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 米Microsoftは米国時間7月5日,Office次期版(2007 Microsoft Office system,以下Office 2007)の文書ファイル形式と,OpenDocument Format(ODF)の間でファイル変換を行うツールを開発するプロジェクトを立ち上げると発表した( 米マイクロソフト、Office 2007のODF対応を発表)。記者は,この発表を目にしてどう評価すべきか,少し考えてしまった。ツールが提供されること自体はユーザーにとって喜ばしい話である一方,Microsoft自身が正式に対応しないこともほぼ確実になったからである。

 ODFは,米Sun Microsystemsなどが提唱するXML形式のオフィス文書用ファイル・フォーマット。今年5月にISO/IECが標準として承認したことで,今後日本でも政府,自治体などが調達基準として採用するケースが出てくると予想される。

 一方,Microsoftは2005年6月に,Office 2007でMicrosott Open XML Formatと呼ぶXML形式のオフィス文書向けファイル・フォーマットを導入することを発表している。Open XML Formatは,Office 2007における標準のファイル形式であり,.docや.xlsといったこれまでのOfficeのファイル形式と100%の互換性を持つのが特徴だ。Microsoftは2005年11月に同ファイル・フォーマットを標準化に向けてEcma Internationalに提出しており,現在標準化作業が進んでいる。

 米Microsoftのプレスリリースには,Office Open XML FormatとODFの間で“双方向”の変換を行うツールを開発するとある。だが,いったんOpen XML FormatからODFへと変換した後で,再びOpen XML Formatに変換したときに,100%元に戻ることはあまり期待できない。.doc,.xlsなどMicrosoft Officeのバイナリ・フォーマットはアプリケーション内部でのデータの扱い方をそのまま反映しており,Open XML Formatもそれを引き継いでいるためだ。

 加えて,Office 2007でOpen XML Formatをそのまま印刷した結果と,ODFに変換した後でOpenOffice.orgなどのソフトで印刷した結果が異なるケースも生じると思われる。実際,現在のOpenOffice.orgとMicrosoft Office 2003の互換性はかなり高いものの,改行位置などが変わるために印刷結果が崩れるのを見かけることがある。Officeのバイナリ文書形式やOpen XML Formatは,「どこで改行するか」といった情報を含んでいないため,アプリケーション側のレンダリング・アルゴリズムが違えば印刷結果も違ってしまうのである( 徐々に姿を現すOffice次期版,注目を浴びるXML文書形式の採用)。

 結局のところ,Office 2007ユーザーは,ほかのソフトとのデータ交換や官公庁への提出など,必要なときだけODFに変換し,自分のパソコンにはOpen XML Formatで保存することになるだろう。さもないと,ファイルを修正しようとしたときに問題が発生するリスクがあるからだ。こうした,複数のファイル形式がいずれも“唯一の標準”の地位を占めることなく共存するのはそれほどめずらしいことではない。ただ,オフィス文書ファイルの場合は,数が多いことや扱うユーザーのスキルをあまり期待できないことなどから影響が大きくなる。

 Microsoft自身がODFを正式にサポートしたからといって,100%互換になるのかと言えば,疑問が残るのも事実。ただ,ODFのサポートを重視する政府/自治体に今後もOffice 2007を採用してもらおうとするなら,Microsoft自身が責任を持ってサポートするのがスジという気もする。互換性確保のため,変換ツールではなくアプリケーションそのものを変更できるのもMicrosoftだけである。Office 2007の出荷を遅らせてまで対応してほしいとは言わないが,せめて次のバージョンアップでは正式な対応を望みたい。