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 冥王星(Pluto)が惑星から降格になった。惑星であることの定義を“中立公正”に定めた結果である。冥王星を惑星と認めるのであれば,少なくともあと3個の星を惑星として認めなければならない。冥王星だけを特別扱いするわけにはいかない---。このニュースを読んで記者は,思わず雑誌記者時代に経験した製品サービス比較一覧表の制作工程を思い出した。今回の太陽系惑星の再定義と同じく,その都度,一覧表に掲載する「○○の主な製品」の定義を作っていたのである。

 同時に記者は,ある事実に気付いた。雑誌記事の場合は,確かに一覧表にピックアップするための定義が不可欠だが,一方で,Webサイトであれば定義は必要なくなるということを。皆さんもよく知っているWebサイト,例えば一般消費者向け製品選択サイトの「価格.com」などでは,製品をピックアップする条件をユーザーが指定することで,条件に合致した製品を一覧表形式で表示してくれるのである。2006年8月14日朝に東京都を襲った停電災害などでパソコンやネットワークが使えなくなるような要素がない限り,Webサイト経由でコンテンツを対話型に生成する機能は役に立つというわけだ。

 もちろん,一覧表に掲載するための定義をせずに済んだとしても,最低限,表の項目は定義しなければならない。項目こそが,製品と製品の差異を特徴として表現しているからだ。逆に言えば,項目さえ決まれば,一覧表に載せるか否かの定義とは,個々の項目値の“しきい値”を決めることに等しくなる。ここで,表を閲覧する誰にとっても必要な項目の定義とは異なり,しきい値の定義は,表を利用する個々のビジネス・パーソンによって異なっていてしかるべきなのである。

企業向け製品サービス情報は生き残るか?

 日経BP社では,「ITpro Data」と呼ぶ,エンタープライズ(企業)分野の製品サービス情報サイトを運営している。日経BP社がWebサイトの形態で提供すべき情報は何か,と考えた時,これまで欠けていたサービスとして必然的に出てきたものである。記者自身,製品情報を真正面から取り扱うITpro Dataには愛着を感じている。Webで提供すべきコア・テンテンツは,企業が製品を選ぶための実務情報である,という強い思いがあるからだ。

 何故か,説明しよう。記者は,どのような時代が来ても最後まで残り続ける商用コンテンツこそ,企業向けの製品サービス情報であると思っている。理由は単純で,あらゆる企業にとって,製品選びのための情報収集という仕事は決してなくなることはないため,需要があるからだ。日ごろ忙しい“ITプロ”の方々の情報収集作業を代行することには商品価値がある。ITプロから見れば,製品選びのための情報収集とは,自分の時間を割くよりも他人に任せて解決したい作業に違いない。

 もっとも,時代が進んで,自律的に動作するITシステムが購買活動まで全自動でやってくれるようになれば,製品ベンダー自身が自社製品のXMLデータを制作するだけで事足りることとなり,日経BP社のような第三者による情報コンテンツの需要は無くなってしまうかも知れない。だが,こうした世の中がやってくる保証はないし,やってきたとしても,その時は経済の仕組みそのものが変わっているだろう。

 これが企業向けではなく,PC周辺機器など比較的多くの人が興味を持っている分野の場合,記者は実は,第三者による情報提供は危ういと感じている。コンシューマ分野においては,ベンダー自身のホームページが,質・量ともに優れた情報である場合が多いと感じているからだ。記者個人の購買活動を振り返ってみても,市場動向などを収集する際には,まずはアイ・オー・データ機器バッファローのホーム・ページにファースト・コンタクトを取っている。

求められる製品サービス情報の姿とは

 さて,では,企業向けに製品サービス情報を提供しようとしたとき,どういった情報が適切であろうか。まず考えられるサービスは,製品情報のデータベース化と,データベースに対するビューの定義である。冒頭に述べた,比較のための一覧表作成機能は,製品情報のデータベース化によって実現する。A4定型の紙に印刷して社内でのプレゼンに利用できることも重要であろう。機能の豊富さではリクルートの「キーマンズネット」が有名だが,ITpro Dataも追いつき追い越したいと考えている。

 では,機能を除いたコンテンツ,すなわち製品サービス関連記事はどうあるべきか。この問題に関しては,実は,よい解が見つからないでいる。記者が個人的に好きな製品サービス記事は,Impress Watchの「Enterprise Watch」である。多忙なITプロの方々が,新製品について,30秒ほどの短時間で「何モノなのか」を的確に把握する---。この需要を満たすからだ。日本経済新聞社の「日経プレスリリース」と合わせ,記者は同サイトを毎日チェックしている。

 誤解を恐れずに言えば,エンタープライズ系のベンダーの情報提供は,需要と市場を作り出している立場として,理論武装やイメージ戦術の傾向が強めである。このため,得てしてメディアが書く編集コンテンツは,ベンダーが世の中に訴えたいことを代弁する立場となってしまいがちである。こうした中,Enterprise Watchは読者の立場と視点を失うことなく,必要な情報だけを取捨選択して簡潔に分かりやすく伝える努力をしている。どちらかと言えば新聞調子であり,日経BP社にも通じるものがある。

 もちろん,その他メディアが得意とするベンダー発のメッセージも,確かに役に立つ。ベンダーの言うことを代弁することがすべて読者を裏切ることになるわけではない。ベンダーは何も読者の敵ではないからだ。読者は賢いため,読者のためにならなければ商売にならないことは,ベンダー自信が一番よく知っている。見方を変えて読者の視点に立てば,ベンダーのプレゼンテーションを読むことで,そのベンダーが何モノなのかを判断するための材料になるはずだ。