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 筆者は先日,新しいサーバーのセットアップ中に,ハードウエアはあるのにWindows Server 2003のライセンスが無いことに気付いた。ディスカウント業者のWebサイトをのぞいてみると,Windows Server 2003 Standard Editionには600ドルの値段が付いている。これはやはり大きな出費だ。何か良い方法はないだろうか。そんな時に,受信トレイに広告メールが届いていたことを思い出した。そのメールにはなんと,「OEM版」のWindows Server 2003が,たったの69ドルで売られているとあったのだ。

 でも,ちょっと待て,と筆者は思った。こんな美味しい話があるはずがない。しかし,こんなにも多くの業者がこの種の値引き商品を宣伝していることを考えると,完全な違法行為というわけでもなさそうだ。OEMソフトウエアのWebサイトを見ても,合法的なものであるように思われた。ほとんどの単語も正確に綴られているし,該当商品がなぜこうも安いのか説明するFAQページもあった。

 そのFAQのその説明によると,これはダウンロード販売のソフトウエアなので,パッケージ(箱)にお金を払う必要がないから安いのだという。また,ベンダーによる電話サポートが無いのも安い理由だとしている。

 しかしそもそも,MicrosoftがWindows Server 2003を発送するときも,プラスチックの板が入った段ボール箱を送るだけである。箱にはCDが2枚と,ライセンスが印刷された紙が入っているだけだ。この業者は,このパッケージにMicrosoftが何百ドルもかけているというのだろうか。それにWindows Server 2003に関しては,Microsoftでさえ無料の電話サポートを提供していない。つまり業者の説明はデタラメである。

怪しげなOEMソフトウエアの正体

 筆者のメールボックスには毎日,あらゆるソフトウエアを信じられない値段で売ると宣伝するスパム・メールが届けられる。そして月に数回,筆者は読者から「この広告は本当か,それとも詐欺なのか」という電子メールを頂く。そろそろ真相をはっきりさせるべきだと感じてる。そこで筆者は今回,米MicrosoftのUS Anti-Piracy Enforcement Team(米国海賊行為取り締まりチーム)のマネージャであるBonnie MacNaughton氏に電話をかけて,筆者の疑念が事実に即しているのかどうか尋ねてみた。残念ながら,答えはイエスだった。

 筆者は彼女に「OEMソフトウエア販売業者はなぜソフトウエアをこんなにも安く販売できるのか?」と質問した。「簡単なことよ」彼女は言う。「それらのソフトは盗品か偽造品,またはライセンス違反を犯しているか,のいずれかなのよ」

 彼女の発言の真意を理解するために,ソフトウエア販売の基本をおさらいしよう。筆者がソフトウエアを使い始めてから30年間以上,ベンダはソフトウエアの海賊版問題に取り組んできた。1990年代の中頃,MicrosoftはまずプロダクトID(後にプロダクト・キーと改名)という概念を導入して,海賊行為に歯止めをかけようとした。これは読者の皆様もWindows Server 2003やWindows XP,Microsoft Officeを動作させるために入力したであろう,あのわずらわしい25文字のコードのことだ。

 残念ながら,このコードはわずらわしいことに加えて,ソフトウエアの海賊行為対策という点でも大きな効果はなかった。例えば,プロダクトIDさえ分かっていれば,好きなだけWindows 2000をインストールできたからだ。もちろんこれは,合法的な行為ではないが,プロダクトIDの再利用を防ぐソフトウエアがなかったのである。2001年になると,Microsoftはこの概念を進化させて,プロダクト・アクティベーションを導入する。このツールはより人々をイライラさせたが,プロダクト・キーの再利用ははるかに困難になった。2台のマシンで同じWindows XPやWindows Server 2003のプロダクト・キーを使おうとしても,上手くいかないのである。Windows XPおよびWindows Server 2003を,新たに1つ購入しなければならないのだ。

 しかし,これらのWebベースのOEM販売業者は全て,有効なソフトウエアとプロダクト・キーを持っているようなのだ。それらは,彼らが合法的なソフトウエアを販売しているという証拠になるのではないのだろうか。MacNaughton氏によれば,それは間違いで,それらは盗品や偽造品,あるいはライセンス違反なのだという。

ソフトウエアの真正性はメディアとプロダクト・キーで判断

 ソフトウエアには,善意の購入者に絶対に必要なコンポーネントが2つ含まれている。筆者が「善意の購入者」という表現を使ったのは,OEMソフトウエアの合法性問題を本当に気にするのは,善意のある人々だけだからである。泥棒共はこの記事に興味を持たないだろう。彼らは,Pirate(海賊) to Pirate(P2P)ネットワークを使ってソフトウエアを盗めばいいだけの話だからだ。おっと失礼。Peer to Peerの間違いだった。

