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三井 英樹

 今回は,対象ユーザーの絞り込みと,その実装方法について取上げます。

 どんなユーザー・インタフェース(UI)も,「対象ユーザー」を考慮しないことには,何もスタートしません。誰に何を届けたいのか,これが最初に考えるべきことであり,それを決めることで,サイトやアプリケーションの構造は大きく変わります。

 ユーザーを分類する方法には様々なものがありますが,一番シンプルなものを紹介しましょう。Webシステムを使うので,その操作方法への「熟知度(PCリテラシ)」という要素に注目します。そして,「提供したいサービスに対する知識」との組み合わせを考えて四つのタイプに分類します。


ユーザーの分類例
  1. PCの操作には慣れているけれど,提供したいサービスに対して知識が少ないタイプ
    (そのサービスに対する愛着がないので,不親切なユーザビリティでは使わない可能性が高い。ただし,そのサービスの魅力に気がついてもらえれば,自力で活用してくれるようになる可能性も高い)
  2. PCの操作にも,提供したいサービスに対する知識も高いタイプ
    (多少難解なシステムでも利用してくれる)
  3. PCの操作にも,提供したいサービスにも知識がないタイプ
    (未知数。操作を簡単にし,そのサービスの魅力を伝えられたなら,「大化け」する可能性がある)
  4. 提供したいサービスに対する知識はあるけれど,PC操作が不慣れなタイプ
    (PC操作が簡単にできたなら,固定ファンになる可能性が高い)

タイプ別に操作方法を切り替えられようにする

 さて,この分類方法を,前回同様「旅行」というサービスをサンプルにして具体的な例で見てみましょう。


四つのタイプを「旅行」サービスについて分類してみた

 まず,【B】の自立型のユーザーに関しては,既存のHTML型Webアプリケーションによる操作を期待できます。新たに取り込みたいのは,それ以外のユーザー層です。

 【C】の大化け型にはかなりの工夫(演出)が必要なのは容易に想像できますね。したがって,取り組みやすい【A】の仮想世界好き型と【D】のIT支援歓迎型に絞るのが得策です。

 この戦略にしたがい,日本航空(JAL)では,【A】に対して「クイックモード」,【D】に対して「簡単窓口モード」という二つの切り口を用意しています。同時に客層の拡大を図ったわけです。

 それぞれのモードが担うべき「対象ユーザー」がかなり異なる特性を持っていることは明らかなので,それがどのようにUIに影響しているのかを見てみます。「簡単窓口モード」は,基本的にウィザード方式であり,一画面に対して一つの質問で構成されています。一方「クイックモード」は,PC操作に熟知している人を対象にしているので,多くの機能を一つの画面にコンパクトに格納しています。下図は,その結果生じる画面(View)数の差です。


JAL:ユーザーに合わせた二つのモード

 図をよく見ると,画面数だけではなく,質問の順番や入力制限などにも差があるのがわかります。最初に人数を質問し,その数だけ個人情報欄を用意したり,人数は聞かずに個人情報を入力された分だけ確保したり,と細かな部分が異なります。

 そうした違いは,もちろん設計段階で考慮されるべき事柄です。例えば「簡単窓口モード」では最初に人数を入力させるので,その人数分の席が確保されない限り,予約を確定させられません。実際には,残りの座席数を,クリックできないような非アクティブ状態で表示したりする処理がなされています。

 また,PC操作の熟知度は,何か予期せぬことが起こったときの対処法に一番現れるので,PCに不慣れなユーザーを想定している「簡単窓口モード」では,情報が複雑になりやすい「戻る」ボタンの置かれ方も異なります。基本的には,中途半端な状態に戻すことを禁じ(「戻る」ボタンがない),「最初からやり直す」というリセット型のナビゲーションが採用されています。

誰に使ってほしいのか(誰にとって「使いやすい」のか)

 最近,ユーザーを様々な視点でタイプ別に分類し,それぞれのタイプ別にマルチモードの対応をするUIが少しずつ目に付くようになって来ています。例えば,同じ機能をFlash版とHTML版に分けている場合がそうです。圧倒的な普及率を誇るFlash Playerでも,持っていない人もいれば,古いバージョンを使い続けている人もいるからです。

 提供するサービスを伝えるためには,そうした様々な状況も考えて,ビジネスゴールとしての成功を得るために,適切なユーザーにリーチできなくてはならないのです。そのためには,「誰」にとって「使いやすい」のかを,設計時点で十分吟味する必要があります。


誰にとって「使いやすい」のか

参考) RIAシステム 構築ガイド 2005年版 ( RIAコンソーシアム )


三井 英樹(みつい ひでき)
1963年大阪生まれ。日本DEC,日本総合研究所,野村総合研究所,などを経て,現在ビジネス・アーキテクツ所属。Webサイト構築の現場に必要な技術的人的問題点の解決と,エンジニアとデザイナの共存補完関係がテーマ。開発者の品格がサイトに現れると信じ精進中。 WebサイトをXMLで視覚化する「Ridual」や,RIAコンソーシアム日刊デジタルクリエイターズ等で活動中。Webサイトとして,深く大きくかかわったのは,Visaモール(Phase1)とJAL(Flash版:簡単窓口モード/クイックモード)など。