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 ノーク・リサーチでは,前回取り上げた中堅・中小企業のサーバーOS利用実態のアンケート調査の結果を受けて,WindowsとLinuxを利用しているユーザー8社を選定し,面接調査を実施した。その結果は定量調査の結論である「中堅・中小企業のサーバーOSにおけるWindowsのデファクト性」を,さらに裏付けるものだった。同時にLinuxの中堅・中小企業における位置付け=住み分けも,改めて確認された。


基幹系はWindowsが主流,Web系でLinuxが共存

 まずアンケート調査で明らかになった,次の2つの結果を説明するための面接を実施した。

■ 中堅・中小企業におけるサーバーOSはWindowsが 8割以上
■ Linuxはメール、Web系での利用が中心

 ヒアリング対象の選定にあたっては,公平な意見を聴取するためにWindows及びLinuxの双方を導入・利用中か,もしくは過去にLinuxを導入・利用経験しWindowsに戻ったユーザの2タイプをピックアップした。

【タイプA】 サーバーOSは「WindowsとLinuxを使い分けている」
【タイプB】 サーバーOSは「Windowsで統一している」
サーバーOSを「Linuxで統一している」ユーザーは,数が少なかったため面接できなかった。そのため上記2タイプとなった


サーバーOSの5つの選定要因

 面接調査でヒアリングした内容をまとめたものを以下に示す。タイプAとタイプBという2つのタイプのユーザーから,WindowsとLinuxの選定要因が浮かび上がっている。

タイプA: サーバーOSをWindowsとLinuxで使い分けているユーザー

・自社にLinuxのエンジニアを抱えていれば,Linuxの利点を引き出せる
・Linux導入のために中途でLinuxのエンジニアを採用した
・ベンダーサポートフィーが高額のため、Windowsとコストは変わらない
・Linux自社サポートを行うことでコスト削減
・Linuxのアプリケーションは圧倒的に不足している
・フリーのアプリケーションが最低限揃っているのはメール,Web系単機能サーバー
・メール,Web系単機能サーバーではLinuxの方が優れている面がある
・基幹業務系アプリケーションはWindowsが充実している
・Windowsのセキュリティ対応は迅速で評価できる

タイプB:サーバーOSをWindowsで統一しているユーザー

・Linuxを管理するエンジニアが不足しており,Linuxを専属で管理する余裕はない
・Windowsの管理は経験が豊富で,エンジニアも多いので自社で対応できる
・Windowsのサービス/サポートは評価できる
・Linuxを業務用に稼動させるには不安,不満が多すぎる
・Linuxのベンダーサポート料金は想像以上に高額だった
・Windowsはイニシャルコストが高いが,ランニングコスト,サポート料金は抑えられる
・Windowsはアプリケーションの選択肢が豊富で充実している
・Linuxはセキュリティ関連アプリケーションが充実しておらず,Windowsでは豊富に用意されている

 上記ユーザー調査からサーバーOSに関して以下の5点が選定,利用にあたっての「要点」になっていることがわかる。

1.エンジニア(技術力,技術者)
2.サービス/サポート
3.コスト(TCO)
4.アプリケーション
5.セキュリティ

 以上の定性調査から,さらに2つのポイントが浮かび上がってくる。

  1. Windowsが歴史的に培ってきた「サービス/サポート」「アプリケーション」「セキュリティ対応」「エンジニア」といったサーバー管理で重要と判断される要素に,中堅・中小企業は強く影響を受けている。
  2. Linux導入企業の動機は,メールやWebといった単機能サーバーで,フリーのアプリケーションを稼働させることによる「コスト削減」である。

 中堅・中小企業におけるサーバーOSの今後は,次のように結論付けることができるだろう。「Windowsが大勢を占める現状にLinuxが影響を及ぼす可能性はあまり高くない。しかし,コスト削減を目的にして,フリーのアプリケーションを利用する単機能サーバー用途で,LinuxがWindowsと一部共存していく可能性は考えられる」。


5つのキーワードについての面談におけるコメント

 今回の定性調査では,サーバーOSとしてのWindowsとLinuxについて,双方を対比する形で意見をヒアリングした。そうして浮かび上がったサーバーOS選定・利用に関わる上記5つの重要な要素について,面談を実施したユーザー各社の意見と分析結果を以下で紹介していく。

1.エンジニア(技術力,技術者)

【タイプA】サーバーOSをWindowsとLinuxで使い分けているユーザー

・Linuxは,「コマンドラインベースで操作出来るスキル」,「エラーの原因を究明するスキル」,「パッチなどサポート情報を収集し検証出来るスキル」など多岐に渡るスキルが要求される
・Linuxを管理するには専門のスキルが必要なので,Linuxスキルあるネットワーク系の技術者を採用した
・自社のサーバー管理者がLinuxに精通している
・技術者不足が深刻な中堅・中小企業へLinuxが浸透することはないだろう
・Windowsの管理は経験が豊富なので余裕があるが,Linuxの場合は導入時から扱いが難しい

【タイプB】サーバーOSをWindowsで統一しているユーザー

・Windowsは経験,慣れがあるので管理できるが,Linuxはスキル的に管理できない。業務用に稼働させるには不満・不安が多い。他のLinuxユーザーのように専属で管理するだけの余裕はない
・Linuxはエンジニア不足が致命的。Windowsはエンジニアの数も多く魅力的だ
・Windowsは経験上,導入から運用までを自社で対応出来る。Windowsは,標準的な知識として蓄積されているし,経験上使い慣れている

