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 実用化の議論が進む無線ブロードバンドで,本命と見られる「モバイルWiMAX」対応機器の開発が進んでいる。モバイルWiMAXの下位レイヤーを定めた「IEEE 802.16e」は,2005年12月に標準化済み。ハンドオーバー仕様など上位レイヤーの技術方式は業界団体のWiMAX Forumで標準化していたが,これも完了した。規格が固まったため,モバイルWiMAX対応製品の開発が今まさに進行中。今年冬には,対応製品の認証も開始される。

 標準化が完了して機器の開発が進むにつれ,ベールに覆われていたモバイルWiMAXの実力が少しずつ見え始めてきた。

さまざまなサービスを提供できる能力を持つ

図1 モバイルWiMAXインフラの機能とコストの関係  (クリックすると画面を拡大)
図1 モバイルWiMAXインフラの機能とコストの関係
写真 上から順にモバイルWiMAXの基地局(米ナビーニ・ネットワークス),評価用ボード(米フリースケール・セミコンダクタ),端末(韓国サムスン電子)
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 まず,「モバイルWiMAX」といっても,モバイル用途に限らず固定用途にも対応できる能力を持つことが分かってきた。そのため同じ通信規格を採用していても,通信事業者ごとに異なる機能を持つインフラを構築することなる。モバイルWiMAXは,携帯電話に比べると“緩やかな”仕様になっているためだ。サービス内容に応じて,事業者がインフラに搭載する機能を選択できる(図1)。

 具体的には,モバイルWiMAX基地局間を切り替えるハンドオーバーや,携帯電話など異なるシステムの基地局と切り替えるハンドオーバーなどの導入の可否を,通信事業者が選択できる。また,ハンドオーバーで対応できる移動速度を,時速4km程度から時速120km程度までで選択できる。

 導入する機能を少なくできれば,インフラの構築や運用にかかるコストを低減できる。まず基地局の価格が下がる。機能によりソフトウエアの規模やプロセッサの数などが変わり,価格を抑えられるからだ。

 さらに,バックボーン・ネットワークのコストも変わる。ハンドオーバー機能を導入すると,基地局以外にもさまざまな装置の追加導入が必要になるからだ。しかしハンドオーバー機能を導入しなければ,これらの装置は必要ない。最も単純な構成は,市販のルーターで構成したIPネットワークにモバイルWiMAX基地局を接続したもの。これは,出力の大きい無線LANとして利用できる。「FWA(固定無線アクセス)サービスならばこれで十分だろう」(日商エレクトロニクスの田中豪パートナ事業本部プロダクツ統括部第四グループプロジェクトマネージャー)。

日本ではMIMO対応機器が導入される?

 実はモバイルWiMAXには,「Wave1」と「Wave2」という二つのバージョンがある。Wave2はWave1の後継に当たり,いくつかの仕様が追加されている。「Wave1は,韓国で6月に開始されたモバイルWiMAXサービスに準拠した仕様。サービス開始がもう少し先になる日本の事業者はWave2を導入できる」(インテル研究開発本部の庄納崇ワイヤレス・システム・グループ シニアリサーチャー)。

 Wave1とWave2の最大の違いは,Wave2では複数のアンテナを利用して送受信する「スマートアンテナ」技術を導入することにある。具体的には,通信速度を数倍に高める「MIMO」(multi-input multi-output)やデータの誤りを少なくする「STC」(space-time coding),周波数当たりの通信容量を増やす「アダプティブ・アレー」といった技術を実装する。「来年には,Wave2対応のチップセットを用意できる」(フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンの岩瀬肇ネットワーキング&コンピューティング・システムグループDSPオペレーション部長)と,チップセット・ベンダーの準備も進んでいる。

 モバイルWiMAXを巡っては,基地局から離れるほど通信速度が大幅に低下する問題を米クアルコムが指摘していた。これは「Wave2の対応製品を使えば解決できる」(日商エレクトロニクスの田中プロジェクトマネージャー)という。

年末にPCカード端末,2007~2008年にノートPC内蔵

 端末の準備も着々と進行中。モバイルWiMAXを先導するインテルや,先行してサービスを展開している韓国のメーカーは端末の開発計画を明らかにしている。

 インテルは,「PCカード型端末を,年内をメドに特定の通信事業者向けに発売する。2007~2008年には,モバイルWiMAXを内蔵したノート・パソコン向けチップセットも出荷する」(梅野光マーケテイング本部IAクライアント・プロダクト・マーケテイングWirelessLAN&WiMAX製品プロダクト・マーケテイング・マネージャー)。さらに,PDA(携帯情報端末)や携帯電話,UMPC(Ultra-Mobile PC)に内蔵する開発計画が既に開始しているという。

 韓国メーカーでは,サムスン電子がPCカード型端末を韓国国内で出荷済み。今年末から2007年には,モバイルWiMAXを搭載したPDA端末をリリースする見込みだ。LG電子もこれに追随しており,サムスンよりやや遅れる形で同様の製品を市場に投入しそうだ。

 米モトローラは,9月に開始するソフトバンクとの共同実験で,モバイル端末の試作品を提供するとしている。「現時点では詳細は言えない」(モトローラ日本法人)としているが,モバイルWiMAX端末の開発が進んでいることは間違いない。

 日本メーカーでも,富士通やNECなどWiMAX Forumに参加する企業は多い。具体的な計画は沈黙を保っているが,日本でサービスを開始するタイミングで成果を明らかにするかもしれない。

 日本での商用サービス開始が想定される2008年には,複数の端末が入手できる状態になっていそうだ。