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名 称:The Student Day 2006 
開催地:秋葉原コンベンションホール(東京都千代田区) 
U R L:http://www.microsoft.com/japan/msdn/sd/
名 称:The Student Day 2006
開催地:秋葉原コンベンションホール(東京都千代田区)
U R L:http://www.microsoft.com/japan/msdn/sd/

 今年もいよいよImagine Cupの季節がやってきました。これは米Microsoftが主催する全世界の学生を対象とした技術コンテスト。2005年は世界大会が横浜で行われ,世界44カ国から220人以上の学生が集い,全9部門で熱い戦いを繰り広げました。その模様は本誌2005年10月号でお伝えしましたから,ご記憶の方も多いかもしれません。

 2006年8月に,インドのデリーで世界大会が予定されているImagine Cup 2006は,全6部門で優勝の座が争われます。その中でも最大の応募者数となる部門がソフトウェア デザイン部門。第一回大会から続いていてImagine Cupを象徴する部門でもあります。その日本代表チームを選ぶ国内大会が,去る3月31日,The Student day 2006で開かれました。

“健康”をテーマに,人に役立つITを作る

司会はマイクロソフトの田中達彦氏
司会はマイクロソフトの田中達彦氏

 今年のソフトウェア デザイン部門のテーマは,テクノロジの活用による,より健康的な生活の実現。ITが生活をより健康的にするために,どこまで,どのように支援できるかというチャレンジです。5人の審査員が,この国内大会を審査します。審査基準は,(1)問題定義,(2)設計,(3)開発,(4)プレゼンテーション――の四つのポイントを軸に進められます。

 (1)の問題定義は,どれだけ困難な問題に取り組んでいるか,よく問題が定義づけされているか,です。全体の15%の重み付けです。(2)の設計は,全体の60%の重み付けで,三つのポイントに細分化されています。(a)新しい問題に取り組んでいるかどうか,または従来の問題を新しい見方でとらえているかどうかを見る「革新性」,(b)多くの人々に幅広い影響を与えるか,または少数の人々でも非常に強い影響を与えるかどうかを見る「インパクト」,(c)アプリケーションがどこまで問題を解決できるかを見る「有効性」――です。

 (3)の開発は,問題を論理的なかたまりと構成要素に分解した,洗練されたシステム・アーキテクチャかどうかを量ります。重み付けは15%。(4)のプレゼンテーションは,開発したシステムを説明する能力や,審査団からの質問に応じる力を量ります。重み付けは10%です。

 アイデアの立案から最後のプレゼンまで,総合力が問われる感じですよね。これから国内大会に出場した3チームのプレゼンの様子を,登場順にレポートしていきます。あなたも審査員になったつもりで採点してみてください。

医療業界の代表的なアプリケーションに
オープンソースで挑む混成チーム

 最初に登場したのは,大阪大学大学院,海城高等学校,鈴鹿工業高等専門学校の混成チームです。普通は同じ大学の学生が集まって一つのチームを作ることが多いのですが,彼らはマイクロソフトが主催する学生向けのコミュニティ・サイトThe Spokeや,昨年のImagine Cupなどで出会い,互いの才能を認め合って,大阪,東京,三重という物理的な生活圏の違いを越えてチームを結成しました。メンバーは中山浩太郎くん,前川卓也くん,竹井悠人くん,大居司くん。ちなみに,中山くん,前川くん,竹井くんは昨年のImagine Cup世界大会の出場者です。

Docterraのプレゼンテーション。よくできた画面を落ち着いて紹介していく
Docterraのプレゼンテーション。よくできた画面を落ち着いて紹介していく

 彼らが提案したのは「Docterra(ドクテラ)」という病院管理・電子カルテ・システムです。なぜこの分野をめざしたのか。今日,日本における各家庭の医療費負担は増加の一途をたどっており,それにはいろいろな原因があるけれど,病院の経費高騰も大きいだろう。そしてその病院にとって大きな負担になっているのが,病院管理・電子カルテ・システムに代表されるIT化なのではないかと彼らは想像したのです。市販のパッケージ製品は1000~5000万円と非常に高価で,導入意欲は高いものの実際の導入は思ったほど進んでいません。そこで,システムをオープンソースとして提供することで,医療業界に一石を投じようと考えたのでした。

