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時間貸し駐車場サービス最大手のパーク24は,全国6000カ所の駐車場をすべてつなぐオンライン・システム「TONIC」を2005年10月に完成させた。IT武装した“攻め”のビジネス展開で稼働率をアップさせながら,規模拡大に伴う駐車場の管理煩雑化を軽減するのが狙いだ。

 黄色い看板がトレードマークの無人時間貸し駐車場「タイムズ」。全国約6000カ所で営業を展開しており,合計で約15万台の車を収容できる一大駐車場チェーンだ。この6000カ所の駐車場をすべて結ぶオンライン・システムが「TONIC」。タイムズを管理・運営するパーク24が,約40億円を投じて2005年10月に完成させた。

 同社が全駐車場のオンライン化を目指し,TONICを構築した目的は二つある。一つは,従来のビジネス・スタイルからの脱却を図ること。これまでの時間貸し駐車場は,ドライバーが駐車しに来るのを待つ「守り」のスタイルが一般的。これに対してパーク24は,いかにドライバーを積極的に呼び込めるようにするかの「攻め」のスタイルを指向した。


図1●顧客獲得と駐車場管理の効率化を狙ったパーク24の駐車場のオンライン・システム「TONIC」
パーク24が展開する時間貸し駐車場「タイムズ」は,現金以外にEdyやSuicaなどの電子マネーによって決済ができるほか,iモードなどの携帯アクセスで満車/空車情報が閲覧可能。精算機やゲート・バーなどが故障した場合にはリモートで保守できるようにするなど,効率的な保守・管理の仕組みも備えている。

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図2●全国の駐車場を接続するTONIC(Times Online Network&Information Center)のネットワーク構成
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写真1●分析ツールを使って時間帯別の稼働率や入出庫数をリアルタイムで把握
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図3●2001年から始めた「基盤構築フェーズ」を2005年末までに終え,現在は「活用推進フェーズ」に力を入れる
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 例えば近隣に他社駐車場があっても,あえてタイムズの駐車場を利用してもらえるように工夫を凝らす。そのために,ドライバーを迅速に誘導する仕組みや,利便性向上でタイムズ・ファンを獲得する仕掛けを構築。具体的には,ドライバーがiモード*などの携帯電話やカーナビゲーションから,駐車場の位置やその満車/空車情報を検索・閲覧できるようにしたほか,現金,クレジットカード以外に,Edy*Suica*などの電子マネーによる決済手段を用意した(図1[拡大表示])。

 オンライン化のもう一つの目的は,駐車場管理の効率化。無人であっても有人駐車場以上のサービス品質を提供できるよう,迅速な保守対応が取れる遠隔操作の環境を整備した。また,時間帯別稼働率などをリアルタイムに分析できる仕組みも作り上げた。

 パーク24によると,TONICの効果は数字に表れていると言う。「全駐車場を接続する前は,TONICに接続した駐車場と未接続の駐車場とでは,売り上げの伸び率で4ポイント以上の開きがあった。薄利の駐車場ビジネスにとってこの差は大きい」(川上紀文IT戦略推進部長)。

携帯パケット通信で入出庫情報収集

 TONICによって提供される各種サービスは,クレジットカード対応を始めた2003年5月から,2004年10月のEdy対応,2005年11月のSuica対応と順次拡大した。2005年10月に完成したTONICのインフラは,データ・センターと各種ネットワークを接続することで実現している(図2[拡大表示])。

 例えば,ドライバーに提供する満車/空車情報の基となる入出庫データやクレジットカードの決済データは,主に携帯電話のパケット通信網「DoPa*」を介して駐車場からセンターに送信。駐車場の精算機内には「伝送器」と呼ぶ専用機器を取り付けてあり,DoPa用通信端末もこれに接続している。

 入出庫データは,パーク24の本社や全国13拠点の支店・営業所が稼働率を分析する際にも利用する。データ・センターや本社,各拠点間に張りめぐらした社内WANには,NTTコミュニケーションズの広域イーサネット・サービス「e-VLAN」を使用。WANの高速化を狙って,2005年5月にフレーム・リレーから刷新した。

 アクセス回線は大規模拠点にはイーサネット専用線を,営業所などの小規模拠点には「Bフレッツ*」を導入している。このほか,e-VLANに障害などが発生した場合などのバックアップ用途として,インターネットVPN*を併用する。

