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 最近増えてきた短期開発の弊害が顕著に出やすいのが,コミュニケーション不足である。仕様凍結後にユーザーとの打ち合わせを全く行わないケースもあると聞く。特に恐いのは,ベンダー側の業種/業務知識の不足に起因する思い込みや勘違いで,間違った機能を実装してしまうケースがある。

 運輸会社の業務システムは,協力関係にある業者間でデータ交換の標準化が進んでいる。その辺りの事情に疎いままだと,必要な機能と開発した機能にズレが出てしまうリスクがある。場合によっては,無償で修正せざるを得ないだろう。

業界知識の習得は必須

 コミュニケーション不足を引き起こす要因は大きく3点ある。

 第1に,メールやFAXなどに頼りすぎるのは危険だ。ベンダーは,利用部門や情報システム部門の責任者を含むユーザーとの密なコミュニケーションを心掛けるべきだ。

 少なくとも進ちょく報告は確実に行う。プロジェクトに大きな問題や課題が無くても,定期的に報告を実施する。1~2週間に1回程度の頻度で行うのが望ましい。進ちょくはガントチャート*6などを利用して,計画と実績を報告するとよい。


図4●プロジェクト状況報告の例
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 ユーザー側に遅延の原因がある場合,現在の状況に加えて対策案を含めて提示すると,早期解決につながる。報告書は,A4 1枚程度で文章を少なくして,表やグラフ等にまとめると読みやすい(図4[拡大表示])。

 コミュニケーション不足を引き起こす第2の要因は,SEに業界知識が不足していること。業界知識があれば,ユーザーに対して,より突っ込んだ質問ができる。「使用するデータベースは」と聞くより「○○運行計画のデータの中味は」と聞く方が間違いがない。

 業界知識を習得するには,新聞や専門雑誌が役に立つ。運輸業界なら運輸業界の用語やトラック,タクシー業の最新状況や課題辺りは最低頭に入れておく。余裕があれば,業界に関する法規や主力企業の経営状況も手元に置いておきたい。その上で,ユーザー主催またはプロジェクト内で勉強会を行うのが有効だ。

 コミュニケーション不足を引き起こす要因の第3は,ユーザーとベンダーの役割が不明瞭であること。よくあるのが,検討事項と決定事項があいまいになっているケースだ。これがあいまいなまま仕様にズレが出ると,後に責任問題に発展し,コスト負担でもめるといった事態に発展しやすい。

 まず,ユーザーとベンダーの役割分担を明確にして文書で取り交わす。その上で,(1)ユーザーに必ず実施してもらうこと,(2)できる限り協力してもらうことを事前に整理して,ユーザーに提示する。特に(1)については,期限を付けて契約内容に必ず盛り込む。

訪問計画/履歴を共有する

 マネージャは,これらの行動計画/履歴を一元的に把握しておく。大規模プロジェクトなら専用の電子掲示板を作成したり,小規模なプロジェクトなら共有ファイル・サーバーにEcxelファイルを置いたりするだけでもよい。

 ここには,ユーザーへの訪問計画/履歴のほか,勉強会のスケジュールや参加者を記入しておく。誰がどういう形で記入しても構わないが,有名無実化しないように,サブリーダーに責任を持たせるなどの方法を考える。

町田 仁司
松下電器産業 パナソニック システムソリューションズ社
品質・環境グループ 主任技師