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失注情報活用を現場に約束


2004年から用いている週次の予算管理システム。組織図(左)をクリックすると予算達成率の進ちょく(右)を確認できる。ここで数字の悪い部門の商談保有状況をSFAで確認する
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 導入に当たって、営業現場へは「失注原因を集約すれば、生産部門などに対する一人ひとりの不満を公式に伝えられるようになる」というメリットを強調した。単に経営陣が現場の監視に使うだけととらえられると現場の活用意欲が上がりにくい。

 例えば、特注仕様品を顧客から要望された時に、工場から「4カ月後なら対応できる」と言われたとする。顧客から「それでは間に合わない」として落とされた商談は、商談ステータスを失注に変えると同時に、原因を「設計パワー不足」と入力してもらう。同様に、標準品の商談のうち納期で弾かれた商談は「納期」、標準品の仕様がニーズに合わなかった場合は「仕様」などと、失注原因を入力してもらっている。

 また、入力項目をなるべくプルダウンメニュー化するなど検討を重ねて10~15分程度で入力を完了できるようにした。文章を書かずに、商談の進行状況だけなら、携帯電話でも登録できる。

 さらに、SFAを通じて報告された保有商談の多寡は、「人事考課上の参考資料とする」と告知した。 SFA上の数字だけで考課を決めるわけではないが、重要な判断材料になるという位置づけだ。

放置商談の発見・注意にも効果

 2005年7月から個々の商談の予定受注金額や商品内容、進ちょく状況などの入力が始まると、熊澤本部長は営業所別の保有商談状況を表計算シートにまとめて月に1度配布するようにした。

 そして特に保有商談が少ないところには、データ配布と同時に熊澤本部長が所長に電話をして状況を聞く。これで現場が保有商談数に絶えず気を付けるようになった。

 さらに、同社のマネジャーは、時折、こんな検索をする。「年間受注予定額500万円以上」AND「最終接触日から30日以上」AND「見積もりもしくはサンプル出し済み」――。例えば、今回のSFAを活用し始めて間もないころ、1000万円規模の商談が30日以上放置されているのを見た熊澤本部長は、現場部長に「これはどうなっているのか」と尋ねてみた。

 その時に尋ねられたSPS事業本部国内営業統括部東日本第2営業部の尾野哲一部長はこう振り返る。

 「早速、当該案件の担当者にすぐアポイントを取るよう指示したがなかなか取らない。取れない理由をあれこれ言われたが、ふに落ちなかったので『俺も同行営業するからアポを取れ』と念押ししてようやく訪問してみると、既に競合メーカーに注文を取られていた。もしもっと早く現場に注意できたら防げた失注だ」

 熊澤本部長や尾野部長らは、このようにマネジャーが放置案件を検索してチェックすることは不可欠な業務だと考えている。営業担当者は、訪問間隔が空いてしまっても、まだそんなに時間がたっていないと勘違いしがちだと痛感しているからだ。

新規・保有商談が6~7割増加


熊澤本部長(左)と尾野部長(右)
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 SFA導入の効果はまずは保有商談件数の増加に表れた。使い始め当初の2005年の7~9月は新規商談の件数は「月におよそ60件程度だったのが、同年10月以降は平均100件以上で推移している」(熊澤本部長)。66%以上増えた勘定だ。保有商談数も2005年7月の462件から2006年2月には803件と7割以上も伸びた。

 SFAというインフラを得て、同社は成長軌道に乗る自信を付けたようだ。2006年3月期の連結売上高は341億円から363億円(2006年1月から子会社化した欧米ラムダ分を除く)と6.0%伸び、2007年3月期は欧米ラムダを含めて実質8.7%増の510億円にする見通しを打ち出した。

 このうち、SFAを導入したSPS事業の売上高は2005年3月期は対前年度比1.8%の微増だったが、SFAを導入した2006年3月期は同5.5 %増の289億円(欧米ラムダ分を除く)になった。さらに2007年3月期は9.0%増の315億円(同)に伸ばす見通しだ。

 「SFA導入によって、受注がどんなに好調でも常に新規商談を獲得して保有商談を減らさないという意識を定着させることができた。保有商談を把握してようやく経営陣は売り上げの先行きに自信を持つことができる」(熊澤本部長)

生産部門との話し合いに生かす


●デンセイ・ラムダに見る業務革新のポイント
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 今年度はSP事業部や海外でも SFAを入れる予定だ。

 データ蓄積が進んだことを受けて、この6月からは失注商談の分析結果を生産部門や間接部門の幹部と話し合う月例会も開いていく。製品仕様や納期がやはり重要だといったことが見えてきたという。

 いったんは頓挫しかけたSFA導入だが、再導入からわずか1年未満で同社が手応えを得られたのはなぜか。営業部門出身でIT活用に熱心なリーダーの存在に加えて、旧ネミック・ラムダ時代に1990年代半ばから1人1台のパソコン環境を整えるなどしてきた過去のIT投資が情報リテラシーを高めて現場力につながっているのだろう。