 Docterraには三つの大きな特徴があります。まず,オープンソースで開発されていること。このシステムはASP.NET 2.0で開発されたオープンソースのコンテンツ管理システムをベースにしています。また,Windows Vistaのプレゼンテーション・フレームワークであるXAML(eXtensible Application Markup Language)を始め,最新技術を意欲的に取り込んでいます。

 次に,次世代型の電子カルテを提案していること。その一つが,インフォームド・コンセントを実現する技術としてのPocket PC用XAML3Dビューアです。患者にも自分の病状が理解しやすいことから医療用3DCGが注目を集めています。一方で携帯端末上での3DCGレンダリングは,CPU,メモリー,グラフィック・ボードなどの制約により困難でした。彼らはこれを,モバイル3Dフレームワーク「3D-Raven」を利用することで実現しています。

 最後に,高い拡張性を備えていること。Docterraは,病院のホームページ制作,運営管理,電子カルテ管理が一つのシステム上で行えるよう設計されており,ID・パスワードでのセキュリティ付加のもと,患者,医師,IT管理者向けにパーソナライズされたインタフェースを提供します。ほとんどコードを記述することなく,マウス操作だけでモジュールの追加や設定ができるため,各病院の業務に合わせてシステムをカスタマイズするのも容易だそうです。

 デモンストレーションでは,Pocket PC上で患者の3DCGが軽快に回転したり,システムのトップページがさくさく変更される様子が示されました。

北海道大学チームは心の健康をテーマに
出会いを作る携帯アプリケーションを開発

日経ソフトウエア賞を受賞した八百万神 in Pocketのプレゼン。ビデオと組み合わせた寸劇は,見て楽しく,よくわかる
日経ソフトウエア賞を受賞した八百万神 in Pocketのプレゼン。ビデオと組み合わせた寸劇は,見て楽しく,よくわかる

 次に登場するのは,北海道大学のチームです。北大は全部で4チームがソフトウェア デザイン部門にエントリーしていて,3チームが入賞しました。そのうち,高田祐輔くん,泉澤秀樹くん,高良常仁くん,村上陽祐くんからなるチームが決勝戦に残りました。提案するソフトウエアは,携帯電話で動作するコミュニケーション促進アプリケーション「八百万神(やおよろずのかみ) in Pocket」(以下,ヤオポケ)です。

 彼らが着目したのは心の健康です。ITの普及・進化により,人々は直接会わなくてもコミュニケーションができ,生活は便利になりました。しかし,これによって失ってしまったものもあるというのです。人は人と支えあってこそ生きられる動物であり,ふれあいがなくなると心が健康でなくなってしまうもの。「テクノロジは人と人のふれあいを支えるために使われるべきであり,だから僕たちは,この便利さ至上の世の中にあえて不便なシステムを提案します」と,村上くんは語りかけました。

 このヤオポケは,GPS機能を利用した子供向けの携帯端末用のWebアプリケーションです。ユーザーになると,その子にはなにかの神さまが守護神となります。しかし,自分ではその神さまがなにかはわかりません。友達に会って占ってもらわないといけないのです。そこでユーザーは,自宅にとじこもることなく,携帯電話上に表示されている近くの友達を探しに出かけていくというわけです。ほかにも,このアプリケーションのユーザーが近くに来たことを知らせるすれ違い機能,自分にとりついた貧乏神を人になすりつける機能,特定の友達との間に特定の状況においてだけ起こるイベント機能などが搭載されています。

 ゲームを進行形で楽しむためには,時々刻々と変化するユーザーの位置を取得してはサーバーに送信し,アプリケーション全体で同期化する機能がカギとなりますが,彼らはサーバーの負荷軽減も考え,時間と移動距離で通信するしないを判断する方法を取りました。

 このチームはデモンストレーションがおもしろかったんですよ。自分たちが半ズボンをはいて,ユーザーの小学生にふんし,ビデオと寸劇を組み合わせてデモを進めていきます。状況設定も絶妙で,あますところなくヤオポケの全容を伝えました。ビデオの舞台は,まだ雪のたくさん残る札幌の大通公園。演技,撮影,編集とどれも達者で,彼ら自身がコミュニケーション巧者だなと感心しました。