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 5月の大地震で死者5749人,200万人以上の被災者を出したインドネシアのジャワ島で,7月17日にまたマグニチュード7.7の地震が起きた。20日の時点で死者は547人,行方不明者は323人と報告され,被害はまだ広がりそうである。

 こうした被災地の復興支援には,世界中から集められる寄付や募金が役立っている。20万人以上の命が失われた2004年12月のインドネシア・スマトラ沖地震の時など,ユニセフは日本全国から33億4000万円の募金を集めた。こうした大規模災害以外でも,難民支援や自然保護活動などの目的で,国内外の様々なNGOや関連団体が常時募金を行っている。そこで,2000年頃から普及してきたインターネットを使った募金システム,いわゆる「ネット募金」がどれくらい貢献しているかを調べてみた。

 そもそも日本は欧米などに比べて個人による寄付金がとても少ない。内閣府の推計(2002年)によると,日本における個人の寄付金総額は年間2189億円。米国の22兆円のわずか1%程度に過ぎないのである。社会保障制度の充実度や,宗教・文化的な背景の違いなどがその理由として言われているが,そもそも募金しやすい環境がないのが問題──というわけで,多くのNGOや自治体がネット募金に取り組み始めたのが2000年頃の話である。

 なるほど,ユニセフやピースウィンズ・ジャパンなど国際NGOのホームページには,クレジットカード決済やネット銀行決済によるネット募金が紹介され,トップページのバナーや本文ページのテキストにも「インターネット募金」への誘導をたくさん施している。これならさぞかしと,ネット募金の集金状況をユニセフの広報に問い合わせてみたところ,答えは芳しくなかった。「他の募金方法に比べてネットでの募金額は少ないので,数字を公表できない」とのこと。


個人向けネット募金のポータル「e-ボランティア・ネット」
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 個人向けネット募金のポータル「e-ボランティア・ネット」も募金額が思うように伸びず悩んでいる。このサイトは2001年に,70ものNGOが集まって共同で開設した。利用者は20以上のNGOから募金したい団体を選ぶことができ,「あなたの2000円が,100人の子供のはしかワクチンになります」というように具体的に募金を呼びかけている。しかし,開設当初こそ年間200万円くらいあった寄付が,現在は60万円に減ってしまった。人手不足でPRがあまりできない上に,QQQシステムによる募金決済が面倒なのだ。「小規模なNGOのネット募金にはカード会社が協力してくれない。利用者にとって使いづらいのが残念」と運営担当者はため息をもらす。

 ネット募金の一番の課題は決済システムである。数百円ほどの寄付金のために,複雑な決済システムをくぐり抜けたり,クレジットカードを登録したりするのは,かなりハードルが高い。決済を簡単にするという意味では,ヤフーや楽天などのオンラインショッピングのポータルが入口になってくれるのが近道だ。

 実際,ヤフーは遅ればせながら2004年から「Yahoo! ボランティア」の中に「インターネット募金」のページを設けている。同年10月に発生した新潟県中越地震の被災地募金を始めたのがきっかけで,2005年6月から本格的にNGOの活動支援募金をスタートさせた。最初は環境保護団体のWWFなど4団体が参加し,現在は16団体に増えている。ただ募金するのではなく,壁紙を買うという形をとっているのが面白い。募金額は300円・500円・1000円・3000円の4種類で,海外のNGOは美しい写真の壁紙を用意しているが,日本のNGOは300円と3000円では色が違うだけというのが多く,笑ってしまう。

 ヤフーのネット募金は,2006年3月末までの1年足らずで515万6000円を集め,他のNGOから見ればうらやましい限りだろうが,ヤフーの集客力をもってすればもっと増やせるはずだ。もう一つ,最初だから仕方ないのかもしれないが,規模が大きくて有名なNGOばかり参加しているあたりも気になる。小さくても質の高い活動をしているNGOはたくさんあるので,そうした団体にも公平に参加させてあげてほしい。


コスモ石油のサイト内にある「クリック募金」のページ
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 さて,企業が個人に代わって寄付をする「クリック募金」というシステムが3年ほど前に米国から日本にやってきたが,こちらは募金システムというよりは企業の広報ツールとして認められつつあるようだ。クリック募金のポータルを運営するdffによると,月間寄付額は400~500万円ほどで3年前の10倍に伸びたという。累積寄付額も2006年度中に1億円を超える見通しだ。

 「コスモ石油」は,熱帯雨林の保全や環境教育支援などの社会貢献活動を知ってもらうためにクリック募金を活用している。月間のクリック数は60万件に上り,1クリックあたり1円をプロジェクトの実施団体に寄付している。価格.comは盲導犬の育成を支援し,賃貸仲介業のエイブルは難病の子どもを支援・・・。聞くところによると,クリック募金のポータルを初期画面にして,毎朝全部クリックしてから仕事を始める強者がいるとか。自分の懐を傷めずに世の中に貢献できるのはうれしいが,ちょっと虚しかったりして?