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 中堅・中小企業の市場では、IT投資意欲の上向き傾向がより鮮明となっている。データウエアハウスに加え、IP電話やERPの導入意欲も高い。年商100億円以上の企業のサーバー導入も活発である。

(伊嶋 謙二 ノークリサーチ代表)


 ノークリサーチは毎年、中堅・中小企業のIT導入実態調査を行っている。今回は2006年3月にWebや郵送でアンケートを実施した。調査対象となる中堅・中小企業は主にIAサーバー導入企業で、今回の有効回答数は931社である。

 今回の調査の結果、中堅・中小企業におけるIT市場では、投資意欲の上向き傾向が今までよりも鮮明となった。特に情報系のインフラ整備と基幹業務システムへの投資が拡大しており、IP電話システムや無線LAN、データウエアハウス(DWH)に対する関心が高い。

 しかし「戦略的なIT活用」となると、オフコン時代と比べても、あまり進歩していないようだ。ハードやインフラの部分は低価格や景気回復を背景に導入が進んだものの、実際にITを使いこなす段階が来るのは、まだ先のようである。しかも年商による中小企業と中堅企業のIT導入に対する温度差は、歴然と存在している。

基幹系は約8割と高い導入率


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図1●ITアプリケーションの導入状況
 まずは、中堅・中小企業におけるITアプリケーションの導入状況を見てみよう(図1)。基幹系の業務システムの導入率が依然として高いことが分かる。

 「財務会計」88.0%、「人事管理」81.4%、「販売管理」79.4%と基幹系業務システムの導入割合が極めて高い。「グループウエア」も59.6%と約6割が既に導入している。「IP電話」は導入率28.8%と前回より微増だったが、「無線LAN」は41.7%と着実に導入率を上げている。以下、「ERP(統合基幹業務システム)」の導入率は25.3%、「データウエアハウス」が22.9%となっている。

 「ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)」は2割にも満たない導入率だった。ASPはあまり弾みのつかない微妙なソリューションとなっているようだ。ASPでは、ホスティングなどのインフラ系ASPがメインであり、アプリケーションのASPは少ない。「売り手」のアウトソーシング展開の思惑が、中堅・中小企業にリーチしていない典型的な結果だろう。

 さらに顕著なのが10%前後の低い導入率の「CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)」「SFA(セールスフォース・オートメーション)」「SCM(サプライチェーン・マネジメント)」「CTI(コンピュータ・テレフォニー・インテグレーション)」などの、いわゆる戦略系アプリケーションだ。関心度合いも昨年に比べ若干、低くなっているようである。


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図2●注目すべきITソリューションを年商別で分析した
 中堅・中小企業全体では、結論としては基幹系業務アプリケーションと情報系アプリケーションの導入率が高く、企業のコアビジネスと連動して活用すべき戦略系アプリケーションの導入率が低いことは昨年と(実は7~8年前と比較してみても)同様で、あまり変わらない。

 さらに企業の年商別に「注目すべきITアプリケーション」の導入率をみると、より明確な違いが分かるだろう(図2)。

 例えばERPでは、年商100億円以上の企業では導入率が、31.7%だった。それが10億円未満の企業では14.0%となっており、導入率では2倍以上の開きがある。グループウエアでも、100億円以上となると77.8%、10億円未満では38.0%と同様に差が大きい。CRM、SFAも年商規模の大きさに比例して導入率は高いが、絶対値は低い。

サーバーシェアは横並びに


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図3●設置しているサーバーのメーカー別シェア
 サーバーの設置別のメーカーシェアを見ると、上位5社の動きはあまり変わらない(図3)。NECは23.0%と、過去3年トップを維持している。2番手の富士通は今回は20.7%と、前年よりシェアを高めている。3位以下では、日本IBMが17.8%と漸減している。一方で着実にシェアを高めていたデルは13.9%とやや減っており、若干勢いが止まったようにみえる。逆に日本HPが12.2%とシェアを高めている。

