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効率よく,ユーザーと必要十分な打ち合わせをしたつもりでも,基本設計書に大きな“抜け”が生じることがある。システムの目玉機能ばかりに目を奪われたり,設計者が補って考えるべきところで手を抜いたりするためだ。設計書の“抜け”がどうして生まれるのか,それを防ぐにはどうすればよいかを,よく起こりがちな二つの実例を通して考えてみたい。

松田 陽人(まつだ・はると)
システム・エンジニア

 いざ基本設計書をレビューしてみると,システムのある部分に関する重要事項がすっぽりと抜け落ちていた――。

 このような話は,システム開発の現場でしばしば耳にするのではないだろうか。図1のように,システムの構築に欠かせない重要な事項が,なぜかユーザーからも設計者からも指摘されないことがあるのだ(あるいは指摘されながらも議論が不十分なことがある)。こうした状況で基本設計書を作成しても,その通りに作るとシステムは意図通りに動かない。

 問題が表面化すると,基本設計書の“抜け”に対する穴埋め責任を巡り,ユーザーと設計者の間で水掛け論に陥りやすい。ユーザーの立場から見れば,「設計者はシステム開発の“プロ”なのだから,そのぐらい気が付いてほしい」と思うだろうし,設計者にしてみれば「基本設計段階で様々な側面から話をしているのだから,必要であれば指摘してほしかった」と思うだろう。

 結果として,「言った,言わない」ではなく,「聞かれなかった,言われなかった」の言い合いになる。明確にどちらかの責任とは断定できないことが多いため,トラブルは泥沼化しやすい。

 今回は,設計上の重要事項に対する議論が忘れ去られた二つの実例を紹介したい。全く新しい事業を始める際にユーザーが陥りやすい「目立つ機能ばかりに関心が集中するケース」と,設計者の怠慢とも言える「言われたことしか設計書に書かないケース」を取り上げ,設計書作成の心得を考えてみたい。これらの例がすべての原因であるとは言えないが,事例を多く知れば,それだけリスクに対する嗅覚が強くなると思う。

図1●基本設計書から,重要事項がすっぽりと抜け落ちるリスク
図1●基本設計書から,重要事項がすっぽりと抜け落ちるリスク
システムを設計するには,「ユーザーに言われたこと」以外にも,設計者が補って検討すべきことが多い。設計者が目立つ機能ばかりに目を奪われてしまうと,重要事項が未検討のまま,基本設計書から抜け落ちる危険がある
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