PR

NTTは2005年11月9日,事実上のNTT再々編となる事業再編案と,次世代ネットワークの構築ロードマップを骨子とする中期経営戦略のアクション・プラン発表した。持ち株会社を中心に,主要事業会社が一丸となった万全の体制のように見えるが,グループの内と外に不安要素の姿が見え隠れしている。

NTT持ち株会社の和田紀夫社長(左)と有馬彰取締役(右)
NTT持ち株会社の和田紀夫社長(左)と有馬彰取締役(右)

 光3000万回線の提供に向け,グループ会社間の重複事業を一掃し,次世代ネットワークの構築体制に入ろうとしているNTT。中期経営戦略*1をぶち上げた司令塔,NTT持ち株会社の和田紀夫社長は「当初から思い描いた通りの体制ができた」と,順調な船出を強調する。

 ところが,再編案が出来上がった経緯を追うと,和田社長の物言いとは裏腹に,不穏な影がちらついている。

 ひとつはNTTグループ内からの反発である。NTTコミュニケーションズは事業再編に伴い,中核事業の変更を迫られることになった。数千人規模に及ぶ人事異動の可能性があり,現場の混乱は避けられそうもない。NTTグループのFMC*2サービスの一翼を担うNTTドコモは,従来の事業構造が根幹から揺らぎかねない変化に直面する。こうした両社が,持ち株会社の思惑通りにすんなりと動くとは限らない。

 もう一方は,外部からの圧力。様子見を続ける総務省が,次世代ネットワークに対する他事業者からの反発などの議論次第で,NTTグループに新たな規制を義務付ける恐れが残っている。

 新しい体制を作り上げ,いよいよ実行段階に入るNTTグループの中期経営戦略は,無視できない内憂外患を抱えたままスタートを切る。

次世代ネットを巡る議論の実情

 グループ内の火種の一つであるNTTコミュニケーションズは,次世代ネットワークの構築から外れ,法人営業と上位レイヤー・サービス*3が集約される(図1)。

 ただし,担当する事業を単純に移管し合うだけでは終わらない。NTTコミュニケーションズと東西NTTの間で大量の人事交換を伴うからだ。これには,「NTTコミュニケーションズは発足当時からIP技術に精通していた人材を抱え込み,グループの人事交流などでも一切手放さなかった」(NTTグループ幹部)という背景と,次世代ネットワーク担当を巡る,NTTコミュニケーションズと持ち株会社の確執が絡み合う。

図1 NTTの事業再編案
固定電話の提供形態は維持し,他の事業の重複を解消する。次世代ネットワークは,東西NTTとドコモが担当。NTTコミュニケーションズには法人営業と上位レイヤー・サービスを集約する。[画像のクリックで拡大表示]
NTTの事業再編案

 NTTコミュニケーションズが次世代ネットワークから外れた理由は,表向きには「IP化したフラットな次世代ネットワークでは,中継系の重みが減る」(和田社長)というもの。しかし内部事情を探ると,違った側面が浮かび上がる。「NTTコミュニケーションズは次世代ネットワークを担当したいという意欲と人材を持っていたが,もっと重要な資金と顧客基盤,局舎などの設備がなかった」と,NTTグループ幹部はその事情を説明する。

 検討の過程では,「再編案とは逆に,NTTコミュニケーションズがグループ内のIP系のサービスを集約し,次世代ネットワークを一元的に担当する案もあった」(NTTグループ幹部)。グループにおけるIPサービスの主導役だったNTTコミュニケーションズには,次世代ネットワークを構築するための人材も豊富。しかも東西NTTと異なり,規制に縛られる心配がない。

 だが議論の過程で,その案は消えた。決め手は基本料*4収入と顧客基盤。東西NTTは加入電話の基本料という安定収入があり,約6000万もの加入電話の顧客基盤を持っている。東西NTTが次世代ネットワークを構築し,加入電話ユーザーをそのまま移行させる戦略をとった方が,ユーザーの流出を最小限に食い止められる。

 固定電話でなく,IPネットワークを新たに構築することを強調すれば,東西NTTでも各種の規制を免れるとの目算もあったようだ。「最近の総務省は,『他の事業者ができるサービスなら,東西NTTも提供できるように認可を与える』というスタンスになっている」(NTTの有馬彰取締役中期経営戦略推進担当)。

 しかし,東西NTTに唯一,足りないものがあった。それがIP技術に詳しい人材である。