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ビフォー・ アフター

 年間21兆円を稼ぎ出す巨大なトヨタ自動車グループ。その中で金融事業を統括するトヨタファイナンシャルサービス(TFS)傘下の中核事業会社、トヨタファイナンス(東京・江東)では、トヨタ流の「カイゼン」は定着していなかった。

 転機は2001年4月。クレジットカード事業への参入だ。問い合わせも業務もけた違いに増え、中途採用で社員を5倍の1000人以上にした。その結果、柱となる企業文化の確立と業務の効率化が必要になった。そこでカイゼンである。

 こうして2003年、3つのカイゼン施策を導入した。「創意くふう提案制度」「カイゼン支援活動」「CHANGEプロジェクト」である。これらを愚直にやり続けたおかげで、2006年の今では実務上の成果は枚挙にいとまがない。初年度1164件だった日常の細かな作業に関する創意工夫の提案が、2005年度は1833件まで増えた。顧客満足度の向上を踏まえた各種業務の効率化も大幅に進んでいる。


顧客満足を重視しながら、継続的な改善を促す「CS・カイゼン活動」の様子。背景にある図は、クレジットカードの申込審査担当者の業務を分単位で分析したもの。右下は、クレジットカード「TS CUBIC CARD」。昨年、500万会員を突破
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 「大量の中途採用でいろいろな価値観を持った社員が混在し、会社に色がない状態になった。ところが、外部からはトヨタ自動車と重ねられ、しっかりした社風がある、きちんと改善活動をしていると思われていた。だから、『カイゼン』を積極的に定着させる必要が出てきた」

 オペレーション企画部長の中村裕成氏は、2003年に導入した複数のカイゼン施策の狙いをこう説明する。施策は「創意くふう提案制度」「カイゼン支援活動」「CHANGEプロジェクト」の3つ。オペレーション企画部は、その推進事務局だ。

 トヨタ流の改善活動、いわゆる「カイゼン」は、一時的な活動ではなく継続的な取り組みである。トヨタファイナンスの取り組みにも終わりはなく、カイゼン文化が全社に深く根付いたかといえば、今でもまだだ。

 ただし、狭い意味での成果は多数出ている。「施策は形がい化することなく、愚直に継続されている」と中村部長は目を輝かす。日常作業に関する細かな創意工夫の提案は日々生まれるようになった。CS(顧客満足)向上を強く意識した各種の業務改善も、現場が積極的に着手するようになった。

経営計画の“すき間”を埋める


●社員数が約200人から一気に1000人以上に拡大したため、3つの全社活動を導入し、業務改善と風土作りに挑戦してきた
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オペレーション企画部長の中村裕成氏。カイゼン活動を支援する同氏も中途採用者である
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 同社が3つのカイゼン施策に踏み切ったきっかけは、2001年4月に始めた「TS CUBIC CARD(ティーエスキュービックカード)」という名称のクレジットカード事業にある。当時の中核事業は自動車・住宅ローンや機器リース。社員は総勢200人程度と比較的小所帯だった。

 ところがカード事業参入によって、問い合わせも業務もけた違いに増えた。そこで積極的に中途採用を実施。社員数は一気に1000人以上に膨らんだ。銀行や保険、流通、通信など300社以上から採用した。現在では派遣社員まで含めると従業員は2000人を超え、カード会員は600万人に迫り、営業収益は1100億円を超す大企業に成長している。

 こうして業務環境の激変が一段落した2003年、業務の効率化、CS向上、トヨタ・グループの一員としての社風の確立を目指し、3つのカイゼン施策を打ち出していった。

 まず2003年1月、「創意くふう提案制度」を始めた。みんなが常に積極的に改善を考える職場を作るため、トヨタで採用しているものと同じ制度を取り入れた。これは、身の回りのちょっとした工夫を提案しようというもの。「ホワイトボードの書き方はこうすると分かりやすい」「プロジェクターの配線はこうすればつなぎ直しやすい」といった具合だ。

 総務部が事務局を務め、採用された提案はイントラネットで閲覧できる。初年度は1164件の提案があったが、2005年度は1833件。制度自体はだいぶ定着してきた。

 2003年4月に導入した「カイゼン支援活動」は、オペレーション企画部が全社を見わたし、改善が必要だと判断した部署に行って、一緒に担当業務を改善する。オペレーション企画部が現場で、トヨタ生産方式のいろいろな手法を駆使する。

 これに対して2003年5月に始めた「CHANGEプロジェクト」は、CSナンバーワンの企業になるために自ら考えて実行する風土作りを狙った。CS向上になる年間テーマ1つを各職場で決める。

 実は2005年12月、カイゼン支援活動とCHANGEプロジェクトを統合、「CS・カイゼン活動」とした。2年弱の活動を通じ、「カイゼン自体が風土となり得るし、そもそもカイゼンの根底にはお客様第一という考えがある」との認識を深めたからだ。

 CS・カイゼン活動は、現場リーダーが率いるチームが自発的に改善提案と解決策を考えるようにし、上司(部課長クラス)は余計な口をはさまない。部署の年度目標とはっきり区別する。お客様の立場になって現状をもっと良くしよう、とみんなが自然と考える文化をはぐくむためだ。

 2006年度は全部で87チームが活動している。カイゼン活動は就業時間内でも残業時間内でも構わない。時間の調整役は上司が担う。

 カイゼン活動は年間経営計画ではカバーし切れない“すき間”を埋める機能も果たす。「活動によって現場のチームワークを高め、商品やサービス、業務に関する細かな問題点を抽出・解決しよう」と、社長が事あるごとに発言している。