PR
図7 イーサネットで信号の伝送に使う符号化方式の比較<BR>NRZ符号は1000BASE-Xで,NRZI符号は100BASE-FXで,マンチェスタ符号は10BASE5/2/-Tで,MLT-3符号は100BASE-TXで使われている。
図7 イーサネットで信号の伝送に使う符号化方式の比較<BR>NRZ符号は1000BASE-Xで,NRZI符号は100BASE-FXで,マンチェスタ符号は10BASE5/2/-Tで,MLT-3符号は100BASE-TXで使われている。
[画像のクリックで拡大表示]

 1本または1対の信号線を使ってディジタル・データを送受信するために,最終的には信号のHigh/Lowや光パルスのON/OFFといった形に変換しなければなりません。これを「符号化」といいます。この際には,半導体の性能やケーブルなど伝送媒体の特性,ノイズの低減を考慮して,できるだけ周波数を下げる必要があります。イーサネットでは,そのためのさまざまな工夫を凝らしています(図7[拡大表示])。

周波数を下げるために符号化技術で工夫

 最も基本となるのはNRZ*符号化方式です。これはデータが1のときにHigh,0のときにLowとなる方式で,1000BASE-X(光ファイバ)で使用しています。光で通信する1000BASE-Xでは,Highでダイオードが発光してLowで消光し,1と0が交互の場合が最も周波数が高くなります。1や0が連続し変化がないと受信側でクロックを再生できず問題となりますが,ギガビット・イーサネットでは事前に8B/10B変換*することで連続状態は起こらないようにしています。

 もう少し複雑な変化をするのがNRZI*符号化方式です。NRZIは,次のデータが1のとき信号がHighとLowの間で反転し,0のときは変化しません。100BASE-FX(光ファイバ)がこの方式を採用しており,Highのときダイオードが発光し,Lowのときは消光します。

 10Mビット・イーサネットの符号化方式はこれらとはやや異なるマンチェスタ符号化方式を採用しています。マンチェスタ符号化方式は,信号の変化が各ビットの中央で起こり,データ・ビットが1のときビット中央でLowからHighに変化し,データ・ビットが0のときHighからLowに変化します。この方式はビット・レートと最高周波数が一致するため,周波数をできるだけ低くするという考えには反します。半面,データの内容にかかわらず常に信号が反転するので,特別なコード変換が不要で回路を単純化できます。そのため,初期のイーサネットでは機構が簡単なこの方式を選択したようです。

 より対線を使った高速イーサネットでは,前述したノイズなどの理由から少しでも周波数を下げることが必要になります。そこで登場したのが多値情報を使った符号化方式です。

 100Mビット・イーサネットの100BASE-TXでは,High/Middle/Lowの3値を使用するMLT-3* 符号化方式を採用しています。これは,次のデータが1のときだけ,信号がMiddle→High→Middle→Low→Middleの順に変化します。つまり,最低でも1周期で4ビット分の情報を送れるように,周波数を緩やかに変化させます。この3値を5値といったように多値化していけば,さらに周波数を下げることができますが,電圧レベルの変化が少なくなるため識別が難しくなります。

究極の姿に向け変わり続けるイーサネット

 イーサネットのケーブルは,初期の太く柔軟性のない同軸ケーブルから柔らかで扱いやすいより対線へと変化してきました。10BASE5のトランシーバ・ケーブルで比較的細く扱いやすいケーブルが登場したように,より対線もさらに扱いやすく持ち運びも簡単なフラット・ケーブルが使用されるようになってきました。より対線の変化は,トランシーバ・ケーブルの末期と似た状況に見えます。より対線の時代もそろそろ終わりを迎えているようです。

 次の世代はもちろん無線LANです。無線LANが広く普及すれば,ついに私たちの周りからイーサネット・ケーブルが消滅します。イーサネット・ケーブルの消滅に続き,バックボーン回線もさらに高速化が進めば,ついに「何も意識する必要のない究極のネットワーク」が登場する日も現実的となります。

 ブロードバンドが普及進展し,まったくストレスを感じさせない通信網が出来上がり,無線LANや携帯の技術が発達し,いつでもどこでも快適な通信が実現できる究極の姿が実現したときに,通信業界はどうなっているでしょうか。

 当初は,その快適さがユーザーから歓迎されるでしょう。しかし,それが当たり前になってしまうと,健康な人が医療費を支払う必要性を感じていないように,いずれは通信費を支払うことに疑問を覚えるようになるかもしれません。

 技術が進歩し通信の究極の姿を実現したとき,通信事業には大きなパラダイム・シフトが起こるのでないかと思います。高速化の要求も煩雑なケーブル処理の改善要求もなくなったとき,イーサネットは次にどこに向かうべきか,通信の将来と併せて真剣に考えなければならない時期に来たようです。*


●筆者:岩崎 有平
アンリツ
IPネットワーク事業推進部 副事業推進部長
●筆者:福井 雅章
アンリツ
システムソリューション事業部 第1ソリューション開発部 プロジェクトチーム課長