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 ちょっと前,6月の話になりますが,米IBM社Chairman, President and Chief Executive Officer,Samuel Palmisano氏の講演を聞く機会がありました。Palmisano氏といえば,米国の競争力を強化するために何をすべきかをまとめた産業界の提言書「イノベート・アメリカ」の推進役を努めた人物です。このレポートは別名,「パルミサーノ・レポート」とも呼ばれています。

 「イノベーション」に関しては,日本でも多くの組織がキャッチフレーズとして掲げています。日本経団連会長に就いたキヤノン会長の御手洗冨士夫氏が新体制のキャッチフレーズとして「イノベート日本」を掲げました。また小泉純一郎首相が議長を務める総合科学技術会議は,2006年6月に「イノベーション創出総合戦略」をまとめています。その土台とも言うべき「イノベート・アメリカ」をまとめた同氏の話は,以前からぜひ聞きたいと思っていました。

 IBMが開催した6月のイベントで,同氏はイノベーションがなぜ必要かを説明しました。世界的な三つの変化がイノベーションの背景にあると説明しています。世界がフラット化していること,人口動態が変化していること,そして予測できない変化がものすごいスピードでやってくることです。このような変化に対応するためには,イノベーションが欠かせないというのが,同氏のメッセージでした。

 このうち,2番目の理由,人口動態を説明するときに出てきたのが,タイトルに掲げた「若くないと成長できない」という内容でした。日本やイタリアの高齢化,インド,中国,東欧の若い知識の流れ込みなどを説明しました。

 この内容を,どのように受け止めるべきでしょうか。日本では人口動態もそうですが,それに加えて学生の理系離れも深刻です。イノベーションの土台が揺らいでいるとしか考えられません。このような状況を打開するためには,優秀な人材を大量に育てる,海外の人材をもっと受け入れる,ビジネス自体を変える,などいろいろ手は考えられます。

 すでに米国では,世界の優秀な人材を集める仕組みつくりが重要だということで,戦略が立案されています。企業レベルでも韓国Samsung Electronics社 が世界の博士号取得者を集めようと動き出しました。日本では法律上の問題や企業の意識の問題など解決すべき点は多いですが,まず重要なのは,人材に関する危機感を共有することかと思っています。

(望月 洋介=日経エレクトロニクス編集長)