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◆今回の注目NEWS◆

◎「重点計画-2006(案)」に関するパブリック・コメントの募集について(内閣官房IT担当室、6月1日)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/pc/060601comment.html

【ニュースの概要】IT戦略本部は6月1日、「重点計画-2006(案)」を公表し、パブリックコメントの募集を開始した(6月30日正午必着)。「重点計画-2006」は、1月に策定された国家IT戦略「IT新改革戦略」を実現するための、2006年度の具体的な施策である。


◆このNEWSのツボ◆

 「IT新改革戦略」は、政府の第一次基本戦略であった「e-Japan戦略(=IT基本戦略)」の後を受けて、本年1月19日に公表された、いわば政府のIT関係政策のバックボーンをなすものである。

 e-Japan戦略の時代から、毎年、このバックボーンに肉付けし、細部を固めていくための政策が「重点計画200X」、「政策パッケージ-△△」といった形で策定されてきた。その中に、具体的な法律の改正であるとか、予算の目玉になるような政策が盛り込まれ、基本戦略の具体化が行われた。例えば、電子自治体に関する共同アウトソーシングや共通基盤構築の計画も、2002年の重点計画の中に謳われたものである。

 そして今回の「重点計画2006」(案)は、IT新改革戦略の最初の重点計画となる。IT新改革戦略は、小泉内閣流の改革路線を、ITを用いて更に推進・加速していこうということに重点が置かれている。従って、この「重点計画2006」でも、当然、IT利用による改革推進に重点が置かれている…はずなのだが、正直に言うと、「総花的」な印象は否めない(実は、以前このコラムでも取り上げたように、筆者は「IT新改革戦略」自体にも総花的という印象を抱いていたりもするのだが…)。

 さて、「重点計画2006」(案)であるが、曰く「医療の構造改革」「ITを駆使した環境配慮型社会」、曰く「世界に誇れる安全で安心な社会」「世界一安全な道路交通社会」「世界一便利で効率的な電子行政」「IT経営の確立により企業の競争力強化」…。何となく各省庁の政策の博覧会のような印象を受けるのは筆者だけだろうか?

 一例として、医療を取り上げてみたい。掲げられている施策は、「情報化のグランドデザインの策定」、「情報化のための共通基盤の整備」「医療機関の医療情報連携の促進」「医療・健康情報の全国規模での分析・活用」「レセプトオンライン化」などが掲げられている。しかし、医療分野でのIT技術の活用や、レセプトのオンライン化などは、10年以上前から言われていたはずである。何となく、ここに掲げられている政策は、過去に言われてきたことを改めて整理して並べてみました(逆に言えば、今まで進んでいなかった分野の施策を展示してみました…)という印象すら受ける。

 今回の重点計画で大きく取り上げられている医療や安全、行政、教育といった分野は、以前からIT活用の効果が唱えられ、推進が図られてきた分野である。ところが、これらの分野でのIT活用は、製造や金融、サービスといった純粋な民間分野に比べると、その効果が明確な割にIT利用が進んでいない。これは、やはり競争が存在せず、現状固定への執着が強い……ということの裏返しでもあろう。

 医療や教育のように「現状のやり方でも一定の顧客(?)と収入(?)」が確保されている場合、ITを利用して改革を進めようとしても容易ではない。単純にIT導入、ITによる改革を進めようとしても、様々な抵抗が生じやすい。その意味では、これらの分野で、どれだけ「重点計画2006」が進められるかが、小泉改革がどのくらい「実質的な改革」を進められたかの証左となるかも知れない。

(この項次回に続く)

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

東京大学経済学部卒。通商産業省(現 経済産業省)に22年間勤務した後、2000年7月に同省を退職。同年8月にコンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はウッドランド社長、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営コンサルティング、IT戦略コンサルティングまで幅広い領域で活動する。