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 沖電気工業が井筒まい泉から、携帯電話を使ったASPサービス型の出退勤管理システムを受注した。想定外だった顧客に出足が遅れた案件で、出直しの受注にこぎ着けた。

=文中敬称略


 「危うく大きなチャンスを見逃すところだった」──。沖電気工業情報通信事業グループインキュベーション本部UBIOSチーム営業チームリーダの日後勝徳は2006年2月、井筒まい泉への2度目の訪問を終え、出退勤管理ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)サービス「UBIOS-LT」の商談継続が決まったことに、ほっと胸をなでおろした。

 1月の初回訪問は、確たる手応えもなく終わっていた。そのため、営業活動の優先順位をそれほど高く考えておらず、商談フォローの電話をするまでに、1カ月もたってしまった。だが、井筒まい泉の要件は、UBIOS-LTがぴったり合うものだった。日後は、商談の重要性を改めて認識し、井筒まい泉を後にした。実は、この商談を受注できれば、想定していなかった新たな顧客層へ切り込む格好のモデルになる、そんな案件だった。

 井筒まい泉が百貨店の地下食品売り場などに展開する、とんかつや惣菜などの販売店は現在39店舗。店舗スタッフは300人に及ぶ。同社はもともと、会計事務所に出退勤データの入力や給与計算を委託していた。それを、2006年6月をめどに自社での給与計算に切り替えることにした。

 従来店舗スタッフは、タイムカードに出退勤時刻を手書きで記入し、店長が承認した上で東京の本社に郵送して給与計算を行っていた。郵送にコストや手間がかかるほか、委託していたデータ入力作業も、今後は自社でやらなければならない。これらの負担を軽減するため、新たな出退勤管理システムを導入することにしたのだ。

 2006年1月、井筒まい泉業務管理グループグループ長の佐藤正喜は、Webサイトで沖電気のUBIOS-LTの情報を見つけ、プレゼンを依頼した。日後は連絡を受けて2日後には井筒まい泉を訪問した。

 当時、日後は人材派遣会社を中心に、UBIOS-LTの営業活動を展開していた。携帯電話を使って出退勤の記録を入力し、GPS(全地球測位システム)情報や基地局情報から所在地も記録できるので、管理対象者の移動が多い企業、特に、派遣会社に向くと考えていた。つまり、井筒まい泉のような店舗を持つ小売業は、潜在顧客として想定していなかったのだ。  それもあって日後は、佐藤に必要以上の売り込みをしようとしなかった。実際、初回の訪問は、UBIOS-LTの説明が中心で、出退勤管理見直しの件こそ告げられたものの、具体的な課題や要件は、あまり聞くことができなかった。そして日後はプレゼンの最中も「タイムレコーダーを置けばよいのではないかと感じていた」のだ。




本記事は日経ソリューションビジネス2006年6月30日号に掲載した記事の一部です。図や表も一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。
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