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 前回は,バーンダウン・チャートの考え方と,その基となる残時間進ちょくについて解説した。今回は,実際にデイリー・バーンダウン・チャートを使ってどのようにプロジェクトを進めていくかを解説したい。

 デイリー・バーンダウン・チャートを作成するのに一番簡単な方法は,作業をタスクかんばん方式で管理することである。この場合,イテレーション初日の時点での見積もり時間の合計がチャートの起点になる。以降は,1日の作業が終了した時点で,「Doing」にあるタスクについて,開発者に「あとどのくらいの時間がかかりそうか」を聞き出してDoingのタスクの残時間を算出する。これにTo Doにある未着手のタスクの見積もり時間を加算したものがその日の残時間計になるので,チャート上にプロットすればよい。イテレーションの途中でタスクが増えたりした場合は,見積もりに時間を上乗せしても構わない。

 TRICHORDチームでは,以前はExcelで計算したものを壁に張ったチャートに手書きでプロットしていた。現在は,TRICHORD自身がデイリー・バーンダウン・チャートを表示する機能を備えているのでこちらを使用している。手前ミソではあるが,非常に簡単にチャートが書けるので重宝している。


図1 TRICHORDの画面
画面上部が「タスクかんばん」。画面下部の「イテレーションバーンダウンチャート」がそれに対応するバーンダウン・チャートである。

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 バーンダウン・チャートの優れた点は,収集する情報が「残時間」だけというシンプルさと相まって,チャートからもシンプルかつ直感的な情報が引き出せる点だ。まず最初の合計残時間から,ゴールの日付の残時間ゼロまでの直線を描くことで,ゴールまでの理想線が引ける。最初の合計時間が変化しない場合は,この理想線と実績をプロットした実績線の位置関係,つまり理想線よりも下(予定より進んでいる)か,上(遅れている)かを見れば,予定通りに終わりそうか,そうでないかが分かる。


図2 理想線と傾向線
緑色の線が理想線,青色の線が傾向線である。

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 しかしイテレーションを実施する途中で予定外のタスクが増えていくと,開始時点で引いた理想線はあまり意味をなさなくなる。この理想線はあくまでも「当初の作業量」を前提とした理想的な線に過ぎないからだ。このような場合は,途中途中の残り時間の減少傾向を線の傾きとしてとらえて,「このまま進むと期日までに終わるか,終わらないか」を見るのがよい。この線を傾向線と呼ぶ。

 理想線,傾向線いずれを用いても,線の傾きを見ることで期日までに作業が終わりそうかどうかは比較的早い段階で判明する。図2はTRICHORDチームの実際の開発のデイリー・バーンダウン・チャートだ。(このチャート自身もTRICHORDで作成している)。TRICHORD開発チームの場合はイテレーションを一週間(正確には4日)としている。図で取り上げた週は,1日目にして大幅に遅れていることが分かる。そのため,2日目を終えた時点でスコープ調整,つまり優先度の高い要求を残し,優先度の低い要求を対象外とした。

 スコープの調整を行うには,できるだけ早く現状を把握し,今後の見通しを立てる必要がある。デイリー・バーンダウン・チャートは,「イテレーション内で作業が終わるかどうか」の見通しを立てる際に非常に役に立つはずだ。ぜひ利用してみてほしい。

懸田 剛

チェンジビジョンでプロジェクトの見える化ツール「TRICHORD(トライコード)」の開発を担当。デジタルなハックと,アナログなハックの両方を好む。新しいやり方やツールを考えるのが好きである。個人サイトは http://log.giantech.jp/