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コンビニエンスストア大手のファミリーマートは,2007年2月までに全国7000店舗へのブロードバンド回線導入を推し進める。利用するブロードバンド回線はBフレッツ。IPv6のマルチキャスト環境も構築する。将来の新サービス提供に向けてネットワーク・インフラを刷新し,万端の準備を整える。


写真1 ファミリーマートの上條公也・次期店舗システム推進室長
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図1 ファミリーマートは全国の店舗にBフレッツを導入
ISDNと衛星通信の環境から移行する。ブロードバンド化と通信コストの削減を同時に図る。
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写真2 9月から導入する新「Famiポート」
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図2 ファミリーマートが計画している次期店舗システムのネットワーク構成
全7000店舗のうち95%にフレッツ・サービスを使う予定。NTTビズリンクのIPv6マルチキャスト配信サービスを使って動画などの配信も行う。
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写真3 CRCソリューションズの松田欣也部長(左)とファミリーマートの片村正和氏(右)
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図3 データ・センター内では各種の冗長化構成を取り,ネットワークの信頼性を高める
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 激しい競争を繰り広げているコンビニエンスストア業界。街角に多数の店舗ができた結果,一つの店舗の商圏は徐々に狭くなっている。しかし店舗の1日当たりの売り上げは落ちていないという。「それだけ周囲に住んでいる人々のニーズをコンビニが吸い上げてきた結果」。ファミリーマートの上條公也・システム本部システム運用部長兼次期店舗システム推進室長はこう語る(写真1[拡大表示])。

 顧客のニーズに応えるため,コンビニは日々進化してきた。現在では航空券の予約や電子マネーへの入金など,さまざまなサービスをコンビニの小さな店舗で利用できるようになった。ほんの数年前までは考えられなかったほど,コンビニの店頭はインテリジェンス化している。

 そしてその高度なサービス群を支えるのがネットワーク・インフラ。コンビニエンスストア業界第3位のファミリーマートは,先進的なネットワークで店舗を“刷新”するため,現在大規模なプロジェクトを進めている。それが「次期店舗システムプロジェクト」。目玉は,店舗のブロードバンド化だ。

「半歩先」のネットワークを目指す

 ファミリーマートの次期店舗では,FTTH(fiber to the home)サービス「Bフレッツ」とIPv6マルチキャスト*環境,そして,大容量データを扱うための新型情報端末を導入する計画だ(図1[拡大表示])。プロジェクトにはネットワーク構築でNTTデータが,データ・センターの構築・運営でCRCソリューションズが参加している。

 次期店舗システムの対象になるのは,国内約7000の全店舗。6月のファミリーマート南池袋2丁目店を皮切りに,順次ブロードバンド回線の導入を進める。9月からは新型情報端末の設置を開始(写真2[拡大表示])。2007年2月までには全店舗をブロードバンド対応店舗へと刷新する予定だ(図2[拡大表示])。そのため9月以降は,1日80店舗という急ピッチのスケジュールで機器の入れ替え作業を行う。

 上條室長によると,現時点でネットワークの帯域が不足しているわけではないという。しかし,コンビニでは顧客ニーズの変化が激しくなっている。「今後,新サービスを導入しようと思ったとき,即座に店舗で対応できるようにしておきたい。そのためには“半歩先”をゆくネットワーク・インフラを整備する必要がある」(上條室長)。これが店舗のネットワーク・システムを刷新する狙いだ。

ISDNからBフレッツへ切り替え

 ファミリーマートはこれまでにも,ネットワークを店舗経営に活用してきた。1990年代中盤からISDNを導入。98年からはJSAT*の衛星通信を下り専用のネットワークとして利用してきた。現在,ファミリーマートの店頭にあるマルチメディア情報端末「Famiポート」やレジのPOS*機器は,これらのネットワークを使っている。

 それを今回,100Mビット/秒のBフレッツに回線を切り換える。もっとも地域によってはBフレッツが利用できず,代替として下り最大42Mビット/秒の「フレッツ・ADSL」や「ビジネスイーサ*」,「メガデータネッツ*」などの回線を使う店舗もある。しかし「基本はBフレッツ。いずれは全店舗をBフレッツに移行させたい」(ファミリーマートのシステム本部次期店舗システム推進室プロジェクトマネジメントグループの片村正和氏,写真3[拡大表示]右)。

 Bフレッツの導入で,帯域は数十倍に拡大する。2本のISDN回線と衛星回線の利用を中止するため,通信コストと運用管理コストも下がる見込みだ。

マルチキャストで大容量データ配信

 ただブロードバンドを導入するからといって,帯域の無駄使いは避けたい。そこでファミリーマートが選択したのが,マルチキャストの利用だ。

 店舗ではBフレッツとフレッツ・ADSLへの移行に合わせて,NTTビズリンクのIPv6マルチキャスト配信サービスを導入する。これは「衛星通信の代わり。店舗数が多いのでマルチキャストが効果的と判断した」(CRCソリューションズ・データセンター事業部の松田欣也YCCサービス第2部長,写真3左)。

