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タイムマネジメントは誰もがマスターすべき「仕事術」。基本的なテクニックを習得・実践すれば「時間欠乏症」の解消はもちろん,仕事のやり方そのものを継続して洗練できる。ここでは事前準備,計画,実行,検証・改善という4つの段階に分けて解説していく。

 「ええっ,もう朝かぁ」――。自宅に資料を持ち帰って提案書の作成を続けた田中氏は,いつの間にか窓の外が白み始めたのに気づいた。「まあ,それなりの出来にはなったな」。目の前のパソコン画面では,提案書がほぼ出来上がっている。田中氏は安堵の表情を浮かべたが,疲れの色も濃い。眠い眼をこすりながらの作業だったために思うように仕事がはかどらず,ついには朝になってしまったのだ。

 「我ながらよく頑張ったけど,これじゃあ体がもたないよ」。田中氏はプリンタで提案書を打ち出しながら,以前に上司から聞いたタイムマネジメントのことを思い出した。「やっぱり会社にいるときに,どれだけ密度濃く仕事をできるかだよな。そのためにタイムマネジメントが重要なのは分かっているんだけど…」。

 田中氏は,自嘲気味にこう続けた。「まあオレみたいな,優等生とは対極にある人間にはタイムマネジメントは無理だ。あれはつまるところ自己管理。小学生のころから夏休みの宿題を間際にやっていた凡人には向いていない」――。

優等生でなくても実践できる

 この田中氏の考え方に共感を覚えた人も,少なくないかも知れない。

 しかし田中氏の考えは間違っている。確かにタイムマネジメントの本質は自己管理だが,実践できるのは決して優等生タイプの人に限らない。なぜならタイムマネジメントには,誰でも実践できるテクニックが存在するからだ。例えば,前日に明日やることを決めておく,タスクに意識して優先順位を付けるといったことである。どれも,やる気を持って真剣に仕事に取り組んでいる人にとっては難しくない。

 ラクーンの村中修氏はITエンジニアになりたてのころは,「ただ一生懸命なだけで計画性を持って仕事をしているとは言えなかった」。しかしやがて仕事に忙殺され,「やる気だけでは仕事がうまく回らなくなった時,タイムマネジメントの重要性を思い知らされた」(村中氏)。そこで必要に迫られて,自己流でテクニックを編み出して実践していったという。

 以下では村中氏をはじめとする第一線のITエンジニアやコンサルタントなど総勢35人に取材して得たタイムマネジメントのテクニックを,(1)事前準備(Prepare),(2)計画(Plan),(3)実行(Do),(4)検証・改善(Check&Action)という4つの段階に分けて紹介していく。

 4つの段階にまたがるテクニックを一貫して実践することによって,計画的な密度の濃い仕事を実現できるだけでなく,Plan-Do-Check-Actionというサイクルを回しながら仕事のやり方そのものをブラッシュアップできるはずだ。

【事前準備】すべてのタスクを漏れなく洗い出す


図1 期限があるタスクだけでなく,定期的に行うタスクも日次,週次,月次の3段階に分けてすべて洗い出す(ラクーン・村中修氏の例)
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 「システム開発に関する重要ファイルの更新確認」,「メール処理」――。ラクーンの村中氏はToDoリストに,定期的に行う“雑務”も書き出している(図1[拡大表示])。日次,週次,月次の3段階に分けて,自分が行うタスクをすべて列挙しているのだ。単に忘れないようにするためではない。「すべてのタスクを書き出しておくことで,自分が全体でどれだけの仕事量をこなしているかを把握できるから」(村中氏)という。

 タイムマネジメントの第一歩は,このように自分が行うべき(もしくは日ごろ行っている)タスクを,すべて把握することである。勘違いしやすいのだが,タイムマネジメントにおける管理対象は「時間」というより,むしろ「タスク」である。タスクに対して時間を割り当てて,期限までに終えるように自分をマネジメントするのだ。だから,自分が行うべきタスクを徹底的に洗い出す必要がある。

 その際には村中氏のように,定期的に行うタスクを日次,週次,月次といったサイクル別に列挙すると整理しやすい。さらに,不定期だが繰り返し行うタスク,現在抱えている今回限りのタスクという具合に分けて考えていくと漏れが生じにくい。

 忘れてはならないのが,「銀行でお金を下ろす」,「証明写真を撮る」といったプライベートな用事もすべてタスクとして書き出すことだ。「タイムマネジメントを行う上では,ビジネスもプライベートも関係ない」というのは,今回取材した多くのエンジニアに共通する意見である。

 そうして日ごろ行っているタスクを洗い出してみると,そこに潜んでいる無駄が見えてくる。例えば毎朝目を通している4種類のニュース・メールは本当にすべて必要か,毎日行っているサーバーへのアクセス・ログのチェックは隔日でもいいのではないか,顧客からの問い合わせメールへの対応は部下に任せても構わないはず,といった具合だ。

 一緒に行うと効率が高いタスクを見つけることもできる。例えば「A社を訪問する」と,「(A社の近くにある書店で)参考資料を買う」というタスクがあるような場合だ。その場合は,1つのタスクとしてまとめておくといい。当たり前に思えるが,「意識してやるのと無意識にやるのでは,長い目で見ると大きな差が生じる」(エクサの安藤幸央マルチメディアソリューションセンターMMソリューション第1チーム主任)。

所要時間の見当を付ける

 タスクの洗い出しと同時にやっておくべきことがある。それは,タスクごとに所要時間の見当を付けることだ。そうしないとタスクを量として把握できないし,割り当て可能な残りの空き時間も分からない。

 もっとも初めて行うタスクや,提案書作成のように創造性を必要とするタスクは,所要時間の予測が難しい。ある程度大ざっぱな予測になるのは仕方がないだろう。

 ただし日次や週次で行っているタスクについては,面倒でも一度は所要時間を計っておきたい。予想外に時間がかかっている雑務が多いからである。

 例えばメールの処理に,あなたは毎日どれだけの時間をかけているか把握しているだろうか。1回20分ぐらいでも,それが日に3回あれば毎日1時間をかけている計算になる。

 ほかにもIT関連サイトの閲覧や日報作成,机周りの整理,経費精算といった雑務についても書き出して,だいたいの所要時間を計っておく。

(中山 秀夫)