 ただし導入した年別でサーバーの設置シェアをみると、2003年以前に導入したサーバーでのNECのトップシェア数値が23.6%に対し、2004年以降導入では21.9%に減少し、逆にデルを除く富士通、日本IBM、日本HPがシェアを詰めてきている。市場の出荷状況から見ても、今後は上位5社の「市場占有のばらつき感」が薄まることは間違いない。つまり各社横並びになりつつあるということで、いかに差異化を明確にするかがさらなる課題になる。

ブレード型の浸透はこれから

 サーバーの導入状況をCPUタイプで分類すると、「1way」が59.1%、それにDualコア(今回から分割回答)の7.9%を加えると67.0%となり、実質的には「1way」は昨年より増え、サーバーの大勢を占めている。また「2way」は17.2%で昨年の23.7%から大きく割合を落としている。

 サーバーの形状別には「タワー型」が62.7%と圧倒的に高い。これは1wayの割合の高さとシンクロしている。また「ラック型」が33.3%と、増加傾向を見せている。ラック型はさらに増加することは間違いない。「ブレード型」は1.9%で、昨年とほぼ同じで、中堅・中小企業にはまだほとんど導入が進んでいないことが分かる。

 ただし導入した年別のサーバー導入パターンでは、2003年以前に導入したサーバーは「タワー型」が66.9%と約7割に対し、2004年以降導入したサーバーでは「タワー型」が54.8%に減少し、逆に「ラック型」が40.5%と大きく割合を高めている。ブレードは型1.2%から3.1%と高めているがまだ絶対数は少ない。

 サーバーの導入パターンでは、「全く新規に導入」が相変わらず高く47.2%と約半数を占めている。しかし過去3年の推移でみれば漸減傾向にある。逆に「別サーバーからの移行」が40.3%で主にIAサーバーからのリプレースが増えているのが目立つ。IAサーバーの追加導入やパソコンからのレベルアップは少ない。

 これを導入した年別でみると、2003年以前に導入したサーバーは「新規に導入」が52.3%、「別サーバーからの移行」が34.7%なのに対し、2004年以降導入したサーバーでは「新規に導入」が37.8%に減少し、逆に「別サーバーからの移行」が50.8%と、明確にリプレースが主流になってきているのが特徴的だ。もちろん、オフコンからのリプレースもあるだろうが、ほとんどは2000年前後に導入したIAサーバーからのリプレースだ。

サーバーの導入意向は高い


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図4●年商別に見たサーバー導入の意向
 サーバーの今後の導入予定では「具体的に導入を検討/計画している」が25.5%となり、導入意欲は毎年、確実に高まってきていることが分かる。こうした状況の裏付けとして、2005年度におけるIAサーバーの出荷が、まさに絶好調の実績と伸びを示していたことが挙げられる。情報系インフラのプラットフォームとして新規に導入され、同時に旧来のサーバーからのリプレース需要も盛んだった。IAサーバー市場は2006年度も10%程度の伸びが見込まれている。

 年商で見ると、100億円以上の中堅企業のサーバー導入意向は「具体的に導入を検討/計画している」が33.8%と際立って高かった(図4)。10~100億円未満で23.0%、10億円未満だと13.8%に下がる。景気回復の第一波は10億円未満の中小企業にはまだ「さざ波」程度のようだ。サーバー需要を引っ張るのは10億円以上、とりわけ100億円以上の中堅企業の投資意欲が旺盛だ。


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図5●サーバーを今後導入する目的
 サーバーを今後導入する目的では「システムの入れ替え」のためが最も多く、32.7%を占めている(図5)。低価格化、スペック不足などの要因もあり、現システムに問題ありと考えている企業が多いことが分かる。次いで「基幹業務の統合(ERP)・データ一元化」が30.5%と、昨年と比較すると約5ポイント上昇している。また「グループウエアなどで社内のコミュニケーション強化」が24.9%となっている。「NTから最新OSへのアップグレード」が21.9%で昨年に比べ約8ポイントダウンした。