 DoPaを介して収集しているデータには,入出庫データやクレジット決済データのほかに障害情報がある。例えば,精算機の故障などで顧客が出庫できなくなった場合は,その障害情報をデータ・センターに即座に通知。駐車場の保守を担当する子会社のタイムズサービスの担当者がISDNを介して接続された監視カメラを見ながら,遠隔操作でゲート・バーを開閉する。監視カメラを使うのは,「目視することで車にぶつからないようにするため」(川上部長)だと言う。

不通防止策が通信費アップを招く

 TONICの構築においてパーク24が最も力を入れたのは,伝送器の設計だった。DoPaを介してデータ・センターと接続する伝送器は,駐車場のオンライン化に不可欠。精算機そのものは他社が設計・開発したものだが,伝送器のようなデータ処理機能を持つ機器は,精算機メーカーには開発の経験がない。このため,パーク24が自社で設計するしか道はなかった。しかも「当初,精算機メーカーは伝送器とつなぐ精算機側のインタフェースの仕様開示に応じてくれなかったため,開発には非常に苦労した」(川上部長)。

 炎天下や大雪に対する耐久試験は問題なく終えることができたものの,実際にネットワークに接続した本試験ではクレジットカード決済ができないというトラブルに遭遇した。これは,DoPaで使う携帯電話網やクレジットカード会社のネットワークの遅延が原因。このため,セッションが途中で切れても確実にクレジット決済が処理されるよう,決済処理前後に確認処理を付加することで対処した。

 だがこの対応が別の問題を引き起こした。決済処理の前後に確認処理を加えた分,パケット数が増えて通信費が2~3割もアップしてしまったのだ。「クレジット決済に使うデータ量はせいぜい数十バイト。確認パケットのサイズがいくら小さいとはいえ,その割合は小さくなかった」(川上部長)。

 しかも2005年から急激に大型の駐車場が増えたため,通信費の増加が目立ってきた。そこでクレジット決済に流すパケットを圧縮し,1回のセッションでも切れないよう修正。通信費を抑えることに成功した。

駐車場の展開に分析ツールを活用

 パーク24にとって,駐車場数の拡大は売上増に直結する重要課題。それだけに,新しい駐車場をいかに速く展開するかが勝負になる。「更地から無人駐車場に3~4週間で変えてしまう場合もある」(川上部長)ほどだ。大半の駐車場でDoPaを使った精算機を採用しているのも,こうした展開スピードを速めるという狙いがある。

 新規駐車場の素早い立ち上げには,既存物件との比較が重要。そのためには刻々と変化する稼働率や平均駐車時間などをリアルタイムに分析できる環境が必要となる。そこで同社は2003年10月に,稼働率分析ツールのパイロット版を開発。続いて,レスポンスを高めた新システムを2005年10月に構築した(写真1[拡大表示])。データベースには「Oracle Database 10g Enterprise Edition」を,分析には「Oracle Business Intelligence」を使用する。

 ただし稼働率を分析する際,思いもよらないトラブルに遭遇した。同一時間帯に立て続けに,駐車場の出庫データが重複して送信されていたのだ。これは店舗に併設するタイプの駐車場で,店舗内に設置している事前精算機が誤動作して出庫データを送信していたのが原因だった。このため,事前精算機と駐車場内精算機の出庫データが重複してしまった。「駐車場の精算機と店舗内のシステムが複雑な連携をする場合も少なくない。しかし,こうした誤動作はまれなケース」(川上部長)と振り返る。

懸念は2012年のPDC廃止問題

 新精算機の開発やネットワーク・インフラの刷新,コンシューマ向けの決済サービスなどの「基盤構築フェーズ」は2005年末でほぼ終了した。現在は2004年から段階的に進めている「活用推進フェーズ」に移行し,他社との提携やオリジナル・サービスの拡充に努めている(図3[拡大表示])。

 例えば,関西の鉄道・バスの共通乗車カードを運営しているスルッとKANSAIと提携。後払いのICカード乗車券「PiTaPa」カードを精算機に振りかざすことで,割引料金で精算できる精算券が出てくるようにしている。一方,オリジナル・サービスとして,企業向けにキャッシュレス決済を可能にする「タイムズビジネスカード」の発行を始めた。高島屋など,現在約150社と契約を結んでいる。

 今後同社にとって最大の懸念材料となるのがDoPaの寿命だ。総務省の周波数再編計画に従い,NTTドコモは2012年までに800MHz帯のPDC*方式を廃止すると見られている。PDC方式をベースにするDoPaも,同じ運命をたどる可能性が高い。

 DoPaの後継には,FOMAのデータ通信サービスがある。ただパーク24は,そのままFOMAに移行する計画は立てていない。川上部長は「最近,無線にいろいろな規格が出てきていることもあり,有線/無線両面で検討中」としている。