなども利用可能になった。
VSSに対応して機能が強化
ソフトの進化も目覚ましい。初期のV2i Protectorは,稼働中にデータベースをバックアップする際,サービスをいったん停止していた。しかし,最近の製品なら,サービスは停止しなくてよい。
データベースは,ファイルの一部をメモリー上に展開するなどして,処理を高速化している。データベースの整合性を確保してバックアップするためには,サービスを停止してメモリー上のデータをファイルに反映させていた。
しかし最近の製品は,Windows Server 2003のボリューム・シャドウ・コピー・サービス(VSS)に対応している。VSSは,Windows Server 2003において,「整合性の取れたディスクの静止点」を作成する機能である。Exchange Server 2003やSQL Server 2000などのVSS対応アプリケーションは,サービスを停止せずにイメージ・バックアップができる。
そのほかの機能も強化されている(図8)。主要なイメージ・バックアップ・ソフト(表2)の特徴を見てみよう。
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図8●最近のサーバー用イメージ・バックアップ・ソフトの特徴
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表2●主要なサーバー用ディスク・バックアップ・ソフト
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基本的にすべての製品で,増分バックアップができる。イメージ・バックアップを日常のバックアップ手段として利用できるようになった。
「SHADOW PROTECT IT EDITION」は,増分バックアップはできないが,バックアップ・ソフトのインストール作業なしにOS稼働中のバックアップができる。他の製品は,特別なドライバ・ソフトをインストールするので,「安定性のために,なるべく特別なドライバを入れたくない」というユーザーは,イメージ・バックアップをためらう傾向があった。
特別なドライバを使わないSHADOW PROTECT IT EDITIONは,アプリケーションの挙動に影響を与える可能性が低い。また,複数のサーバーで利用できるライセンス形態なので,たくさんのサーバーのバックアップをしたいユーザーに向いている
LiveState Recovery Suite 6.0は,ハードウエア構成の異なるサーバーや,仮想マシンにリストアできる。過去のイメージ・バックアップは,同じハードウエア構成のマシンに戻すのが原則だった。異なるハードウエア構成のマシンに戻しても,元のシステムにドライバがないデバイスを認識できなかったのだ。
チップ・セットやストレージのドライバは「RAWドライバ」と呼ばれるもので,Windowsのプラグ&プレイに対応していない。そのため,SCSIディスクのマシンにインストールされたシステムを,シリアルATAディスクのマシンに復元するようなことが難しかった。
LiveState Recovery 6.0は,リカバリの際に,イメージ・ファイル内のRAWドライバと,リストア先のマシンに必要なRAWドライバをチェックする。そして,RAWドライバが不足している場合は,イメージ・ファイルを書き戻した後のディスク・ボリュームに対して,製品CD-ROM(Windows PE)からRAWドライバのファイルをコピーする。
仮想マシン・ソフトで異なる環境に復元するのも容易になった。LiveState Recovery 6.0のバックアップ・データは,仮想マシン・ソフト「VMware 5.5」で直接利用できる。VMware 5.5の仮想ディスク形式に,LiveState Recovery 6.0のイメージ・ファイルが追加されたのだ。
True Image Serverのイメージ・ファイルも,VMwareの仮想マシンに対して復元可能である。こちらの場合,まずTrue Image Serverを使って仮想マシンのディスクにデータを書き戻し,その後,VMwareの内蔵ツールを使って,仮想ディスクを利用可能な状態に変換するという作業になる。