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ノークリサーチ代表 伊嶋 謙二 氏 伊嶋 謙二 氏

ノークリサーチ代表
矢野経済研究所を経て98年に独立し、ノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査、コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意としている。

 Linuxは果たして本当に市場で求められているのか?確かにLinuxはオープンソースソフト(OSS)の旗手として、官公庁や文教市場で利用されている、あるいは注目されている。ただしこれは、Windowsによるマイクロソフトの独り勝ちの状況を好ましくないとする、国の思惑が見え隠れしているように思える。

 ノークリサーチでは毎年、中堅・中小企業(SMB)のサーバー導入実態を調査している。その結果を分析すると、むしろLinuxは停滞気味あるいは漸減傾向にさえ見える。2005年時点でのSMBにおける主要サーバーOSの利用率はWindows 2000が42.6%、以下Windows NTが25.5%、Windows 2003が14.6%と続く。Linuxはわずか6.6%だった。しかも、今後の導入予定では、Linuxは「使うつもりがない」が56.2%と過半数を超えている。

 Linuxを「使うつもりがない」理由として最も多かったのは「今使用しているOSに満足している」で49.7%、「サービス/サポートが不安」もほぼ同程度の47.6%だった。以下、「アプリケーションが少ない」(30.8%)、「実績が少なく不安」(29.5%)と続く。

 注目したいのは、今使用しているOS(=Windows)に満足しているユーザーが半数に上るという点だ。今までWindowsを利用していたユーザーがLinuxにリプレースするのは簡単ではない。専用の教育プログラムを受けさせるか、または社外から経験者を募り対応するしかない。オフコンやWindowsで受けていたサービス/サポートがLinuxでもきちんと受けられるのかどうかという不安もある。

 ビデオのVHSかベータかという規格争いと違い、OSの場合は扱う技術者が必要となる。Windowsを理解しているSEなどの技術者は多いが、Linuxは(極めて)少ないのが実情だ。これはLinuxにとって致命的な状況であるといえる。売る側も積極的に提案し、セミナー、教育、サポートを行い、ユーザーもLinuxについて理解を深めるべく自ら学び、スキルを高める。こうして双方のリテラシーが高まったところで初めてLinuxを導入する下地が出来上がる。

 だが、このストーリーには多少無理がある。そんなに事は簡単ではない。Linuxを導入した場合、誰が責任を持つのか。特に基幹系業務などのミッションクリティカルなシステムであれば、売るほうも、ユーザーも「万一の場合」の対応を最重要視せざるを得ない。現状では、残念ながらその点においてWindowsにしておけばなんとかなると双方が感じている。

 事実、調査結果からもLinuxの利用分野はフロントエッジ用途(Web系)にほぼ限定されている。Linuxのアプリケーション別の利用率はメール/Webサーバーが64.0%、次いでデータベースサーバーが38.2%、ファイアウオールサーバーが23.7%であり、基幹業務サーバーは11.4%にとどまる。

 Web系なら容量の軽いLinuxを用いるメリットがあるが、ミッションクリティカル性を考慮した基幹系への導入では、たとえスキルを持ち合わせた技術者がいても、万一の場合のことを考え、慎重になっている。少なくてもSMB市場においては当面、LinuxがWindowsをリプレースして主流になるということはなく、エッジサーバーとしてWindowsと住み分けていくとみるのが妥当だろう。