PR

 プロセサの処理性能向上により,喫緊の課題として急速に浮上してきたマシンの「発熱問題」。ITproの姉妹サイト「Enterprise Platform 2006」で,「エコ・コンピューティング」と称してサーバーやデータセンターの熱対策を取材していくうちに,サーバーには意外なニーズ,意外な市場があることを知った。

 ちょっと前に「水冷パソコン」が話題になったように,ユーザーの身近で使うパソコンについては,熱自体の処理はもちろん,冷却ファンの騒音を抑えるという観点から熱対策が進んできた。一方のサーバーについては,熱自体はもちろんだが冷房代を含めた電気料金削減の観点からの対策が主眼。パソコンほどの「快適性能」を要求されてはいない。工場はともかく一般のオフィスだってそれなりに騒音はある。“だから,少し程度のファンの音なら,さほど気にならない”。そう考えるのが一般的ではないだろうか。

 しかし,どうやらその見方は必ずしも正しくはない。「サーバーだって快適であって欲しい」いうユーザーの声は,最近徐々に大きくなっているようだ。

“静かな市場”を切り開く冷却技術

 マシンの冷却については,従来の空冷に加えて,水冷の仕組みを組み合わせるのがトレンドだ。従来,メインフレームで使われてきた水冷の仕組みを,プロセサの発熱問題がにわかに浮上したUNIXサーバーやパソコン・サーバーに適用しよう,というわけである。

 これまで水冷技術は主にデータセンターや専用のコンピュータ・ルームに設置するような大規模サーバーに適用されてきた。しかし,オフィス内や店頭に設置するような中・小型サーバーにも,水冷のトレンドが押し寄せている。後押ししているのは,サーバーの「静かさ」を求めるユーザーの声だ。

 水冷サーバーが狙う市場は,まさにサーバーの快適性能を求めるユーザー。「最近,病院,店舗,図書館,あるいは個人事業主が自宅にサーバーを設置するケースが増えている。これらの場所では,ファンの音は非常に邪魔な存在だ。騒音が少ないサーバーが欲しいというユーザーが増えており,それに応えるべく水冷サーバーを商品化した」と NECの本永実クライアント・サーバ販売推進本部マネージャーは説明する。

 病院や図書館はもちろん,自宅なら騒音は特に気になることだろう。これらのサーバー市場がどの程度の規模かはさておき,きめ細かさやデリケートさを思わせる,日本ならではの製品ではないか。


冷却技術を組み込んだサーバー製品 左がNECの「Express5800/110Gb-C」,右が富士通の「PRIMERGY TX200 S3」
[画像のクリックで拡大表示]
 こうした声をうけ,“静かさ”を提供するサーバー製品も着実に増えてきている。

 NECは2004年10月に,同社として初めて水冷方式を採用したタワー型サーバー「Express5800/110Ca」を出荷した。現在は「Express 5800/120Li」や「同/110Gb-C」など,今年2月から8月にかけて出荷した4機種に水冷方式を採用している。

 売りはその静かさ。NECによると,音の大きさは最大30dB(デシベル)。「普通のオフィスに設置している場合であれば,まず動作音には気付かない」(NECの富田秀明クライアント・サーバ事業部第二技術部技術マネージャー)という。

 NECのライバル,富士通も黙ってはいない。NECの発表から半年後の2005年5月,富士通は冷却装置としてヒートパイプを採用した中小規模向けサーバー機「PRIMERGY TX200 S2」を出荷し,“静かな市場”に参入した。今年6月には,後継機種の「同TX200 S3」を発表。またローエンド向け製品として「TX150 S4」を5月に発表済みである。

 これらの製品は,プロセサにヒートパイプを装着して冷却効率を向上。これにより,搭載するファンの数やファンの回転数を押さえて,静かさを追及したのがポイントである。ファンはCPUの動作状況に応じて回転数を自動制御するので,さらに省電力と静かさを追及できる。プロセサで発生した熱は,CPUに密着させたヒートパイプを経由しラジエータに伝わる。そしてラジエータの熱を,ファンで外部に逃がす仕組みだ。

 オペレーション時の音は,TX150 S4が36dB,TX200 S3が37dB。NECの水冷サーバーには数値上は及ばないものの,十分な数値と考えて良いのではないか。「SOHOにもサーバーのニーズが広がり,席のすぐそばにマシンを設置するケースが増えてきた。ヒートパイプ付きのサーバーは,こうした静かさを求めるユーザーの声を受けて開発した」(富士通)。

サーバーにも求められる快適性能

 「水冷式のマシンで,潜在的なニーズを喚起できた」とNECの小竹章博クライアント・サーバ販売推進本部マネージャーは見る。「これまでファンの音は仕方がない,とあきらめていたユーザーが,水冷サーバーの静かさに驚き,サーバーの買い換えを進めている」。

 「快適性能」は,何も自家用車など個人向け市場に閉じた話題ではない。人間が存在するところならどこでも,ある程度は確保するべき性能だろう。IT,こと“裏方”に位置するサーバーも,いまどきは快適性能を無視できない,ということか。