PR

 ひと昔前までは,電話の世界は完全に通信事業者やインテグレータといった専門家のもので,興味があっても個人でテストをしたり,勉強目的で触ってみるなど夢の話だった。
 ところが,IP電話の登場によって,こうした事情は一変した。ちょっとやる気を出せば,個人でも自宅でIP電話システムを構築して自由に実験ができるようになってきた。
 とはいうものの,実際にIP電話のシステムを構築して実験環境を整えるには,SIP*サーバーやIP電話機,IP-PBX*ソフトなどさまざまな機材やツールを用意する必要があり結構骨が折れる。それでも最近はWindows用の優れたフリーソフトがどんどん出てきており,一般のWindowsユーザーでも比較的簡単に一式揃えられる状況になっている。これまで,興味はあるけど難しそうと敬遠していた人は,ここで紹介するソフトを使って挑戦してみるといい。


サーバーはOnDO SIP Serverで決まり

 まずはSIPサーバーから見ていこう。SIPサーバーとは,電話番号を管理してIPアドレスと対応付けたり,相手を呼び出してつなぐといった呼制御*処理をするために使われるサーバーだ。

 IP電話は基本的に,相手と通話している間はP2P*で直接音声をやりとりする。つまり,SIPサーバーがなくても,相手のIPアドレスを直に指定すれば電話をかけられる。ただ,すべての相手のアドレスを各ユーザーが個別に管理するのは大変なので,一般にIP電話システムやサービスはSIPサーバーを使っている。現実に即した実験をするなら,やはりSIPサーバーを用意したい。

 IP電話に不可欠な存在であるSIPサーバーだが,無償で使えるWindows向けのフリーソフトは意外と少ない。本格的なソフトで簡単に導入できるものとなると,筆者の知る限り米Brekeke Softwareの「OnDO SIP Server」(図1)しかない。

●図1 OnDO SIP Server

 OnDO SIP Serverは本来は商用ソフトだが,個人利用なら無償で使える。設定はすべてWebベース。画面表示は英語だが,単純にIP電話の呼制御をさせるだけならほとんど設定は不要なので問題ないだろう。

 仮に何か設定する必要が生じた場合でも,同社のWebページ*には日本語で詳しい情報が掲載されており,わかりやすい日本語マニュアルもダウンロードできる。個人的に実験するならSIPサーバーはこのソフトで決まりだ。

ソフトフォンは選択肢が多い

 次はIP電話機だ。個人でIP電話機を複数台持っている人などほとんどいないだろうから,IP電話を実験するに は,ソフトフォン(IP電話ソフト)の入手が欠かせない。仮にIP電話機を持っている人でも,パソコンのソフトの方がやりとりするパケットをキャプチャするのに都合がいいので,やはり入手しておいた方がよい。

 無償で使えるWindows用のソフトフォンといえば,カナダのCounterPathSolutionsが配布している「X-Lite」が有名だ(図2)。無償にもかかわらずSIPのパラメータなどを細かく設定でき,音声符号化方式も複数から選べたりする。NAT越えを実現するための技術であるSTUNにも対応しているなど,文句のつけようがないほど高機能だ。

●図2 フリーのソフトフォン3種
SJPhone
snom 360 Softphone
X-Lite

 最近では,このX-Lite以外にも,Windowsで使える魅力的なソフトフォンがどんどん増えている。SIPサーバーにうまくつながらないときなどは,ソフトフォンを替えてみるとうまくいくことがあるので,複数のソフトフォンを揃えておくとよいだろう。

アスタリスクのWindows版もある

 SIPサーバーとソフトフォンが用意できれば,相手に電話をかけて通話するという基本動作は確認できる。だが,せっかくだから保留応答や音声案内といった内線電話向け機能の実験もしてみたいという人もいるだろう。そのためにはIP-PBXソフトが必要になる。

 IP-PBXソフトといえば,オープン・ソースのアスタリスク*がこの分野では最も有名だ。アスタリスクはLinuxなどのUNIX系OSで動くソフトだが,派生版としてWindowsに移植した「AsteriskWin32」というフリーソフトがある(図3)。

●図3 AsteriskWin32とAxon Virtual PBX Software
AsteriskWin32
Axon Virtual PBX Software

 ただ,このAsteriskWin32は,UNIXソフトをWindowsで動かす「Cygwin」(p.2 6下の欄外参照)を使って移植しており,設定ファイルの構成や操作方法などはUNIX版と基本的に同じである。これになじめない人は,Windowsのネイティブ・アプリケーションである豪NCH Swift Sound Softwareの「Axon Virtual PBX Software」というフリーソフトもあるのでこちらを試してみてもよいだろう。

 このほか,下で「IP電話をより幅広くテストするためのお薦めツール」として紹介しているSTUNサーバーや音声データ暗号化ソフト,SIPのテスト・ツールなども入手すれば,より充実したテスト環境が得られるだろう。

IP電話をより幅広くテストするためのお薦めツール

STUN Client and Server library Alan Hawrylyshen氏ら
NAT越えを実現するために使うWindows用STUNサーバー・ソフト。STUNクライアントも一緒に配布されている

Zfone Philip Zimmermann氏
IP電話の音声データ(RTPパケット)を暗号化するソフト。既存のシステムにアドオンする形で使える

SIPp Olivier Jacques氏ら
SIPのプロトコル・シーケンスの確認や音声パケットの生成など各種テストを行うためのツール