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 ときどき聞く言葉がある。「IP電話を,電子メールのように使えないだろうか」。IP電話は,電子メールと同じくインターネットを使うコミュニケーション手段なのに,端末/クライアント・ソフトや料金などの状況が大きく異なることに対する不満である。このような声に応える連載「世界がSIPでつながる日」をスタートした(第1回記事)。

 端末/クライアント・ソフトに対する不満というのは,選択の自由がほとんどないということ。電子メールの場合,ユーザー自身がメーラーを選択できる。しかし,IP電話は,会社が決めたIP-PBXに対応したIP電話機やソフトフォンを使うしかない。

 IP電話は,SIP(Session Initiation Protocol)という標準プロトコルを使い,発信や着信などの制御を実行する。理屈からいえば,SIP準拠のIP電話機やソフトフォンならば自由に選択できるはずである。しかし,そうはなっていない。IP-PBXと同じベンダーのIP電話機,もしくはそのベンダーが推奨するIP電話機しか使えない。

 この背景には,従来のPBXが持つ数百ともいう“機能”をIP-PBXにも組み込もうとする事情がある。そのため,ベンダーがそれぞれSIPに独自仕様を盛り込んでいる。これはこれでやむを得ないといえる。しかし,その数百もの機能を使う企業,あるいはエンドユーザーはどのくらいいるだろうか。ほとんどは,電話の発着信,それと保留や転送など,ごく一部の機能が使えれば事足りる。そのレベルならば,現行製品でも,相互接続性はかなり保たれているという。つまり,機能を限定すれば,端末などの選択肢は広げられる(つながればいいというものではないが)。

 家庭に目を向ければ,IP電話機はほとんど無縁である。プロバイダが提供するIP電話サービスは,ブロードバンド・ルーターなどに装備されているアナログ電話ポートに,従来の電話機を接続して使えばいいからだ。「IP電話機を使いたい」「コードレス電話の代わりに無線IP電話機を利用したい」といっても,まず無理である。一部のプロバイダが提供している端末を購入する方法があるが,基本的にそのプロバイダのサービス用である。

 IP電話機は個人が簡単に手に入れられるものではない。家電店などで売っていない。海外のオンライン・ショップで買うのが手っ取り早い。ソフトフォンならば,ネットから入手できる。しかし,ソフトフォンをIP電話サービスの端末として使うには,ユーザー自身の努力が必要である。

 このままでは,「家庭のパソコン上のアドレス帳を使って電話をかける」「家庭の子機(コードレス電話)をホットスポットでも使う」といったシーンは見えてこない。

インターネット電話が進化

 もうひとつのポイントである料金。たとえば,電子メールを使っても追加料金は不要なのに,IP電話の場合は料金がかかる。プロバイダのIP電話サービスは,音声品質の確保に投資をしているため,それを回収することは当然とも言える。たいていのプロバイダは,同じプロバイダもしくは提携するプロバイダのユーザー間の通話は無料にし,ほかのプロバイダとの通話や従来の電話などとの通話は有料にしている。

 では,利用するプロバイダが異なるユーザー間でも無料で電話したいとなったらどうしたらいいのか。「Skype」や「Gizmo」など,いわゆるインターネット電話を使う方法がある。インターネットを単にIPネットワークとして利用して,ソフトフォンで電話するのである。これらのインターネット電話は,単にソフトフォン同士で電話するというツールから,より使い勝手のよい電話システムに進化を続けている。

 このように,IP電話を電子メールのように使える,つまり,エンドエンドをSIPで接続してサービスを多様化しようという動きが海外で盛んである。「世界がSIPでつながる日」では,そういった動きを取り上げていく。