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 7月21日にNTTが公開したインタフェース条件の仕様書の内容や,NGNトライアルを巡り,参加予定事業者からの疑問や不満は様々だ。

NTTが開示したインタフェース条件への疑問は多岐にわたる  (クリックすると画面を拡大)
NTTが開示したインタフェース条件への疑問は多岐にわたる

 アプリケーション・サーバーとNGNを接続する「SNI(application server-network interface)」,ユーザー端末とNGNを接続する「UNI(user-network interface)」,他事業者のNGNやプロバイダ網を接続する「NNI(network-network interface)」と,公開されたインタフェースすべてに,疑問が散らばっている()。仕様だけでなく「トライアル終了後,すぐに商用化するのは問題ではないか」という,NGNトライアルから商用化に移るスケジュールに対して疑問を呈する事業者もいる。

 以下では,なぜそのような疑問や不満が出るのか,理由や背景,問題意識を,それぞれ解説する。

疑問1 「上位レイヤーの仕様公開が特に少なく,このままではアプリケーションを作れない」

 そもそも「公開されたインタフェース情報が少ない」という声も多いが,中でも上位レイヤーの仕様公開が少なかったことに,ソフトウエア・ベンダーやコンサルティング事業者などの疑問が集中している。これらの事業者は,NGN上での新たなサービスやビジネスの創出に期待していたからだ。不満の度合いは様々だが,これだけの情報では新しいアプリケーションは書けないという意見や指摘がソフトウエア・ベンダーを中心にあちこちから出ている。

疑問2 「なぜ映像配信にまでSIP ( session initiation protocol ) を使うのか」

 NTTのNGNトライアルではIP電話の音声制御だけでなく,映像配信にもSIPを使う。音声を制御するIP電話ではSIPがほぼ標準だが,「映像配信にまでSIPを使う例は,国内,海外を見てもまだない」という意見は数多い。音声制御だけでなく映像配信にもSIPを使うことで,日本のNGNだけ世界から先走り過ぎて,国際標準から外れてしまうのではないか,という懸念が出ている。

疑問3 「課金や認証などプラットフォーム機能の仕様が全く公開されていない」

 NTTは,NGNで回線レベルの認証機能を提供することを匂わせていた。サードパーティにとっては魅力的な機能である一方,プロバイダなどは危機感を抱いて注視していた。総務省の「IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇談会(IP懇)」は,報告書案の中でNTTのNGNのプラットフォーム・レイヤーにも指定電気通信設備の開放義務をかける可能性も示唆しており,その内容は極めて注目度が高かった。ところが,NTTが公開したインタフェース条件の中には,認証機能については全く触れられていなかった。

疑問4 「トライアル後にすぐ商用化は問題ないのか」

 これは,仕様内容というよりも,商用化移行へのスケジュールへの疑問。公開された仕様書だけではトライアルにおけるNGNの全容が明らかになっていないだけでなく,商用版のNGNの実態も不明であることに対する,競合事業者の警戒感は強い。世界標準の動向と歩調を合わせたり,公正競争の条件整備,トライアル成果の検証のため,トライアル後と商用化の間に議論の期間を設けるべきでは,という提言は複数出ている。

疑問5 「トライアルでの用途をIP電話や映像配信に限定していて目新しさがない」

 NGNのトライアルでNTTが提供する具体的な通信機能は5種類ある。インタラクティブ通信,ユニキャスト通信,マルチキャスト通信,プロバイダ接続,イーサネット接続――である。これらの機能の用途はNTTがあらかじめ限定している。具体的には,インタラクティブ通信ではIP電話とテレビ電話,ユニキャスト通信やマルチキャスト通信機能ではコンテンツ配信,といったもの。プロバイダ接続やイーサネット接続機能も含め,既存のサービスばかりであり,これだけでは目新しさはない。ほとんどのサービスは現在のフレッツ網で提供しているものなので,「NTTの言うNGNは,既存のフレッツ網をNGNの標準規格で作り直したものを指すのか?」という皮肉も飛び出している。

疑問6 「NGN用の新たなSIP端末が必要では」

 映像配信にもSIPを使うNTTのNGNでは,新たなSIPスタックを搭載した端末がユーザー側に必要になる。ある通信機器ベンダー周辺をさぐると,NTTがNGN用の新たなSIPスタックを搭載したブロードバンド・ルーターのようなユーザー端末の調達をかけている,との情報が漏れてくる。こうした情報を既に耳にしている通信事業者は,「メーカーに調達をかけるだけではなく,それがどういった機器なのか,他の事業者にも早く明らかにしてほしい」という意見が上がっている。

疑問7 「なぜプロバイダ接続はベストエフォートだけなのか」

 開示された接続情報の中で,唯一NGNらしいと言われている網内のQoS(quality of service)機能。これはパケットの遅延時間などによりクラスA~Cまで3段階が用意されている。さらにQoSをかけないベストエフォート通信も用意されており,通信品質を必要に応じて選択できるようになっている。しかし,インターネット接続するためのプロバイダ網への接続はベストエフォート通信しか使えない仕様になっている。これに対してはプロバイダから不満の声が上がっている。

疑問8 「なぜNNIでマルチキャスト通信を通さないのか」

 NTTはNGNを使って,地上デジタル放送をIP再送信する意向も示していた。トライアル参加事業者の中には,NNIを越えてマルチキャスト通信を実現してもらえるようにNTTに要望してきていたが,トライアルでは実現しなかった。このため,NTTのNGN内で有力コンテンツである地上デジタル放送のIP再送信を囲い込む腹づもりでは,との観測がある。

疑問9 「NGNのコア網とアクセス網のインタフェースは公開しないのか」

 公開された仕様書を見る限りでは,既存のADSL事業者やFTTH事業者がNGNのアクセスを提供することは不可能のように見える。そのため,通信事業者の一部からは,NGNのコア網とアクセス網のインタフェースもNNIとして公開するべきでは,との意見が出ている。また,総務省のIP懇の報告書では,NGNのコア網とのNNI接続は,「レイヤー3だけでなくレイヤー2での接続をできるようにすべき」,という趣旨の記述が入っている。これも,既存のADSL事業者がNGNに対してアクセスを提供できるようにする狙いがあるが,公開された仕様書からは,これが可能なのかどうかは見えていない。