 さて,2つのコンポーネントとは,ソフトウエアを成立させている実際のビット群と,ソフトウエアのアクティベーションに必要なプロダクト・キーのことである。これらのコンポーネントはどちらも,本質的に窃盗や偽造,ライセンス違反の対象になりうる。それでは,悪徳業者はどのようにしてこれらを窃盗したり偽造したりしているのだろうか。またどうすればそれを見破れるのだろうか。

 ソフトウエアが合法的なものかどうかを判定する1番目の方法は,実際のビット群がどのようにメディアに記録されているのかを調べることである。Microsoftは,物理的に区別しやすいディスク・メディアにビット群を記録することによって,ビット群を守っている。例えば,ディスク・メディアにホログラムが使用されることもある。最近のWindows Server 2003のCD-ROMを見たことがない方のために説明すると,CDは光沢のある銅色で,ホログラムを含んでいる。

 読者の皆様が盗品ではなく値引き品を探していると仮定すると,シルク・スクリーン印刷や手書きのディスクを見たら,偽造品である可能性が高いと思っていいだろう(コンピュータといっしょに出荷されるOSなどのように,ハードウエアと合わせて出荷されるソフトウエアは必ずしもこの限りではない。皆様もご存知のように,最近では多くのベンダがコンピュータのハードディスクにOSを収めて出荷し,ユーザーがリカバリーCDを自分で作成するようになっている。ただしハードウエアにバンドルされたソフトウエアは,ハードウエアと共に転売される必要がある)。

 さらに筆者の知る限り,Microsoftのようなソフトウエア・ベンダは,業者によるWindows Server 2003やWindows XPといったソフトウエアのダウンロード販売を認めていない。しかし,違法業者の中には,合法的で真正なMicrosoftのインストレーションCDを販売しているものもある。これらは輸送中に物理的に盗まれたものか,コンピュータ・メーカーの倉庫に端を発するものかのどちらかだろう。Microsoftはこの種の製品をどのようにして検出するのだろうか。2つ目の海賊行為対策を用いるのである。つまり,あのいまいましいプロダクト・キーだ。

プロダクト・キーの仕組み

 プロダクト・キーとは,新しいWindows XP導入時に入力しなければならない,あの25文字のコードのことだ。それぞれの文字は,どんな文字,数字でも構わない(1,5,0,a,e,i,o,u,l,n,s,zを除く)。そして,大文字と小文字は区別しないが,それでも考えられるプロダクト・キーの総数は「約3溝」という膨大な数になる。

 Microsoftが,そんなにも大量のWindows XPが売れると思っていないのは明らかだ。それでは,なぜこんなにも長いキーが必要なのか。それは,長い文字列がプロダクト・キーの仕組みの一部だからである。25個の数字と文字を使って考えられる組み合わせは多数あるが,Microsoftは数学的アルゴリズムを用いて,考えられる組み合わせのほとんどを不適格として除外している。これは,Microsoftが作ったキーではなく,でたらめなプロダクト・キーを適当に入力してWindows XPをインストールすることを,限りなく不可能に近くするためだ。

 盗まれたプロダクト・キーを売りつけられたときは,どのようにして見破ればいいのだろうか。まずソフトウエアを使おうとするとき,盗まれたプロダクト・キーだと,インストールはできるがアクティベーションはできないだろう。言い換えると,購入者が違法コピーを売りつけられたと気付くころには,悪徳業者は既に代金を手にしているのである。代金を返してもらえる可能性がどれくらいあるか,考えてみて欲しい。それに加えて,購入者は事実上,クレジットカードと個人情報を組織的犯罪業者(「OEMソフトウエア」業者)に渡してしまったことになるのだ。そして,こういう事態になると,そのソフトウエアは決してお買い得品でなどなかった,ということに気付くことだろう。

 もし詐欺にあってしまったら,Microsoftは助けてくれるだろうか。同社は海賊版ソフトウエアを購入してしまった人のためのプログラムを用意してはいるが,これは限定的なものだ。まず第一に,このプログラムは2005年5月以前に購入された海賊版ソフトウエアのみに適用される。そして第二に,筆者の知る限り,これはWindows XPにのみ適用される。結局筆者も,600ドルを払う以外に道は無さそうだ。