 ファミリーマートはネットワークを活用した店舗サポートを強化したいという考えがある。全7000店舗のうちフレッツを使う6千数百店舗に向けて,商品キャンペーン用の動画や従業員向けのマニュアルなど,大容量のデータをマルチキャストで配信する予定だ。店舗のフレッツの回線は,IPv4とIPv6のデュアルスタック構成になる。

10ギガ対応データ・センターを構築

 7000店舗とつなぐネットワークの基盤となるのは,バックボーン・ネットワークである広域イーサネットと,横浜および神戸に置かれたデータ・センター(DC)。広域イーサネットはNTT-MEの「XePhion広域イーサネットサービス」を利用する。DCは,横浜に東日本エリアの店舗向けシステムを,神戸に西日本エリアの店舗向けシステムを収容する。

 横浜のDCには,店舗運営に必要な情報を提供するポータル・サイトも用意する。7000店舗がこのポータル・サイトを見ることで,最新の商品情報などをチェックできる。

 現在,各DCは200Mビット/秒の回線で広域イーサネットに接続している。もっとも「将来の帯域増に備え10Gビット/秒まで対応できる拡張性を持たせた」(片村氏)。DCには,複数台の大規模ネットワーク向けコア・スイッチを導入。機種は米シスコシステムズの「Catalyst 6509E」である。

 DC内も今後の拡張に備えるため,コア・スイッチ層,レイヤー3スイッチで構成するディストリビューション・スイッチ層,レイヤー2スイッチで構成するアクセス・スイッチ層の3階層構成を採用した(図3[拡大表示])。このようなトポロジ*を採用したのは,ネットワーク機器の増設が容易なため。「トポロジの変更は大変。ネットワークは生き物なので今の環境が健康体でも,いろいろなシステムやコンテンツが載ると状態が変わる。基本的なトポロジを変更せずに拡張できるような構成が重要」と松田部長は語る。

徹底的なシステムの冗長化図る

 7000店舗が日々アクセスするDCは,ファミリーマートの経営の根幹をなす要素の一つ。当然,システム停止は許されない。そこでファミリーマートは,DC内の徹底的な冗長化を図った。

 まずサーバー機器やネットワーク機器は,ネットワーク経路をすべて2重化した上で現用系と待機系に分けた。「部分的には3重化している」(松田部長)という念の入れようだ。さらに最も重要なコア・スイッチは電源ユニットも2重化。冗長化を実現するために,HSRP*EIGRP*RSTP*といった経路制御プロトコルを利用する。

十数個のファイアウォールを設置

 DCはセキュリティにも十分な対策を施した。ファミリーマートの店舗ネットワークは完全な閉域IP網。インターネットVPNなどと異なり,外部から攻撃を受ける危険性は低いように思える。しかし店舗数は7000もあり,大半はフランチャイズによる経営。多くの人がアクセスでき,閉域IP網でも事実上はインターネットのようなオープン網に近い。悪意を持った店舗従業員がDCに対し,攻撃を仕掛ける可能性もゼロではない。「7000店舗もあると性善説には立てない。DCではこれ以上ないほどセキュリティを追求した」(上條室長)。

 セキュリティでカギとなるのは,LANのセグメント分割だ。DC内のLANをシステムの機能や属性によって20個程度に分ける。例えば現用系システムと開発系システムは,別々のセグメントとした。セグメントを分けることで,各システムをネットワーク的に独立させられるからだ。これで,仮にあるシステムが攻撃を受けても,他のシステムにはその被害が及ばない。

 細かく分けられたセグメントに対して,それぞれアクセス制御を行うのが十数個の仮想ファイアウォールだ。これはソフトウエア的に複数のファイアウォールを稼働させる技術で,それぞれに異なったアクセス制御ポリシーの設定が可能。複数のファイアウォール機器を導入するよりも,運用負荷が大幅に軽減される。ファミリーマートは,Catalyst 6509Eに追加したファイアウォール・モジュールで仮想ファイアウォールを実現する。

店舗からのインターネット接続も

 上條室長によると,今回刷新したネットワークは設計上7年は持つという。しかし,「ビジネス上のニーズが出てきた場合は,再度刷新に踏み切る可能性はある」(上條室長)。

 また今後は,店舗で顧客が操作できる情報端末からのインターネット・アクセスにも取り組みたいとする。「閉じられた世界だと外からのコンテンツやサービスの提供などが限られてくる。セキュリティ上はハードルが高いと思うが,店舗でインターネット経由のサービスを使えれば,また違った次元の新サービスを実現できる」(上條室長)。インターネットのさまざまなサービスをシステムに組み込めば,コンビニの利便性をさらに高められると考えている。