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 中国やインドのソフト開発会社が台頭する中で、システム開発の価格低下に悩む日本のソフト開発会社は勝ち抜く策を見つけ出せるのだろうか。日米IT業界の調査・研究を続けている米MIT(マサチューセッツ工科大学)のマイケル・クスマノ教授は「サービスで差別化を図ることと、自前のパッケージ製品を持つこと」がカギを握るとみている。経営情報学会などが主催したセミナーで語った。

 IT業界は、あらゆる意味でサービス化の時代に向かっている。保守やシステム開発という従来型のサービスに加えて、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)などオンデマンド型のサービスが増加する傾向もある。こうした中、クスマノ教授は「サービスの時代になれば、日本のソフト開発会社が(世界の)リーダーシップを発揮できる可能性がある」と話す。

 欧米企業のソフトビジネスはパッケージソフトの開発・販売に重点を置いているのに対し、日本はもともとシステム開発・運用といったサービスに重きを置いてきた。だからサービス化の時代には、大いに強みを発揮できるようになるというのだ。

 もちろん、まだリーダーにはなっていないし、現状に満足している部分もある。これまでのシステム開発・運用を生かした新たな事業展開を探し出せないでいるのが現状だろう。この状況を打ち破るには、「強いリーダーシップを持ち、マーケティング力、セールス力、人材育成などに投資をしていくこと。さらに重要なのがサービスの研究・開発をもっと推進していくことだ」とクスマノ教授は指摘する。

 実はパッケージソフトに力点を置く欧米企業もライセンス収入より、付帯する保守などサービス収入の比重が高まってきている。「サービスは製品(パッケージソフト)の5倍の売り上げに達している」(クスマノ教授)という。パッケージの売り上げが伸び悩む要因としては、価格低下や新規顧客の開拓が進まないことなどが考えられる。オープンソースソフトの普及やソフトのコモディティ化によって、今後は価格が限りなくゼロに近づいていくかもしれない。

 「技術が成熟すると、サービスの機会が増える」とクスマノ教授が語るように、今後のソフトビジネスはパッケージソフト会社でさえサービス化へシフトせざるを得ず、サービスでいかに高収益を確保できるかが経営上の大きな課題になる。そうした点は既に米オラクルや独SAPなど有力パッケージソフト会社の業績にも表れている。もちろん、パッケージソフトのライセンス収入がほとんどというケースもあるが、ベストセラーとなるようなパッケージソフトを作るのは難しい。今後はライセンスとサービスのバランスを保つ、いわばハイブリッド型の経営スタイルがパッケージソフト会社でも増えるのではないだろうか。

 ただし、それでも安閑とはしていられない。「今後はサービスでさえ品質の競争になる」とクスマノ教授は予想する。品質が日本企業の強みだが、中国やインドの企業も大幅に品質を強化しているからだ。日本企業は、もっとサービスを向上させて差異化を図る必要がある。そうしなければ、中国やインドの企業が本格的に日本市場に進出したとき、生き残りが難しくなるだろう。

 日本のソフト開発会社では2005年度の業績発表会が相次いだが、「人さえ確保できれば、売り上げをもっと伸ばすことができた」と語る経営者も多かった。しかしソフト(製品)がサービス化する時代を乗り切るには、人月ベースに頼るよりサービスのブランド力を高め、効率的にサービスを提供する仕組み作りにこそ取り組むべきだろう。ブランド力の向上は価格低下を抑制させる効果もある。自社製品の開発体制も、もっと工夫すべきだ。「セミプロダクト的なもので再利用できる部品をベースにしたものにする」とクスマノ教授は言う。こうすれば製品を効率的に生産できるし、部品などを中国やインドの企業に販売することも可能になるはずだ。