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クレディ・スイス証券株式調査部アナリスト 福川 勲 氏 福川 勲 氏

クレディ スイス ファースト ボストン証券 株式調査部アナリスト
アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)、大和総研を経て現職。現在、情報サービスセクターの株式調査を担当

 上場情報サービス会社の2005年度決算が出そろった。当社が継続して業績動向をウォッチしている主要72社ベースでは3%増収、14%経常増益となった。日本企業の収益改善および景況感改善に伴うIT投資の活発化が、情報サービスセクター各社の業績拡大をもたらす形となっている。

 ただし、業績集計値自体は好調な推移となったが、各社のポジショニング、事業内容によって業績の濃淡が見られる点に着目する必要がある。

 2005年度の特徴として挙げられるのはセクター業績の牽引役が交代したことである。2004年度まではネットワークインテグレータやバックオフィス系パッケージソフト会社が好調だった。

 しかし、2005年度は、上記2つのセグメントの業績モメンタムが鈍化する一方で、金融業、通信業向けのソフト開発需要が牽引する形で下請系ソフトハウスおよび大手システムインテグレータの業績が回復。情報化投資の対象がサーバー、ネットワーク、ミドルウエアといったシステムインフラ、および業務パッケージソフトから通常のスクラッチ開発を柱としたSIへと中身が変わってきたことが確認できる。

 2006年度の情報サービス市場の成長率(経済産業省「特定サービス産業動態統計(特サビ)」ベース)は、2005年度の2.2%を上回る4%前後の成長率になると当社では予想する。

 明るい見方の背景には、先行指標と考える機械受注統計(船舶・電力除く民需)が好調に推移していることがある。機械受注統計は4月には2ケタ増となるなど高水準の伸びが続いている。機械受注統計が情報サービス市場の動向に対して半年程度の先行性があることを考慮すると、当面、情報サービス市場は堅調に推移するとみてよいだろう。

 また、当社の取材でもセクター各社の足元受注動向に対する見方は総じて明るいことも予想の裏付けになっている。


各社の悩みは人材確保

 市場拡大のけん引役は、業種、企業規模両面でのすそ野の広がりである。2005年度は、再編に伴うシステム統合特需などが寄与した金融業やナンバーポータビリティ制度導入を控え開発需要が増加した情報通信業が牽引役となったが、2006年度は好調な企業収益を背景に、官公庁を除くほぼすべての業種で情報化投資が拡大するとみられる。一方、企業規模の面では、2006年度は大企業に加え、中堅・中小企業のIT投資が活発化すると予想する。

 ただし、需要サイドではネガティブな材料はほとんどないが、一部で期待されるような10%前後の市場成長率を達成するのは困難と当社ではみている。最大の理由は、情報サービスが労働集約的な性質が強くレバレッジが効きにくい産業であるからだ。

 特サビでは、情報サービス業界が安定成長期に移行した2002年度以降は、業界売上高伸び率と常用就業者数伸び率は概ね平行に推移している点に着目する必要がある。情報サービス業界の市場成長率のベースとなる常用就業者数の伸びは、2005年度で1.1%増に過ぎない。セクター各社の悩みは人材確保になっており、今や市場拡大のボトルネックは「需要サイド」にはなく 、「供給サイド」にあるのだ。