PR
  写真 7月14日に開催した総務省の「IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇談会」(IP懇談会)
  写真 7月14日に開催した総務省の「IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇談会」(IP懇談会)

 総務省の「IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇談会」(IP懇談会)は7月14日,報告書案を公表した(写真)。この「新競争促進プログラム2010」と題した報告書案は,いわば通信事業者の競争ルールの全面刷新案。IP懇談会が半年かけて論点を詰めてきたものだ。

 固定電話網をベースにした通信事業者のネットワークは,今まさにIPネットワークへと,その姿を変えようとしている。NTTグループは2007年下期にも,次世代ネットワーク「NGN」(next generation network)を利用した商用サービスを開始する見通しだ。ネットワークが固定電話網からIP網に移行すると,通信事業者のネットワークを接続する方法やコスト構造ががらりと変わる。既存の競争ルールでは対応できなくなってしまう。そこで総務省では2005年10月にIP懇談会を立ち上げ,競争ルールの見直しが必要な分野の洗い出しを進めてきた。

 具体的には,指定電気通信設備制度やNTT東西地域会社の接続料算定方法の見直し,移動通信市場における競争促進といった九つの論点に分かれ,その配下にもさらに多くの詳細な論点が提起されている。各論点には行程表も付加されており,検討の場の設置やガイドラインの作成期限までもが明示してある。

 新競争促進プログラム2010を取りまとめた総務省総合通信基盤局電気通信事業部料金サービス課の谷脇康彦課長は,「考えうるすべての論点を盛り込んだ」と自負する。通信業界からも,「よくここまで盛り込んだ。公正競争を促進する上で問題になる内容は網羅されている」(通信事業者幹部)と評価する声が聞こえてきた。

「政府・与党合意」の実行力の側面を持つ

  図 新競争促進プログラム2010は政府・与党合意の具体的施策といえる
出展:総務省「IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇談会報告書(案) IP化の進展に対応して競争ルールの在り方について-新競争促進プログラム2010-」要旨の29ページ (クリックすると画面を拡大)
  図 新競争促進プログラム2010は政府・与党合意の具体的施策といえる

 新競争促進プログラム2010は,総務省内だけに閉じた動きではなく,通信・放送分野の改革について政府と与党が取り交わした「通信・放送の在り方に関する政府与党合意」の“実行力”という側面も持つ()。

 政府与党合意とは,竹中平蔵総務大臣が主催した「通信・放送の在り方に関する懇談会」(竹中懇談会)と,与党である自民党の片山虎之助・参院幹事長が委員長を務める「電気通信調査会 通信・放送産業高度化小委員会」(片山委員会)が,それぞれ2006年初頭から半年間をかけて議論したNTTやNHKの組織改革などの方向性をすり合わせたもの(関連記事)。

 通信分野に関しては,(1)ネットワークのオープン化など公正競争ルールの整備を図る,(2)NTTの組織問題は2010年時点で検討をする,(3)通信と放送に関する法体系を抜本的に見直す--の3点が盛り込まれた。この(1)こそが,新競争促進プログラム2010そのものである()。

 公平競争の促進を考えるうえでは,絶大な力を誇るNTTグループの行動を,どう制限するかが最大のポイントになる。そもそも「地域や距離の概念がないIPネットワークに移行しようというときに,東西NTTが地域で営業エリアを分けていることは不自然」(関係者)という見方は根強い。しかし,政府・与党合意でNTTの組織改革は2010年時点で検討すると明記した以上,それまでは組織に手を付けることができない。そこで総務省は,新競争促進プログラムには,NTTに対する行為規制を今まで以上に強化する施策を盛り込んだ。

 これに対し,あるNTTグループ幹部は「NTTに関する項目が多く,かつ厳しい内容が多い」と不満を漏らす。NTTがグループを挙げて構築する次世代ネットワーク(NGN)への開放義務や,NTTグループの事業会社間の連携に対する監視の強化などが盛り込まれているからである。議論が本格化する今秋以降,NTTグループが強力に反発するのは間違いない。次回は新競争促進プログラム2010の内容を見ていく。