 逆に低いのが「直接販売・営業に役立つ」「経営の意思決定に役立つ」「CRM活用」など、戦略的な活用を目的とした導入予定である。特に「CRM活用」は2.6%と大きくポイントを落としている。


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図6●年商にみたサーバーの導入プロセス
 サーバーの導入プロセスについてはここ数年、傾向はほとんど変わらない。「IT部門」が推進者となって「経営者・役員」が意思決定をするという構図はさらに顕著になりつつある(図6)。経営陣のIT部門任せは進行しているといえる。なお企業規模が小さいほど「経営者・役員」が推進者となる傾向は鮮明に出ている。

 100億円以上の企業は82.3%が「IT部門が推進者で、購入の意思決定は経営者・役員が行う」と回答しているが、10~100億円未満では66.0%、10億円未満だと48.0%となる。逆に10億円未満では29.1%と約3割は経営者・役員がシステムの推進に携わる。

サーバOSの8割以上はWindows


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図7●利用サーバー数でみたサーバーOSの種類

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図8●Linuxの利用実態

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図9●Linuxを使うつもりがない理由
 サーバーOSの状況を利用サーバー数で見ると、「Windows 2000」が39.2%、次いで「Windows 2003」が25.9%、そして「Windows NT」が18.8%と続く(図7)。WindowsはNT、2000、2003を合わせるとシェアは8割を超える。昨年25.5%だったWindows NTは18.8%となり、Windows 2003が25.9%と昨年に比べてシェアを高めている。着実にNTからWindows 2003へのリプレースが進んでいることが分かる。過去3年の推移で見ても、Windowsのシェアの高さは、中堅・中小企業のサーバーOSのデファクトスタンダードとして定着した。

 一方「Linux」は、5.5%で、昨年の6.6%よりも下回っている。しかもLinuxはここ3年の推移でもほとんど変化がない。むしろLinuxは停滞気味もしくは漸減傾向とさえ言える。

 実際、OSS(オープンソースソフトウエア)ブームの先鋒であるLinuxへの関心は今ひとつだ(図8)。企業全体としてのLinux利用率(企業全体で1台でも使っている)では24.8%となっているが、前年より利用率は下がっている。今後の導入予定でも、「使うつもりがない」が59.7%と過半数を超えており、昨年の56.2%と比べて高くなっている。

 その理由として最も多かったのが、「社内に分かる人がいない」ことだ(図9)。実に57.3%と約6割にも上った。次いで「サービス/サポートが不安」が37.2%、「今使用しているOSに満足している」は36.3%になっている。以下「実績が少なく不安」(26.1%)、「アプリケーションが少ない」(20.3%)と続いた。今までオフコンやWindowsで受けていたサービス/サポートがLinuxでも受けられるのかどうかという不安は、ユーザー企業にとって利用をためらう大きな不安材料となる。「今使用しているOS=Windowsに満足している」が36.3%と「Windowsのほうが良いと思うから」の19.0%はほとんど同じことを語っているだろう。つまりWindowsを高く評価しているということを意味している。

 「実績がなく不安」(26.1%)、「アプリケーションが少ない」(20.3%)ことも課題だ。Linux用アプリケーションを自社開発できる技術力を保有したユーザーなら問題は少ないが、導入事例や対応するアプリケーションの数が少ないことはLinux普及の大きなボトルネックとなっている。

調査の概要
2006年3月に全国の中堅・中小企業に対してWebや郵送でアンケートを実施し、 931件の有効回答を得た

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2005年の調査結果はこちらをご覧ください。


■伊嶋 謙二(いしま けんじ) ノークリサーチ代表
1956年生まれ。矢野経済研究所を経て1998年に独立し、ノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査、コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析に注力している。