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図4 3種類あるグリッド・コンピューティングの実現形態
図4 3種類あるグリッド・コンピューティングの実現形態
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図5 GGFを中心に技術仕様の標準化への取り組み体制はほぼ一本化している
図5 GGFを中心に技術仕様の標準化への取り組み体制はほぼ一本化している
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 インターネットで数百万台のパソコンを動員するという,突飛なアプローチをとるSETI@homeが脚光を浴びたため,グリッドは今なお「インターネット上の協調分散コンピューティング」というイメージが強い。しかし現在,研究や実用化が進んでいるグリッドは,インターネット上に限られるわけではない(図4[拡大表示])。

 研究者やITベンダーの間では,一般個人のパソコンを含むインターネットに接続された様々なコンピュータを対象に入れるグリッドを,「オープン・グリッド」と呼ぶ。オープン・グリッドには,セキュリティの確保が難しく,また全体としてどれだけの処理性能が得られるのかが分かりにくいといった問題がある。

データセンターに似た形態も

 そこで一般個人ではなく,企業内のコンピュータだけを対象にした「エンタープライズ・グリッド」と呼ばれる形態が生まれた(図4)。セキュリティの確保が容易であり,どの程度の処理能力が得られるのかを見込みやすいのがメリットだ。

 ただしエンタープライズ・グリッドといっても,いくつかの段階がある。最も小規模なのが,研究開発部門や事業部など特定部署のコンピュータだけを対象にしたもの。それが発展すると,一般従業員のパソコンまで含めた全社レベルのシステム構成になり,さらにグループ会社や協力会社にまで範囲が拡大する可能性がある。協力会社を対象に入れる場合は,「パートナー・グリッド」と呼ぶこともある。

 そして3番目が,サービス事業者が介在する「サービス・グリッド」。データセンターと似ており,サービス事業者が保有する多数のサーバー機を,必要なときに有償でユーザーに貸し出す仕組みである。

 従来のデータセンターではユーザーごとに使うサーバー機を固定しているのに対して,グリッドでは全ユーザーでサーバー機を共用する形になる。ユーザーの必要に応じて動的に,割り当てるサーバーの台数を変えるわけだ。ただしサービス・グリッドの実施例は,今のところ存在しない。

 サービス・グリッドとオープン・グリッドを組み合わせた形態も考えられている。例えばISP(Internet Service Provider)が利用料金を割り引く代わりに,顧客に各自のパソコンの処理能力を提供してもらうといったビジネスモデルだ。一般企業や研究機関も,処理能力の提供元になる可能性がある。

デファクトに近い「OGSA」

 どの形態をとるにせよ,グリッドを実用化するうえで必要になるのが,技術の標準化である。というのも異機種,異OSが混在するヘテロジニアスな環境の中で処理を分散するには,それぞれの機種やOSに合わせたプログラムを用意しなければならない。処理対象となるデータの物理的な格納方法もまちまちであるため,データ変換も頻繁に発生してしまう。SETI@homeのような特殊目的ならともかく,用途拡大にはこうした点の標準化が欠かせないのだ。

 その動向を知るうえで押さえておくべきキープレイヤーの1つが,米IBMと手を組んだグローバス・プロジェクトである(図5[拡大表示]左)。これはグリッド技術の研究開発を手掛ける草分け的な組織。グリッド・システムの構築ツールである「Globus Toolkit」を開発し,オープン・ソースとして無償配布している。

 Globus Toolkitは,アクセス権限の設定やユーザーの認証などセキュリティ管理,ワークロードやリソース管理,ディレクトリ・サービス,データ管理といった機能を持つ。例えば複数のコンピュータ間でデータを受け渡す処理を行うためのAPI(Application Programming Interface)を実装する。

標準化は「GGF」が中心

 もう1つは,「グローバル・グリッド・フォーラム(GGF)」。定期的に開かれるグリッド技術に関する話し合いの場であり,世界中から研究者やITベンダーが参加する。

 標準化に関しても最も重要な役割を果たしているのがこのGGFであり,IBMとグローバス・プロジェクトが共同でグリッドの技術仕様「OGSA」を提案したのもここだ。

 現時点でGGFにおいて「OGSA」は標準仕様として認められていないが,グローバス・プロジェクトが今年から2003年の間に発表する予定である「Globus Toolkit 3.0」をOGSAに対応させることから,「デファクト・スタンダードに最も近い」(グリッド総合研究所の西代表)との見方が有力だ。日本IBMの野村部長は,「ITベンダーによる独自技術が先行し,その一部をOGSAに取り込んでいく形になるだろう」と見ている。

(中山 秀夫)