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通信事業者の次世代ネットワーク技術「NGN(next generation network)」の議論が深まりを見せている。2006年4月に神戸で開かれたワークショップでは,中国のチャイナ・テレコムがNGN移行へのプロセスを紹介するなど,NGNの進展がうかがえた。IP放送向けの技術が出展されるなど,今後は放送向け機能が焦点になってきそうだ。

 ITU-T(国際電気通信連合の電気通信標準化部門)が主催する「NGNとそれを支える伝達網の技術に関するワークショップ」が4月20~21日,神戸市の神戸国際会議場で開かれた。これまでベールに覆われていた中国でのNGNの計画が明らかになったほか,今後のNGNの課題も見えてきた。また,NGNを支える下位層の技術としてITU-Tが標準化しているASON(automatically switched optical network)や,T-MPLS(transport-multiprotocol label switching)などが紹介された。


電話網の置き換えを開始した中国

 ワークショップ最大のトピックは中国最大の通信事業者であるチャイナ・テレコムがNGN化の計画を初めて明らかにしたこと(図1)。同社は固定電話ユーザー1545万のほかPHSユーザー582万5000を抱える半国有会社。チャイナ・ネットコムと国土を2分してサービスを提供しており,西部から南部にかけての人口8億を超える広大な領域がサービス・エリアだ。

図1 チャイナ・テレコムが明らかにしたNGN導入計画[画像のクリックで拡大表示]
チャイナ・テレコムが明らかにしたNGN導入計画

 NGNは,まずは電話網のIP化のために導入し,IP放送などに拡大していく。チャイナ・テレコムのブロードバンド・ユーザーは2243万。日本とほぼ同じで,普及率は日本と大きな差がある。そのため電話網のIP化といっても,末端の電話機まではIP化しない。これまでの交換機の代わりにIP技術を使うことが当初の主眼となる。これは電話網IP化で先んじる英BTなどと同じ戦略だ。

 チャイナ・テレコムは2001年から電話網IP化のための中国国内の標準策定に取り組んでおり,2005年には福建支所のカバー・エリアをIP化した。2005年9月時点で,固定電話47万ユーザーにIP網を使ってサービスを提供しているという。

 同社の特徴の一つはPHSユーザーを数多く持つこと。移動通信と固定電話の間でシームレスなサービスを行うFMC(fixed mobile convergence)がIP化の重要目的になる。以前は固定電話とPHSのユーザー管理はばらばらだったが,IP化と並行して中国ファーウェイ・テクノロジーズが開発したスマートHLR(home location register)を導入。固定電話とPHSのユーザー管理を一元化し,固定電話に電話をかけて出なかったときはPHSに転送するといったサービスを実験している。

 現在,IP化で使っているソフト・スイッチではFMCの機能は限定されるが,今後はIMS(IP multimedia subsystem)に替えることで機能を向上していく。


FTTHへの移行が加速する日本

 一方,日本ではNGNを使った電話網のIP化をFTTH(fiber to the home)のIP電話ユーザー,具体的には東西NTTの「ひかり電話」を対象に始める。現在Bフレッツが使っている地域IP網から,より信頼性が高いNGNに置き換えるわけだ。

 ワークショップでは,そのベースとなるFTTHへの移行とIP電話化が加速していることが判明した。NTTの井上友二取締役第三部門長が明らかにしたデータによると,FTTHのIP電話サービス「ひかり電話」のユーザー数は2005年12月に40万,2006年3月には160万へと急増した(図2)。2005年9月から12月までのFTTHユーザー数が日本全体で66万増(総務省公表データ)という点を考えると,この3カ月にひかり電話だけで120万増というのは驚異的である。

図2 日本で急激に進み始めたIP電話へのシフト
この1年でアナログ電話とISDNのユーザーは400万程度減っているのに対し,FTTH上でIP電話を使うユーザーは160万増えている。[画像のクリックで拡大表示]
日本で急激に進み始めたIP電話へのシフト

 また,井上第三部門長はひかり電話ユーザーのARPU(加入者当たりの月間収入)が6600円程度であることを公表。事業者にとってIP電話化が収入維持に役立っていると,NGN移行の正統性を主張した。

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