分析ポイント:今のところWindowsの管理・開発に要するスキルをスタンダードとして保有するエンジニアがLinuxよりはるかに多いことは明らかで,企業としても容易にエンジニアを確保することが出来る点でWindowsの優位は明らか。

2. サービス/サポート

【タイプA】サーバーOSをWindowsとLinuxで使い分けているユーザー

・サポート費用は,自社でサポートすることで,ベンダーサポートを受けている企業に比べ3分の2程度はTCOを削減できる。
・保守契約をしているので,サポートを頼むがベンダー側でも対応してもらえない
・自社サポートを行っているので,ハードウエアベンダーのサポート以外は受けていない
・サポートはすべて自社で行っている。高額なサポート料金を支払ってクオリティの高いサポートが受けられるとは限らない
・ベンダーと保守契約をしているが,大体のトラブルは自社で解決できる

【タイプB】サーバーOSをWindowsで統一しているユーザー

・Linuxは取引先のSIerがサポート出来ない。Windowsはパッチ提供など情報提供が豊富である
・Windows Server 2003導入時のマイクロソフトのサポートは質的に満足いくものであり評価できる

分析ポイント:サーバー管理者がWindowsについて経験豊富であり,そもそも外部にサポートを依頼する機会がほとんどない。このため,Windowsに対する意見は少ない。Linuxの場合は,サポート料金の高さに不満が集中した。また,高額な料金に見合ったサポートが受けられていない現状からも,サポートのクオリティに疑問が残る。

3.コスト(TCO)

【タイプA】サーバーOSをWindowsとLinuxで使い分けているユーザー

・WindowsのCALの体系・コストに不満があり,Linux導入によってライセンスコスト削減,自社サポートによってTCOの削減に成功
・Linuxの自社サポートを行っているので,TCOは削減できている
・Linuxの無償アプリケーション,自社サポート,これでTCO削減へと繋がる
・サポート料金が高い。カスタマイズを行ったのでバージョンアップのコストもかかる。結果的にWindowsとTCOは変わらない
・Linuxをメインで使うことになると,外部委託することになるのでサポート料金が高くなると想定している

【タイプB】サーバーOSをWindowsで統一しているユーザー

・Windowsのイニシャルコストの高さは否定できないが,導入後の満足感から言って納得できる金額だと判断している
・Linuxはライセンスコストを削減できてもサポート料金が想像以上に高く,WindowsとTCOは変わらなかった
・Windowsはイニシャルコストは高いが,ランニングコスト,サポート料金は低く抑えられる

分析ポイント:Linuxのベンダーサポート料金の高さは,タイプA,タイプBのユーザー双方で述べられている。ベンダーサポートを受けているユーザーは,WindowsとLinuxのTCOは変わらないと指摘。Linux導入でライセンスコスト削減は可能となるが,TCO削減を実現するには自社サポートは必須条件といえる。

4.アプリケーション

【タイプA】サーバーOSをWindowsとLinuxで使い分けているユーザー

・LinuxでもWeb系単機能のアプリケーションは最低限揃っているが,Linux対応の基幹系アプリケーションはほとんどない
・メール,Web系サーバーとしてはWindowsよりもLinuxのほうが優れている面がある
・基幹系アプリケーションはWindowsベースの方がデファクトとして揃っている
・アプリケーションの多くがActive Directoryの構築を前提としている

【タイプB】サーバーOSをWindowsで統一しているユーザー

・Windowsはパッケージ化された製品が多く,この点Linuxは特に乏しい
・Linux対応のアプリケーションは非常に少なく,インテグレータも提案力に乏しいため,結局自社での作りこみが必要になり,手間もコストもかかった
・Windowsはアプリケーションが豊富で選択肢の幅が広く,上層部からの漠然とした指示に答えられる

分析ポイント:業務用アプリケーションはほとんどがWindowsを前提に作られている。このことはWindowsユーザーだけでなくLinuxユーザーも認めている。Linuxのアプリケーションは,メール,Web系がそろっているという程度。

5. セキュリティ

【タイプA】サーバーOSをWindowsとLinuxで使い分けているユーザー

・Windowsではセキュリティパッチが提供されているので,それをきちんと当てていればウイルスに感染する可能性は低くなる
・セキュリティ系アプリケーションの多くがActive Directoryの構築を前提としている
・Linuxは絶対的なユーザーが少ないのでウイルスのアタックも少ない

【タイプB】サーバーOSをWindowsで統一しているユーザー

・セキュリティ関連のアプリケーションで十分対応出来る状況
・Windows Server 2003でのマイクロソフトのセキュリティ対策は評価している
・情報漏えい対策のアプリケーションがWindowsベースでは豊富に用意されている

分析ポイント:Windowsは多くの脆弱性が指摘され,コンピュータウイルスにも狙われやすいOSである。このことは,歴史的に見てもユーザー数の多さから,避けられない事実だ。だからこそ,マイクロソフトを始めとしたWindows関連ベンダーがセキュリティ対策を徹底しようとしている姿勢は,ユーザーに十分伝わっているようだ。

 なお,調査の概要をご覧になりたい場合は,第1回をご参照下さい。

■伊嶋 謙二 (いしま けんじ)

【略歴】
ノーク・リサーチ代表。矢野経済研究所を経て1998年に独立し,ノーク・リサーチを設立。IT市場に特化した調査,コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意とする。