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図1
 電話番号に,新たに「060」という番号が仲間入りする。携帯電話の080と090,PHSの070,そしてIP電話の050と同様に,電話番号の先頭に付く数字である。今年6月,総務省の研究会(IP時代の電気通信番号の在り方に関する研究会。通称,番号研究会)が正式に採用する方針を固めた(関連記事「FMC用電話番号や行政用1XY番号が2006年度中にも実現へ」)。厳密には,060は以前から使われていたが,ほとんど目にすることはなかった。多くのユーザーにとっては新規の番号に見えるはずだ。

 「今更どうして電話に新しい番号を割り当てるんだ」と思うかもしれない。理由は簡単。携帯電話とも,IP電話を含む固定電話とも違うサービスが登場するからだ。携帯通信と固定通信を融合させたFMC(fixed mobile convergence)である。

 だが,突然浮上してきた新番号を巡って,通信業界が揺れている。060を利用する事業者がほとんどいないのである。番号研究会は最終報告書で,050や090などの番号もFMCに利用可能とした。このために,事業者の間では060を不要だとする意見と,普及の度合いを見てから採用を検討するという意見が大半を占めることになった()。しかも,IP電話,PHS/携帯電話,0AB~Jを使う固定電話という3グループで思惑はバラバラ。歓迎しているのは,今後参入してくる新規事業者の保護を重視する,テレコムサービス協会くらいである。

 FMCでは,着信時はユーザーの居場所に応じて携帯電話網と固定電話網のどちらかに呼を振り分ける。必要な条件は,端末/サービス種類によらず,一人のユーザーは常に同一の番号で着信できること。このため番号研究会では,従来とは異なる番号が必要と結論付けた。この際,一部の電話サービスで採用されてはいたものの広く普及していなかった060に目を付けた。

 元々060が割り当てられていたのは,「UPT」(universal personal telecommunication)と呼ぶサービス。あらかじめ設定したルールに基づいて自宅や勤務先などに電話を自動転送するサービスである。NTTコミュニケーションズが「eコール」の名称でサービスを提供している。UPTの番号は端末や場所ではなく「人」に結び付けられ,一つの番号で必ず連絡を受けたいというユーザーのニーズに応えることができる。FMC用の番号としては最適である。

ユーザーの利便性維持とコスト抑制は大前提

 これに対して通信事業者が新番号を受け入れずにいるのは,060を利用するための犠牲が大きいから。あえて060を採用するメリットが見当たらないというのが本音である。まず,ユーザーに対しては番号の変更を強いることになる。利便性を損なうと,せっかく新サービスを始めてもユーザーに受け入れられない可能性が高まる。

 既存ネットワーク設備の変更もハードルになる。事業者には,060番号を採用する各事業者/サービスのデータベース作成や,電話交換機の設定変更が必要になる。当然そのためのコストがかかる。電話が持つリーチャビリティを維持するには,他の通信事業者との折衝も欠かせない。他の事業者が一緒に060をサポートするまでは,他の事業者のユーザーから060番号には電話をかけられない。FMCが新たな収益源になるかどうかが不透明な現状では,事業者がこれらのコストと手間を避けるのは当然のなりゆきだ。

 電話サービスで利用しているIP電話用の050,PHS/携帯電話用の070/080/090を使ってFMCを実現すれば,こうしたコストと手間は最小限に抑えられる。既にいくつかの事業者は,060を使わずに,FMCに極めてイメージが近いサービスを提供している。

 仮に050や090でFMCサービスが実現されると,ユーザーはもはや通話相手が利用しているのが携帯電話なのか固定電話なのか,あるいはFMCなのか区別できない。唯一,060を使うサービスが登場すれば,それはFMCと分かるだけだ。IP電話の050さえ浸透したとは言い難い現状で,新番号を加えるばかりか既存番号の区別がなくなれば,ユーザーが戸惑うことは間違いない。音質の問題も生じる。どの番号に電話をかけても,相手が携帯電話で受けた場合は音質が悪くなる可能性がある。これを,あらかじめ相手の電話番号から推し量ることはできなくなる。