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 自動車業界では今,にわかに表面化した米ゼネラルモーターズ(GM)と日産-仏ルノー連合との資本提携が大きな話題になっている。

 この提携は,業績低迷に苦しむGMの起死回生策として,同社の大株主である投資会社がGMに働きかけたもの。この提案をGMが受け入れるかどうかはまだ分からないが,もう一方の当事者であるカルロス・ゴーン日産社長(兼ルノーCEO)は,提携に向けて協議を進めることに前向きな姿勢を見せているといわれる。

 トヨタ自動車の強さばかりが目立つ自動車業界だが,今なおGMは世界最大の自動車メーカーである。今回の提携話をIT業界にたとえれば,欧州と日本の,それもトップ・メーカーではない企業同士の連合に,米IBMが助けを求めようとしている,ということになるだろうか。それを考えると,自動車業界でここ数年続いている再編劇のダイナミックさに驚かされる。

 ・・・と書いてきて,よくよく考えると,IT業界でもこれまで,以前では全く考えられなかったような企業同士の合従連衡(がっしょうれんこう)や経営統合などが相次いで行われてきたことを,記者はつい忘れてしまっていることに気がついた。

 例えば米ヒューレット・パッカード(HP)。同社は2001年に米コンパック・コンピュータを買収したが,そのコンパックは,まだ“パソコン・メーカー”というイメージの強かった1997年に米タンデムコンピューターズを,そして1998年に米ディジタルイクイップメント(DEC)を次々に買収して,巨大メーカーへと変身を遂げた。

 今でこそ実感のわかない読者が多いかもしれないが,かつてのタンデムやDECを知る者にとって,1980年代に誕生した歴史の浅いパソコン・メーカーが両社を買収したことは文字通り衝撃的だった。特にDECは,かつてはIBMと並び称される“コンピュータ業界の巨人”だっただけに,当時は多くの業界関係者がこの買収劇を感慨深げに語ったものである。そして,この2社を飲み込んだコンパックも,もはやIT業界に存在しない。

 こうしたメーカー同士の大規模な再編劇が起きたときに気になるのは,ユーザーへの影響だ。

 自動車メーカーにしてもコンピュータ・メーカーにしても,提携や経営統合の大きな狙いとして,プラットフォームや部品の共通化による開発・製造の合理化とコスト削減がある。その点は共通しているが,ユーザーの視点でメーカー同士の提携や経営統合を見ると,両者には大きな違いがある。IT業界では,ユーザー企業がこれまで特定のメーカーの製品や技術に依存して構築してきたシステム資産をどうやって維持・拡張していくか,という切実な問題が生じるからだ。

 IT業界では今後も,こうした大規模な再編劇が起きる可能性は十分にある。その際に,ユーザー企業のシステム資産が十分に考慮される保証はない。

 だとすれば,情報システム全体のアーキテクチャを見直すか,オープン・ソースの採用を進めるか,SOA(Service Oriented Architecture)を導入するか,といった手段はさておき,ユーザー企業としては今後,ますます「変化への対応」を最重要の要件としてシステムを構築していくことが,最大の防衛策になりそうだ。