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 欧米ではチャリティ・オークションをよく行う。日本ではまだまだ珍しいが、今後のやり方次第では莫大な可能性が広がるだろう。チャリティ・オークションはNPOへの寄付促進、若手の芸術家の育成・支援のほか企業にとっても広報宣伝の場として有効だ。日本の場合、公的機関が持つ歴史的建造物や神社仏閣を使って、企業・経済団体が各地のNPOを支援する方法として魅力的だ。

■企業と芸術家とNPOをつなぐ--例えばフランス大使館では

 東京で筆者が参加した一例は次のようなものだ。会場は東京港区のフランス大使公邸である。目的は途上国に医師を派遣する「世界の医療団」の支援だ。コンセプトは「アートから人道医療へのサポート」だ。スポンサーはエルメスとシトロエンのほか16社だ。大手オークションハウスのクリスティーズがオークショニアを無償で派遣してくれた。会場には約200人がやってきた。9割方が日本人。全員招待客だが、VIPや見るからにお金持ちという人は少ない。口コミで趣旨に賛同した人、フランス企業関係者、普通のビジネスマンなどだ。平均年齢は38歳くらいでみんな現役世代。女性も多い。軽いドリンク・パーティのあとフランソワーズ・モレシャン氏のスピーチ。「世界の医療団」の活動内容と今日の趣旨がよく分かった。いよいよ別室でオークションだ。

 合計25品がかかった。19点が現代作家の工芸品と絵画。アート系の照明機器など装飾品が3点、航空券・旅行券が2点。安いもので数万円、平均は40~50万円。高いものでも100万円程度。目玉商品はエルメスが内装したというシトロエンの新車で、200万円からスタートし500万円を少し超えて落札した。全体で940万の売り上げで大成功だった。参加者一人当たり5万円弱の貢献となる。企画から運営までの一切は、筆者の友人が経営するタマダ・プロジェクト・コーポレーションが取り仕切ったが6カ月ほどの準備期間がかかったという。

 オークションは初めてという人も多かった。参加した友人に聞くとこういう返事が返ってきた。「生まれて初めて絵を買った。こういう会だから騙されないと思った。仮に割高でも利益が寄付になると思えば気分は悪くない。この絵は事務所に飾るが、人に聞かれたら寄付のつもりで買ったと自慢できる」とのこと。チャリティ、そしてフランス大使館といった「公的」なしつらえが彼に絵を買わせたようだ。

■公的機関でぜひ--NPO支援、芸術振興、そして官民連携の旗印として

 筆者が勧めるのは各地の公共施設や迎賓館でのチャリティ・オークションだ。例えば大阪の場合、市長公舎、知事公館のほか中ノ島公会堂、日銀大阪支店など歴史的建造物が多数ある。こうして施設は得てして稼働率は高くない。

 この際、雰囲気の良い歴史的建物でNPO支援のためのチャリティ・オークションをやったらどうだろうか。NPO支援、芸術振興、そして官民連携の旗印としての宣伝効果もある。青年会議所や商工会議所などの経済団体に主催者になってもらう。会場費、運営費は売り上げでカバーするがもし赤字が出たら負担してもらう。知事や市長には挨拶に来てもらう。作品は地元出身の現代作家に頼んで譲ってもらう。得た収益から運営費を差し引き、利益は3分の1を寄付に、3分の1を作家に、そして3分の1を次回の企画運営費に回すというのでどうだろう。

■アートがつなぐ公益と私益--企業の経済力と個人の資産を社会貢献の世界へ

 日本ではチャリティ・オークションというとまだまだ顔をひそめる向きがある。特に福祉系団体がそうだ。いわく「競りは下品だ」「金持ちの道楽で福祉を支援してもらいたくない」など。だがこうした考えは間違っている。アートは地位や立場を超えて幅広く人の興味を集め、そして和ませる。アートを媒介として普段は福祉や寄付、社会貢献に興味を持たない人を集められる。彼らにNPOの活動を説明できるだけでもチャンスではないか。

 これからのNPOは支持層を幅広く持たなければいけない。金銭面だけでなく宣伝効果を考えてもチャリティ・オークションは意味がある。スポンサー企業の支援を得れば運営も簡単だ。スポンサーは意外と見つかりやすい。一流企業は今や競ってCSR(企業の社会責任)を追求する。芸術文化とNPOの支援を公的機関と連携してできるとなるとこれはいい企画だ。チャリティ・オークションは企業が持つ経済力と個人の 資産をアートを通じて社会貢献の世界に引き出す魔力をもった装置である。日本でも行政機関が自らが所有する施設の有効活用策として率先して普及させて欲しい。

上山氏写真

上山信一(うえやま・しんいち)

慶應義塾大学教授(大学院 政策・メディア研究科)。。運輸省、マッキンゼー(共同経営者)、ジョージタウン大学研究教授を経て現職。専門は行政経営。行政経営フォーラム代表。『だから、改革は成功する』『新・行財政構造改革工程表』ほか編著書多数。