PR
写真1 「通信・放送の在り方に関する懇談会」の座長を務めた松原聡東洋大学教授
写真1 「通信・放送の在り方に関する懇談会」の座長を務めた松原聡東洋大学教授
[画像のクリックで拡大表示]

 竹中平蔵総務大臣や片山虎之助自由民主党参院幹事長などが6月20日に合意した「通信・放送の在り方に関する政府与党合意」では,焦点となったNTTの組織問題について,「『2010年の時点』で検討を行い,その後速やかに結論を得る」と明記されている(関連記事)。この政府与党合意の内容が,7月上旬にまとめられる経済財政運営の基本方針「骨太方針」に反映される。

 竹中総務大臣は6月6日にまとめた「通信・放送の在り方に関する懇談会」(竹中懇談会,座長は松原聡東洋大学教授)の報告書で,NTTの組織見直しの議論を「『2010年には』通信関連法制を抜本的に見直すため,検討を速やかに始めるべき」と提言した。一方で自民党の片山参院幹事長が委員長を務める「電気通信調査会 通信・放送産業高度化小委員会」(片山委員会)は,NTTの組織問題について,「『2010年ころ』に検討するべきだ」と主張。NTTの在り方に対する意見が乖離(かいり)していた。

 竹中懇談会と片山委員会の終了後も続いていた調整を経て,今回ようやく合意に至った文章で両会合の見解は「(NTTの組織問題については)2010年の時点で検討」という表現に集約された。

 そこで以下に,合意がまとまる前の6月13日に実施した松原座長へのインタビューを掲載(写真1)。座長本人が語る,竹中懇談会が打ち出した結論の本質と,そこに至るまでの経緯を公開する。

-----------------------------------------------------------------

——半年間にわたった懇談会が終了した。最終報告書を自己評価すると。

 国民生活に密着しており成長産業でもあるから,通信・放送インフラに対するしっかりとした将来像,改革の道筋を示すのが私の任務だと思っていたので,大きな緊張感と責任感の中でやってきた。結果的にいい議論ができたと思っているし,ほぼ満足のいく結果が出せたと思う。

——1月の会合では金融ビッグバンになぞらえて,通信と放送のビッグバンを起こすと発言したが。

 この分野の法律は,総務省の中だけでも9本ある。通信と放送の政策基盤が縦割りである証拠だし,うまく整合性が取れていない。これはレイヤーごとの横割りの規制に直すべきで,これこそ通信と放送の融合でありビッグバンだと考えていた。

——懇談会全体の印象だが,NTTやNHKという各論の中に入り込んだように思える。

 検討の深さや表現に差があるのでそう見えるだけだ。先の法体系の部分だが,最終報告書では横割りの部分を「伝送」,「プラットフォーム」,「コンテンツ」というレイヤー区分に置き換え,これに対応した法体系にすべきとしている。これをブレークダウンすればよかったのではという指摘だと思うが,それはその通り。NTTとNHK以外で掘り下げるなら,この部分だったのは事実。だが問題が大きすぎ,細かく具体的に述べることはできなかった。しかし,問題提起はしっかりとしたつもりだ。NTTとNHKの在り方は各論だが,きちんとメスが入った。

——NTTの在り方に関しては,終盤になって記述にブレが出てきた。

 そんなことはない。最終報告書の中で明確に,まず機能分離と書いたではないか。議論のプロセスの中で,どう進めるかというスタンスから,ゴールをどういうイメージで描いていくかというスタンスに切り替えたため,そう見えただけだ。

——NTTの資本分離は不可避だと。

 もちろん。だからそう書いた。だが多分に誤解もあると思う。これはNTTを分割するための資本分離ではなく,NTTを自由にするための措置だ。

 なぜなら資本分離は,NTT法の廃止とセットだから。NTT法の廃止は実は決定的で,東西会社に課せられている業務分野規制を撤廃するということ。つまりバラバラにするのではなく,逆にフリーハンドを与えるわけだ。NTTだって,業務分野規制の撤廃を求めているではないか。

 とはいえ,NTT各社が再統合して,旧電電公社のような独占的な企業になっては困る。有効で公正な競争が維持されなければならないので,報告書でも「なお,NTT東西については,ボトルネック性が明らかに解消されない限り,両社間及び両社とその他の事業者の間の合併・統合等は公正競争の観点から認められるべきではない」と明記している。

——報告書の内容は今後,どういう形で担保されていくのか。

 報告書での提言は,総務省に対して「検討体制・工程などを具体化し,速やかに公表する」ように示してある。だから総務省はやらざるを得ないし,我々はその進捗状況を明らかにするよう指示した。官僚の世界では,「速やかに」とは数カ月以内のことだ。最終的には,政府の「骨太方針」の中に盛り込まれることが一つのゴールとなる。

 議論の最後の段階で譲れなかったのは,最終報告書に「実施は2010年」と書き込むこと。「2010年に検討開始」となると,実行時期は2014年や2015年にもなってしまう。NTTの在り方などでは,私はかなり柔軟かつ謙虚に考えてきたが,実行時期だけは絶対に譲る気はなかった。